ベインキャピタル傘下で再上場(2014年・すかいらーくHDの決断)

更新:
論点投資ファンドの出口を上場に求めるか
すかいらーくHD:業績の推移
売上高(億円)親会社株主に帰属する当期純利益率(%)
ファンドの保有株の売出しを主とした、8年ぶりの東証一部への復帰

何をなぜ決めたか:ファンドの保有株の売出しを主とした、8年ぶりの東証一部への復帰

概要

2014年10月9日、すかいらーくは東京証券取引所市場第一部に株式を上場した。2006年9月にMBOで上場を廃止してから8年ぶりの市場復帰である。発行価格は1株1,200円で、仮条件1,200円〜1,450円の下限で決まった。公募は4,138,000株、払込金総額は4,757百万円で、資本金は100百万円から2,478百万円に増加した。

市場に出た株の大半は、新株ではなく既存株主の売出しであった。公募4,138,000株に対し、引受人の買取引受けによる売出しは51,528,800株にのぼる。売出人のBain Capital Skylark Hong Kong Limitedは上場時に32,408,600株を売却し、それでも2014年12月末に65.00%を持つ筆頭株主として残った。経営は、2008年8月から代表取締役社長を務める谷真氏が引き続き担った。

背景

非上場化の目的は、短期の業績に左右されずに構造改革を進めることにあった。2006年6月、SNCインベストメントはすかいらーくと協議のうえ公開買付けを決め、議決権の94.38%を取得した。外食市場の縮小と競合の激化のなかで、ブランドの見直しや不採算店の閉店を速やかに実行する体制を構築するためである。2009年10月には、創業時の業態であるファミリーレストラン「すかいらーく」を完全に閉店した。

2011年に株主が入れ替わった。ベインキャピタル・パートナーズ・LLCが投資助言を行うファンドが間接保有するBCJホールディングス6は、同年11月30日に野村プリンシパル・ファイナンスなどから議決権の98.7%にあたる株式を取得し、2012年4月に完全子会社とした。親会社のBCJホールディングス5は、2011年11月の第三者割当増資で94,732百万円を調達している。

内容

上場の前に、会社の形を組み替えた。BCJホールディングス5は設立が2011年で、持株会社として上場するための「設立後3年以上の経過」などの要件を満たしていなかった。そこで2014年7月1日に事業会社の旧すかいらーくを吸収合併し、自らが「株式会社すかいらーく」に商号を変更した。8月4日には1株を100株に分割した。借入では、6月3日にみずほ銀行をエージェントとするシニアファシリティ契約を改め、上場基準を満たすとともに金利を引き下げた。

ファンドとの契約は上場で終わった。ベインキャピタル・パートナーズ・LLCとのマネジメント契約に基づき、すかいらーくは上場時に20億円、2015年5月29日に残り20億円を支払う義務を負い、上場日に20億円を支払った。公募の手取概算額5,633百万円は、全額を2015年12月までにレストラン事業の設備投資に充てる予定とした。配当は、調整後当期純利益の40%を連結配当性向の目標に置いた。

含意

上場した2014年12月期の売上収益は340,002百万円、営業利益は21,642百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は9,469百万円であった。親会社所有者帰属持分比率は、前期の24.1%から30.0%に上がった。期末の店舗数は3,014店で、期首の3,006店からほぼ横ばいにとどまった。

上場の後、ベインキャピタル系の株主は段階を踏んで持ち株を売却した。2015年6月には売出しで計49,741,600株を売却し、2017年3月の一部売却で親会社に該当しなくなり、同年6月と11月に残る全株を売却した。すかいらーくは2016年1月に持株会社体制へ移行し、2018年7月に「すかいらーくホールディングス」へ商号を変更した。

いつ何が起きたか12件
考察:再建の仕上げと、ファンドの出口
考察

考察:再建の仕上げと、ファンドの出口

なぜ2014年に上場だったのか。株主のベインキャピタル系の会社は、別の投資家へ株を一括して譲渡することもできたはずである。ところが上場では、公募4,138,000株に対して売出しが51,528,800株と、市場に出た株の大半が既存株主の持ち株だった。つまりこの上場は、会社の資金を調達する場ではなく、ファンドが保有株を段階的に売却するための場であったとみられる。合併で上場要件を整え、借入契約を改めた手順も、その出口を開く準備にあたる。

