新宿駅西口の資産入替(2022年・小田急電鉄の決断)

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論点 新宿駅西口の資産再編と大型再開発の原資確保
売上高(億円)営業利益率(%)
1,300億円再開発へ振り向けた資産の入替

1,300億円再開発へ振り向けた資産の入替

概要

小田急電鉄は、2018年3月に完成させた複々線化事業の次の課題として、新宿駅西口の大型再開発に着手した。コロナ禍で収益が急落するなか、ハイアットリージェンシー東京と隣接オフィスビルを2023年3月に計約1,300億円で売却し、その資金を東急不動産・東京メトロと組む2029年度竣工予定の高さ約260メートル・地上48階建て複合ビルの投資に回した。本稿の時点で再開発は建設の途中にある。

背景

2018年3月、半世紀がかりの複々線化事業が完成し、小田急は新たな経営課題として新宿駅西口再開発の検討に入った。2020年からのコロナ禍で運輸・ホテル収入が急減し、2021年3月期には創業以来初となる398億円の最終赤字を計上、鉄道各社に共通する資産圧縮の機運が強まった。

内容

2022年2月、東急不動産が共同事業者として参画し投資額は2000億円規模に拡大、同時にハイアットリージェンシー東京の売却検討が明らかになった。小田急百貨店新宿店本館は2022年10月に営業を終え、2023年3月にはホテル棟をKKR・ガウ・キャピタル・パートナーズへ約600億円、オフィス棟を第一生命保険などへ約700億円、総額約1,300億円で売却した。

含意

2024年2月、小田急は再開発への投資額を1,300億円と正式に発表し、2029年度竣工の計画を維持した。老朽資産の売却益を次の大型投資に回す資産入替は、コロナ後にホテルを手放した近鉄・西武など鉄道各社にも共通する動きだった。

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筆者の見解 老朽資産と大型投資のあいだ
筆者の見解

老朽資産と大型投資のあいだ

新宿駅西口の資産入替は、単なる不動産の高値売却ではなく、稼ぐ力の乏しくなった老朽資産を手放し、その対価を次の投資に回す組み替えとして読み解くとわかりやすい。ハイアットリージェンシー東京は1980年の開業から40年以上を経てコロナ禍で稼働率が大きく落ち込んだ資産であり、百貨店本館もまた売場面積を縮小した後の姿を模索していた資産だった。複々線化という半世紀がかりの投資を終えたばかりの小田急が、続けてもう一つの大型投資に着手できたのは、こうした資産の組み替えを先に済ませていたためと思われる。

一方で、2029年度の竣工までにはなお数年を要し、地上48階・高さ約260メートルの複合ビルが新宿にどのような客層と収益をもたらすかは、竣工後にしかわからない。渋谷や丸の内で先行した再開発が街の性格そのものを変えてきたように、新宿駅西口の再開発もまた、単なるビルの建て替えにとどまらない街の書き換えを狙っている。本稿の時点では、その狙いがどこまで実を結ぶかは、まだ見えていない。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

参考文献
出典・参考
  • 小田急電鉄 有価証券報告書(連結)

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