米フォートレス系のTOB受入(2024年・常磐興産の決断)

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論点更新投資の原資をどう確保するか
常磐興産:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
東証スタンダード市場からの上場廃止と非公開化への移行

何をなぜ決めたか:東証スタンダード市場からの上場廃止と非公開化への移行

概要

2024年9月9日、常磐興産は米フォートレス・インベストメント・グループが組成したOntario合同会社による公開買付けに賛同し、株主への応募推奨を決議した。第一回の買付価格は1株1,650円で、公表前営業日の終値1,240円に33.06%のプレミアムを加えた水準にあたる。

応募は6,335,381株に達して株券等所有割合は72.14%となり、大株主を対象とした第二回を経て88.14%に上がった。552,891株を1株とする株式併合を経て、2025年2月19日に東京証券取引所スタンダード市場で上場廃止となった。

背景

1966年1月開業のスパリゾートハワイアンズをはじめとする施設は老朽化が進み、集客の拡大には多額の設備投資を要した。東日本大震災と新型コロナウイルス感染症で外部借入の負担が増し、有利子負債は2022年3月期末に336億75百万円、自己資本比率は15.2%まで低下していた。

2024年3月期の観光事業の設備投資は1億29百万円で、同じ期の減価償却費10億66百万円の八分の一にとどまる。取引金融機関の紹介でフォートレスから連絡があったのは2023年6月26日で、非公開化とその後の資本政策によって投資資金を調達する手段が示された。

内容

買付けは価格の異なる二段階に分けた。第一回は少数株主を対象に1株1,650円、第二回は筆頭株主の常磐開発、公益財団法人常磐奨学会、みずほ銀行、みずほ信託銀行、常陽銀行の5者が所有する1,404,699株(15.99%)を対象に1株1,240円とした。

第一回には買付予定数の下限として4,450,401株(50.67%)を置き、マジョリティ・オブ・マイノリティに相当する数を上回る水準に設定した。買付代金121億73百万円は全額がファンドからの匿名組合出資で、金融機関からの借入れによる調達はない。

含意

最終期となった2024年3月期の売上高148億81百万円・営業利益13億23百万円は「経営計画2023」の目標を上回っており、業績の悪化を理由とする売却ではなかった。論点は、回収に年数のかかる更新投資を、損益を毎期開示する立場のまま実行できるかにあった。

フォートレスは傘下のマイステイズとアコーディアが持つ宿泊・レジャー施設の運営ノウハウを挙げ、価値を高めた施設については信託受益権化による流動化やREITへの売却を含む施策を検討している。

いつ何が起きたか8件
当時の取締役8名

当時の取締役(2024年6月株主総会決議)

  • 西澤順一:会長
  • 下山田敏博:常務
  • 須藤照久:執行役員
  • 関根一志:社長
  • 内田英仁:取締役(監査等委員)
  • 藤巻康一:執行役員
  • 村中大輔:取締役(監査等委員)
  • 大和田洋:取締役(監査等委員)
考察:稼ぐ力ではなく、直す力が尽きかけていた
考察

考察:稼ぐ力ではなく、直す力が尽きかけていた

2024年3月期の営業利益13億23百万円は、「経営計画2023」が置いた8億70百万円を5割上回っていた。それでも上場を閉じたのは、稼ぐ力ではなく直す力のほうが先に尽きかけていたからである。同じ期の観光事業の設備投資は1億29百万円で、減価償却費の八分の一にとどまる。1966年開業の施設は、単年度が黒字であっても毎年価値が低下していた。震災とコロナで積み上がった借入を抱えたまま、回収に年数のかかる更新投資を自力で背負う選択肢は、実質的に閉じていたのだろう。

もっとも、資金の出し手を替えたことで、施設の行き先は同社の手を離れた。フォートレスは価値を高めた各施設について、その全部または一部を信託受益権化して流動化すること、REITへ売却することを含む施策を検討している。その投資が実行されるのかを外から確かめる手立ては、有価証券報告書の提出義務とともに消えた。株主優待制度も買付けの成立を条件に廃止され、地元の個人株主が施設と結んでいた細い関係も途切れている。75年余りの上場を閉じた判断は、更新投資の資金を得る代わりに、説明を届ける相手を一つに絞る選択でもあった。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

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図と表

常磐興産:観光事業の設備投資と減価償却費の推移

設備投資額(百万円)減価償却費(百万円)
常磐興産:観光事業の設備投資と減価償却費の推移
(百万円)設備投資額減価償却費セグメント利益備考
2020年3月期7471,321773
2021年3月期1,0251,220△2,373コロナ禍で観光事業が赤字に転落。設備投資は前期からの継続工事分
2022年3月期2341,165△1,490
2023年3月期5811,1351,196
2024年3月期1291,0662,307スパリゾートハワイアンズの維持更新が中心。減価償却費の八分の一
出所:常磐興産 有価証券報告書 第102〜106期(セグメント情報・設備の状況)
出所:常磐興産 有価証券報告書 第102〜106期(セグメント情報・設備の状況)