もっとも、上場の時点では再建の手応えはまだ限られていた。2014年12月期の営業利益は21,642百万円と前期を下回り、店舗数も3,014店でほぼ横ばいであった。発行価格が仮条件の下限の1,200円で決まったのは、市場の評価が慎重だったことを示すのだろう。しかもベイン系の株主は上場後も65.00%を保有していた。一般株主から見れば、会社の業績とは別に、大株主の売却が株価を左右する状態で上場を迎えたことになる。

上場から11年がたち、結果は数字に出ている。ファンドの出口という目的は果たした。ベイン系の株主は2017年11月までに全株を売却し、親会社所有者帰属持分比率は30.0%から2017年12月期に40.0%へ上がった。一方で収益力の回復は続かなかった。営業利益は2016年12月期の31,249百万円を頂点に下がり、2025年12月期も299億円にとどまる。この再上場は、ファンドの出口と財務の立て直しでは成功し、利益の成長では2016年12月期の水準を超えられなかった部分的な成功である。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る1表

数字で見る

図と表

すかいらーくHD:売上収益・営業利益と親会社所有者帰属持分の推移

売上収益(百万円)営業利益率(%)
すかいらーくHD:売上収益・営業利益と親会社所有者帰属持分の推移
(百万円)売上収益営業利益親会社所有者帰属持分資産合計備考
2012年12月期329,68517,34593,673304,397非上場。上場後の有報が遡って開示した値
2013年12月期332,48422,56373,932306,892資本剰余金を原資とする配当で持分が減少
2014年12月期340,00221,64293,691312,15510月に東証一部へ再上場
2015年12月期351,14627,806103,212314,8646月にベイン系の株主が売出しで追加売却
2016年12月期354,51331,249114,198318,3171月に持株会社体制へ移行
2017年12月期359,44528,103127,324318,20311月にベイン系の株主が全株を売却。持分比率は40.0%
2018年12月期366,36022,857130,453330,671
2019年12月期375,39420,562132,817453,979IFRS第16号「リース」を適用し資産合計が増加
出所:すかいらーく 有価証券報告書 第6期(2016年12月期)【主要な経営指標等の推移】 / すかいらーくホールディングス 有価証券報告書 第9期(2019年12月期)【主要な経営指標等の推移】
出所:すかいらーく 有価証券報告書 第6期(2016年12月期)【主要な経営指標等の推移】 / すかいらーくホールディングス 有価証券報告書 第9期(2019年12月期)【主要な経営指標等の推移】
参考文献

参考文献

参考
  • すかいらーく 有価証券報告書 第4期(2014年12月期)【沿革】
  • すかいらーく 有価証券報告書 第4期(2014年12月期)【発行済株式総数、資本金等の推移】
  • すかいらーく 有価証券報告書 第4期(2014年12月期)【大株主の状況】
  • すかいらーく 有価証券報告書 第4期(2014年12月期)【役員の状況】
  • すかいらーく 有価証券報告書 第4期(2014年12月期)【企業の概況】
  • すかいらーく 有価証券報告書 第4期(2014年12月期)【経営上の重要な契約等】
  • すかいらーく 有価証券報告書 第4期(2014年12月期)【主要な経営指標等の推移】
  • すかいらーく 有価証券報告書 第4期(2014年12月期)【業績等の概要】
  • すかいらーくホールディングス 有価証券報告書 第15期(2025年12月期)【沿革】
  • すかいらーくホールディングス 有価証券報告書 第15期(2025年12月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • すかいらーく 有価証券報告書 第6期(2016年12月期)【主要な経営指標等の推移】
  • すかいらーくホールディングス 有価証券報告書 第9期(2019年12月期)【主要な経営指標等の推移】
  • すかいらーく 適時開示「募集株式発行及び株式売出しに関する取締役会決議のお知らせ」
  • すかいらーく 適時開示「発行価格及び売出価格、国内外の売出株式数並びにオーバーアロットメントによる売出しの売出株式数決定のお知らせ」
  • すかいらーく ニュースリリース「新任取締役就任に関するお知らせ」
  • すかいらーく 有価証券報告書「第4期(2014年12月期)【企業の概況】【沿革】【経営上の重要な契約等】【大株主の状況】【役員の状況】」
  • すかいらーく 有価証券報告書「第5期(2015年12月期)【大株主の状況】」
  • すかいらーく 有価証券報告書「第7期(2017年12月期)【関係会社の状況】」
  • すかいらーくホールディングス 有価証券報告書「第15期(2025年12月期)【沿革】【主要な経営指標等の推移】」

次に読む決断

免責事項およびポリシー