六本木五丁目西地区の再開発着手(2024年・森ビルの決断)2024年 | 森ビルの決断

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何をなぜ決めたか:8千億円規模の再開発を、単独でなく住友不動産と共同で進める選択

概要
概要

2024年3月、六本木五丁目西地区の市街地再開発事業が都市計画決定した。総延床は108万平方メートル、総事業費は8千億円規模で、中心は地上66階・高さ327メートル、延床80万平方メートルのオフィス中心のタワーである。約1,000戸の住宅とホテル・商業も併せて整える。

森ビルはこの事業を単独では手がけず、住友不動産と共同で参画する。住友不動産は、六本木五丁目を含む都心の進行中の再開発に投資済額を含め2兆円を投じる計画を掲げていた。森ビルで決断の時期に社長を務めたのは、2011年6月に就任した辻慎吾氏である。

背景
背景

六本木五丁目の再開発は、都市計画決定の9年ほど前から開示に出ていた。住友不動産は2015年5月の決算説明会資料で、竣工時期を未定としたまま六本木五丁目計画を主な新規プロジェクトに挙げている。同年11月には、国家戦略特区の参画物件として、緑地に複合MICE施設や外国人向けの居住・教育の環境を整える地区に位置づけた。

森ビルは、決定の直前に大型案件を相次いで完成させていた。2023年6月に麻布台ヒルズ森JPタワー、7月に虎ノ門ヒルズ ステーションタワーが竣工した。両施設の稼働と住宅分譲で、2024年3月期の営業収益は前期比26.2%増の360,485百万円、経常利益は71,762百万円になった。

内容
内容

計画地は森ビルの六本木ヒルズのすぐ隣にある。森ビルは虎ノ門・麻布台プロジェクトの資料で、周辺の地図に六本木ヒルズと並べて六本木五丁目プロジェクトを描いていた。2024年11月、住友不動産は第三者の持分を含む延床面積を327,000坪として、主な新規プロジェクトの一覧に載せた。

一方で、森ビルの有価証券報告書は、この案件を設備の計画として載せていない。2024年3月期から2026年3月期まで、重要な設備の新設の計画は無いと記している。仕掛かり中の再開発への投資は、営業キャッシュ・フローの積み立て、社債、借入、ビルの売却で賄う方針である。

沿革:意思決定前後の出来事12件
考察:隣の土地を、二社で背負う
考察

考察:隣の土地を、二社で背負う

なぜ森ビルは、この再開発を住友不動産と協業して進めることにしたのか。計画地は自社の六本木ヒルズのすぐ隣にある。森ビルにとって、隣地の再開発への関与は六本木ヒルズの価値にも関わる。一方で、総事業費は8千億円規模にのぼる。森ビルは2023年に麻布台ヒルズとステーションタワーを完成させたばかりだった。再開発の資金は、営業キャッシュ・フローと社債、借入、ビルの売却で賄っている。この規模を単独で負担するより、住友不動産と負担を分け、隣の土地への関与を保つことを選んだと考えられる。

もっとも、共同参画には弱みもある。事業を動かすのは再開発組合で、日程は森ビルにも住友不動産にも決められない。地権者が多く、反対する人もいる。しかも森ビルの有報には、この案件の投資額も時期も計画として載っていない。森ビルがどれだけの額を負うのかは、外からは分からない。隣の土地への関わりを保てた代わりに、いつ、いくらで完成するかを自社で決められない立場を引き受けたことになる。

都市計画決定から2年余りがたった。その間、森ビルの営業収益と経常利益は決定の期を上回り続けた。本業の業績は、大型案件を抱える余力を示している。2026年5月にはローズウッドの進出が決まり、建物の中身は固まりつつある。それでも竣工の見通しは第十一次中期経営計画以降へと先に送られた。決断を下した辻慎吾氏は、着工を見ないまま社長を退任した。この選択の評価は、着工の時期と森ビルが負う額が示されたときに定まるのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年8月

数字で見る

数値:意思決定前後の事業数値1件

森ビル:営業収益・経常利益・総資産の推移

営業収益(百万円)経常利益率(%)
(百万円)営業収益経常利益総資産
2019年3月期246,12757,9312,089,838
2020年3月期250,22260,7242,200,378
2021年3月期230,08248,5582,280,994
2022年3月期245,30653,7552,367,062
2023年3月期285,58259,9512,607,453
2024年3月期360,48571,7622,804,895
2025年3月期385,87478,5832,742,808
2026年3月期411,12491,2192,818,345

決定の期から2年で営業収益は3,604億円から4,111億円へ

森ビル:営業収益・経常利益・総資産の推移
(百万円)営業収益経常利益総資産備考
2019年3月期246,12757,9312,089,838
2020年3月期250,22260,7242,200,378
2021年3月期230,08248,5582,280,994
2022年3月期245,30653,7552,367,062
2023年3月期285,58259,9512,607,453当期の有報の値。第66期以降は経常利益60,531・総資産2,608,435に修正
2024年3月期360,48571,7622,804,8952024年3月に都市計画決定。麻布台ヒルズとステーションタワーが稼働
2025年3月期385,87478,5832,742,808
2026年3月期411,12491,2192,818,345
出所:森ビル 有価証券報告書 第65期(2023年3月期)【主要な経営指標等の推移】 / 森ビル 有価証券報告書 第68期(2026年3月期)【主要な経営指標等の推移】
出所:森ビル 有価証券報告書 第65期(2023年3月期)【主要な経営指標等の推移】 / 森ビル 有価証券報告書 第68期(2026年3月期)【主要な経営指標等の推移】
参考文献

参考文献

参考

  • 森ビル 有価証券報告書 第68期(2026年3月期)【役員の状況】
  • 森ビル 有価証券報告書 第68期(2026年3月期)【沿革】
  • 森ビル 有価証券報告書 第66期(2024年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • 森ビル「虎ノ門・麻布台プロジェクト ファクトブック」【計画概要】
  • 森ビル 有価証券報告書 第66期(2024年3月期)〜第68期(2026年3月期)【設備の新設、除却等の計画】
  • 森ビル 有価証券報告書 第68期(2026年3月期)【主要な経営指標等の推移】
  • 住友不動産 決算説明会資料「決算説明会資料(2015年5月)」
  • 住友不動産 ニュースリリース「国家戦略特区「三田三、四丁目地区」と連動した面的整備を実施」
  • 住友不動産 決算説明会資料「決算説明会(2024年5月)「持続的成長戦略」の積極的見直し」
  • 住友不動産 決算説明会資料「決算説明会(2024年11月)主な新規プロジェクト」
  • 住友不動産 決算説明会資料「2026年3月期 中間期決算説明会における主な質疑要旨」
  • 住友不動産 ニュースリリース「六本木五丁目西地区第一種市街地再開発事業 ラグジュアリーライフスタイルホテル「ローズウッド」が東京初進出」
  • 森ビル 会社資料「虎ノ門・麻布台プロジェクト ファクトブック」
  • 住友不動産 有価証券報告書「第91期(2024年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • 住友不動産 有価証券報告書「第93期(2026年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • 森ビル 有価証券報告書「第66期(2024年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】【設備の新設、除却等の計画】」
  • 森ビル 有価証券報告書「第65期(2023年3月期)【主要な経営指標等の推移】」
  • 森ビル 有価証券報告書「第68期(2026年3月期)【沿革】【主要な経営指標等の推移】【役員の状況】」

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