常磐興産:有利子負債と自己資本の推移

有利子負債(百万円)自己資本率(%)
常磐興産:有利子負債と自己資本の推移
(百万円)有利子負債自己資本総資産備考
2020年3月期27,58413,55248,245
2021年3月期32,62410,81650,297コロナ禍の資金繰りで短期借入金が69億98百万円まで増加した
2022年3月期33,6757,95952,344有利子負債はこの期末が頂点。自己資本比率は15.2%まで低下した
2023年3月期31,6608,98054,181
2024年3月期29,96710,63348,319
出所:常磐興産 有価証券報告書 第102〜106期(連結貸借対照表・借入金等明細表)
出所:常磐興産 有価証券報告書 第102〜106期(連結貸借対照表・借入金等明細表)

非公開化の条件

非公開化の条件
科目概要備考
公開買付者Ontario合同会社2024年6月20日設立の買収目的会社。Ontario Holdings I LLCが99.99%を出資
取引の構造二段階の公開買付けと株式併合少数株主向けの第一回と、応募に合意した大株主5者向けの第二回に価格を分けた
第一回の買付価格1株1,650円公表前営業日の終値1,240円に33.06%、過去6か月の終値平均に36.48%のプレミアム
第一回の買付期間2024年9月10日〜11月5日(37営業日)訂正届出書の提出に伴い、当初の30営業日から法令に基づき延長された
第一回の買付予定数の下限4,450,401株(所有割合50.67%)マジョリティ・オブ・マイノリティに相当する数を上回る水準に設定した
第一回の買付代金121億73百万円全額がFJOF V QII 2 L.P.の匿名組合出資。金融機関からの借入れはない
第一回の結果応募6,335,381株・所有割合72.14%決済の開始日は2024年11月12日。同日付で公開買付者が親会社に該当した
第二回の買付価格1株1,240円第一回より410円低い。常磐開発・常磐奨学会ら5者が1,404,699株の応募を合意
第二回の買付期間2024年11月13日〜12月10日(20営業日)買付予定数の上限・下限はいずれも設定していない
第二回の結果応募1,405,101株・所有割合88.14%決済の開始日は2024年12月17日。所有株式は合計7,740,482株となった
特別委員会独立社外取締役1名と外部専門家2名公認会計士の内田英仁氏、弁護士の国谷史朗氏、服部暢達氏の3名で構成する
株式併合552,891株を1株に併合2025年1月31日の臨時株主総会で賛成率99.63%で可決。効力発生日は2月21日
端数の処理1株につき1,650円相当を交付裁判所の許可を得て、端数の合計に相当する株式を公開買付者へ売却する
上場廃止2025年2月19日東京証券取引所スタンダード市場。株主優待制度も買付けの成立を条件に廃止
資本金の額の減少21億41百万円を1億円へ減少額20億41百万円をその他資本剰余金へ振り替え。2025年3月21日効力発生
出所:Ontario合同会社 公開買付届出書(第一回・第二回)/常磐興産 意見表明報告書・臨時報告書
出所:Ontario合同会社 公開買付届出書(第一回・第二回)/常磐興産 意見表明報告書・臨時報告書
当時の取締役8名

当時の取締役(2024年6月株主総会決議)

  • 西澤順一:会長
  • 下山田敏博:常務
  • 須藤照久:執行役員
  • 関根一志:社長
  • 内田英仁:取締役(監査等委員)
  • 藤巻康一:執行役員
  • 村中大輔:取締役(監査等委員)
  • 大和田洋:取締役(監査等委員)
参考文献

参考文献

参考
  • 常磐興産 有価証券報告書(2024年3月期・連結)
  • 常磐興産 有価証券報告書(2022年3月期・連結)
  • 常磐興産 有価証券報告書(2020年3月期・連結)
  • 常磐興産 有価証券報告書(2012年3月期・連結)
  • Ontario合同会社 公開買付届出書「公開買付届出書(第一回)」
  • 常磐興産 意見表明報告書「意見表明報告書(第一回)」
  • Ontario合同会社 公開買付報告書「公開買付報告書(第一回)」
  • 常磐興産 臨時報告書「親会社及び主要株主である筆頭株主の異動」
  • Ontario合同会社 公開買付届出書「公開買付届出書(第二回)」
  • 常磐興産 意見表明報告書「意見表明報告書(第二回)」
  • Ontario合同会社 公開買付報告書「公開買付報告書(第二回)」
  • 常磐興産 臨時報告書「株式併合に関する事項」
  • 常磐興産 臨時報告書「臨時株主総会の決議事項に対する議決権行使の結果」

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