日産自動車 ルノーとの資本提携 仏大手からの36.8%出資と経営陣の受け入れ、世界規模での事業の相互乗り入れ
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何をなぜ決めたか
- 概要
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1999年3月27日、自力再建が届かなかった日産自動車が、仏ルノーと"アライアンス及び資本参加契約"を結んだ経営判断。ルノーは第三者割当増資で株式の36.8%を5,857億円で取得し、欧州の販売金融子会社の買い取りを含めて総額6,430億円を投じた。同時に引き受けた新株引受権付社債で、持株比率を44.4%まで引き上げる権利も得た。資本だけでなく経営と事業の両面で結びつき、元ルノー上席副社長のカルロス・ゴーン氏が最高執行責任者として日産の経営に入った。2002年には日産もルノー株式の15%を持ち、相互出資の形が整った。
- 背景
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日産は1998年5月に自力での再建計画(Global Business Reform Plan)を公表し、連結有利子負債を1998年3月期の2.3兆円から2001年度に約1.3兆円へ減らす目標を掲げた。販売台数が落ちるなか、1999年3月期の売上高営業利益率は1.3%から1.7%へわずかに上がったにとどまった。
1997年末には月間の国内販売台数でホンダに抜かれ、塙義一社長は日産の体質を"他責の文化""大企業病"と自己診断した。1999年3月期末の自動車事業実質有利子負債は1兆8,671億円で、売上高の3割に迫る重さが残っていた。ルノーから得た資金は、その大半を債務の削減に充てる方針とした。
- 内容
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経営では、カルロス・ゴーン氏が塙義一社長のもとで全副社長の報告を受けて業務を執行し、ルノーのパトリック・ペラタ氏が商品・企画担当の副社長、ティエリー・ムロンゲ氏が副CFOとして取締役に入った。塙義一社長はルノーの取締役に就き、日産からも2名がルノーの上席副社長へ移った。両社のCEOが率い、双方5名の幹部で構成するグローバル・アライアンス・コミッティ(GAC)が、11のクロス・カンパニー・チーム(CCT)の提案を決め、両社が独立した会社としてそれぞれ実行する仕組みをとった。
事業では、プラットフォームを中長期で約10に集約し、次期マイクラとクリオで年100万台規模の共通プラットフォームを使う。小型ディーゼルエンジンを共同で開発し、日産のCVTと4WD、ルノーの新型マニュアル変速機を相互に供給する。メキシコとASEANの日産工場をルノーが、メルコスールのルノー工場を日産が使う相互補完も検討した。2000年度から2002年度の3年間で3,900億円のシナジーを見込み、その最大の源泉は購買とした。
- 含意
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提携は計画どおり形になった。2001年4月にルノー日産共同購買会社(RNPO)を設立し、日産リバイバルプランのコスト削減に2年間で1%を上乗せした。2001年12月にはメキシコでクリオの生産を始め、2002年にはブラジルでフロンティア、バルセロナで小型商用車の生産へ広げた。2002年3月にルノーが新株引受権を行使して44.4%へ引き上げ、日産は日産ファイナンスを通じてルノー株式13.5%を取得し、共同運営会社"ルノー・日産会社"を設けた。5月には日産の保有が15%に達した。
ただし、日産が持つルノー株式はフランス商法により議決権を行使できず、44.4%対15%という非対称は20年以上そのまま残った。相互約15%へ組み替えられたのは2023年である。
いつ何が起きたか 12件
筆者の見解
資本より重かった経営の受け入れ
この提携の核心は、5,857億円という出資額よりも、経営の執行を外から受け入れた点にある。ルノーが得たのは株式の36.8%と44.4%までの買い増し権に加え、最高執行責任者と商品・企画、財務の要職だった。一方でGACとCCTの仕組みは、両社が独立した会社として決定を実行する建て付けで、合併ではなく互いの強みを持ち寄る形を選んでいる。自力の再建計画で負債の圧縮が届かなかった日産にとって、資金と規律と執行者を一度に得る道はこれしかなかったのだろう。
