筆者の見解
老朽資産と大型投資のあいだ
新宿駅西口の資産入替は、単なる不動産の高値売却ではなく、稼ぐ力の乏しくなった老朽資産を手放し、その対価を次の投資に回す組み替えとして読み解くとわかりやすい。ハイアットリージェンシー東京は1980年の開業から40年以上を経てコロナ禍で稼働率が大きく落ち込んだ資産であり、百貨店本館もまた売場面積を縮小した後の姿を模索していた資産だった。複々線化という半世紀がかりの投資を終えたばかりの小田急が、続けてもう一つの大型投資に着手できたのは、こうした資産の組み替えを先に済ませていたためと思われる。
一方で、2029年度の竣工までにはなお数年を要し、地上48階・高さ約260メートルの複合ビルが新宿にどのような客層と収益をもたらすかは、竣工後にしかわからない。渋谷や丸の内で先行した再開発が街の性格そのものを変えてきたように、新宿駅西口の再開発もまた、単なるビルの建て替えにとどまらない街の書き換えを狙っている。本稿の時点では、その狙いがどこまで実を結ぶかは、まだ見えていない。
Yutaka Sugiura, 2026年7月