日産自動車 Re:Nissanで7工場統廃合 2万人規模の人員削減と生産体制の縮小に踏み込んだ経営再建計画

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時期 2025年5月
論点 過剰生産能力の解消と単独再建の道筋
何をなぜ決めたか
概要

2025年5月、日産自動車がイヴァン・エスピノーサ社長のもとで経営再建計画「Re:Nissan」を発表し、2027年度までに世界の車両生産工場を17から10へ減らして7拠点を統廃合し、2024年度から2027年度にかけて計20,000人の人員を削減すると決めた経営判断。生産能力は2027年度までに年間250万台まで削り、需要の増加に合わせて50万台の上方弾力性を持たせる。

掲げたのは、2024年度の実績比で固定費と変動費を計5,000億円削減し、2026年度までに自動車事業の営業利益とフリーキャッシュフローを黒字化することだった。米国関税の影響はこの目標から除いている。

背景

2025年3月期の親会社株主に帰属する当期純損失は6,709億円となり、前期に比べ1兆975億円の悪化となった。中国・北米での販売不振に、拡大期に積み増した生産能力の過剰が重なり、値引きと在庫がコストを圧迫した。

減損損失は4,949億円に達し、うち4,644億円が自動車事業の事業用資産に対するものだった。自動車事業のセグメント損益も2,680億円の損失へ転落した。ホンダとの経営統合協議も2025年2月に破談し、規模を外から補う道が閉じるなか、単独での立て直しを迫られた。

内容

4月に社長へ就任したイヴァン・エスピノーサ氏は前中期計画「The Arc」を撤回し、Re:Nissanへ差し替えた。固定費2,500億円・変動費2,500億円の計5,000億円を削減の目標に置き、北九州市のLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリー新工場の建設も中止した。

エスピノーサ社長は 『自動車事業の営業利益をポジティブにするためには数千億に上る収益の改善が求められますが、この5,000億円の削減はそれでカバーでき、他のマイナス要因を賄えると考えています』 と、削減幅がそのまま黒字化の原資になると見込んだ。7月には母国の主力拠点である追浜工場の車両生産を2027年度末に終え、子会社の日産自動車九州へ移すと発表している。

含意

1990年代の座間と2001年の村山に続き、日産はふたたび国内工場の閉鎖に着手した。今回は、規模を確保するために生産能力を持ち続ける発想から、量に頼らない収益への転換をめざす。

実行1年目の2026年3月期には固定費約2,000億円・変動費約550億円を削り、連結従業員数は132,790人から120,079人へ減った。減損損失も3,662億円へ縮んだが、自動車事業のセグメント損益は2,929億円の損失で、営業損益の黒字化はまだ先にある。2026年度が計画の最終年で、統廃合する7拠点のうち6拠点をこの年度中に終える予定である。

いつ何が起きたか 6件
筆者の見解
筆者の見解

規模を追わない再建の入り口

この再建の核心は、日産が長く抱えてきた過剰生産能力に、母国の主力拠点まで含めて手をつけた点にある。1990年代の座間でも国内工場の閉鎖に着手したが、そのときはフルライン堅持と系列依存という枠の内にとどまった。7拠点の統廃合と20,000人の削減、そして生産能力を年間250万台へ落とす決定は、量を確保するために能力を持ち続ける従来の発想を、量に頼らない収益へと組み替えようとする試みだった。ホンダとの統合が消え、規模を外から補う道が閉じたことが、この単独で身を削る決断を後押ししたとみられる。

もっとも、能力を削るだけで再建が成るわけではない。実行1年目の2026年3月期は、固定費を約2,000億円削っても自動車事業のセグメント損益は2,929億円の損失にとどまり、前期の2,680億円の損失より深い。売上高が6,776億円減少した分を、費用削減が追い切れていない。工場と人を減らした先で、日産が何を売って稼ぐのかという商品と市場の答えは、まだ数字になっていない。座間から追浜へと続く能力削減の歴史は、痛みを伴う整理が再建の入り口ではあっても、それだけでは出口にならないと教えている。計画の最終年である2026年度に、削ったあとの一手が問われる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
再建計画の条件と実行1年目の実績