もっとも、対等をうたう仕組みと、資本の非対称は最初から並んでいた。日産はのちにルノー株式の15%を持ったが、フランス商法のもとでその議決権は使えず、ルノーは日産の株主総会で4割を超す議決権を持ち続けた。提携を救済として始めた以上、再建が進んで日産の稼ぐ力がルノーを上回ったとき、資本の形と実力の差をどう埋めるかは避けられない問いとして残った。その答えが出たのは、契約から24年後の相互約15%への組み替えである。
Yutaka Sugiura, 2026年6月
業績の推移
提携の条件
提携の条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 契約の締結 | 1999年3月27日 | ルノーとの「アライアンス及び資本参加契約」(AEPA) |
| 提携の対象範囲 | 自動車事業全般 | プラットフォームとパワートレインの共用、共同購買、特定市場での販売とマーケティング |
| ルノーの取得比率 | 36.8% | AEPAに基づく取得。当社も将来ルノー株式を取得する機会を得た |
| 出資額 | 585,700百万円 | 1999年5月28日に新規普通株式1,464,250千株を1株当たり400円で発行した |
| 同時に発行した社債 | 215,900百万円 | 2004年満期新株引受権付変動金利型社債。ルノーへ発行した |
| 新株引受権の行使価額 | 1株当たり400円 | 第三者への譲渡は禁止。2004年5月21日まで行使できる |
| 新株引受権の上限 | 44.4% | 発行から4年間はルノーの持分比率が39.9%を超えない範囲に制限された |
| ルノーの株式取得制限 | 44.4%超は禁止 | 当社取締役会の事前承諾が要る。第三者が当社株式の20%以上を取得した場合を除く |
| 当社の株式取得制限 | 15%超は禁止 | ルノー取締役会の事前承諾が要る |
| ルノーによる取締役の指名 | 2名 | RAMAに基づく。第124期(2023年3月期)時点で当社の取締役を務める |
| 会計上の取扱い | 持分法適用関連会社 | 当社から見たルノー。ルノーは当社のその他の関係会社にも該当する |
| 日産ディーゼル工業への出資 | 22.5% | 1999年7月にルノーが持株比率を引き上げた |
出所:日産自動車 有価証券報告書 第124期(2023年3月期)【経営上の重要な契約等】/アニュアルレポート2000(2001年3月期)【連結財務諸表の注記 11.株主持分】/アニュアルレポート2001(2002年3月期)【提携関係の概要】
ルノーと日産の相互出資の推移
日産自動車:ルノーと日産の相互出資の推移
| (%) | ルノーの当社株式所有比率 | 当社のルノー株式所有比率 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1999年5月 | 36.8 | − | 新規普通株式1,464,250千株を1株400円・総額5,857億円で引き受けた |
| 2002年3月 | 44.4 | 13.5 | ルノーが新株引受権を行使。当社は日産ファイナンスを通じて取得した |
| 2002年5月 | 44.4 | 15 | 2度目の第三者割当増資の引き受けで相互出資が成立した |
| 2023年3月末 | 43.7 | 15 | ルノーの比率は議決権ベース。当社の保有分は議決権の行使が制限される |
| 2024年3月末 | 15.9 | 15 | ルノーが受益者となる信託が別に24.8%を所有する |
出所:日産自動車 有価証券報告書 第124期(2023年3月期)・第125期(2024年3月期)【関係会社の状況】【経営上の重要な契約等】 / 日産自動車 アニュアルレポート2001(2002年3月期)【連結財務諸表の注記 11.株主持分】
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参考文献
- 日経ビジネス 1998年2月16日号(日経BP社)
- 日産自動車 アニュアルレポート「Annual Report 1998 "A New Alliance"(1999年3月期)」
- 日産自動車 有価証券報告書「第124期(2023年3月期)【経営上の重要な契約等】」
- 日産自動車 アニュアルレポート「アニュアルレポート2000(2001年3月期)【連結財務諸表の注記 11.株主持分】」
- 日産自動車 アニュアルレポート「アニュアルレポート2001(2002年3月期)【提携関係の概要】」
- 日産自動車 有価証券報告書「第107期(2006年3月期)【沿革】」
- 日産自動車 有価証券報告書「第125期(2024年3月期)【関係会社の状況】」
- 日産自動車 有価証券報告書「第126期(2025年3月期)【重要な契約等】」
- 日産自動車 決算説明会資料「2000年度決算及び日産リバイバルプラン初年度振り返り」