再建計画の条件と実行1年目の実績

科目 概要 備考
計画名 日産経営再建計画「Re:Nissan」 コスト構造の抜本的改革、市場戦略及び商品戦略の再定義、パートナーシップの強化が柱
発表 2025年5月13日 2024年度通期の決算発表と同時に公表し、前計画「The Arc」を差し替えた
対象となる拠点 車両生産工場を17から10へ統合 パワートレイン工場も見直す。北九州市のLFPバッテリー新工場は建設を中止
生産能力 2027年度までに年間250万台へ削減 グローバルで100万台の削減。需要の増加に合わせ50万台の上方弾力性を持たせる
人員削減 2024年度から2027年度にかけて計20,000人 生産部門、一般管理部門、契約社員も含むR&D部門の直接員と間接員が対象
コスト削減の目標 5,000億円(2024年度実績比) 固定費2,500億円・変動費2,500億円。2026年度までに実現する
コスト削減の実績 固定費約2,000億円・変動費約550億円 2025年度末時点。変動費は改善案5,000件超で想定効果額2,700億円
黒字化の目標 2026年度に自動車事業の営業利益とFCFを黒字化 米国関税の影響を除く。2025年度の自動車事業FCFは4,808億円のマイナス
減損損失(2025年3月期) 494,935百万円 自動車事業464,367・販売金融事業2,686・遊休資産等27,882の内訳
減損損失(2026年3月期) 366,247百万円 自動車事業の事業用資産240,122・遊休資産等126,125。前期から128,688減
拠点再編に伴う減損 処分予定資産55,472百万円 2026年3月期の遊休資産等の内訳。再編の意思決定により処分が見込まれる資産
特別退職加算金 85,048百万円 2026年3月期。2025年3月期は40,619百万円で、区分掲記へ組み替えた
設備投資の計画 2026年度は4,800億円 2025年度計画の6,050億円から1,250億円減。所要資金は自己資金で充当
完了予定 2026年度が計画の最終年 統廃合する7拠点のうち6拠点を2026年度中に完了する予定

出所:日産自動車 有価証券報告書 第126期(2025年3月期)・第127期(2026年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【設備の新設、除却等の計画】【連結損益計算書関係】

減損損失と特別損失の推移

日産自動車:減損損失と特別損失の推移

(百万円) 減損損失特別退職加算金特別損失合計 備考
2021年3月期 9,109−145,040 特別退職加算金は特別損失の「その他」に含まれ、区分掲記されていない
2022年3月期 16,973−55,910
2023年3月期 8,615−151,872
2024年3月期 58,972−130,361
2025年3月期 494,93540,619646,571 Re:Nissan発表の前期。減損損失のうち464,367が自動車事業の事業用資産
2026年3月期 366,24785,048576,838 Re:Nissan実行1年目。処分予定資産55,472に拠点再編に伴う減損を含む
減損損失と特別損失
減損損失(百万円)減損損失以外の特別損失(百万円)

出所:日産自動車 有価証券報告書 第122〜127期(連結損益計算書、報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報)

従業員数の推移

日産自動車:従業員数の推移

(人) 連結従業員数提出会社の従業員数臨時従業員(年間平均) 備考
2021年3月期 131,46122,82516,092
2022年3月期 134,11123,16615,743
2023年3月期 131,71923,52515,397
2024年3月期 133,58024,03416,549
2025年3月期 132,79024,41316,031 人員削減は2024年度から2027年度にかけて計20,000人を計画する
2026年3月期 120,07923,17414,840 連結で12,711人の減。就業人員で、臨時従業員は年間の平均人員
連結従業員数
提出会社の従業員数(人)連結子会社の従業員数(人)

出所:日産自動車 有価証券報告書 第122〜127期【従業員の状況】

自動車事業の売上高・損益・設備投資

日産自動車:自動車事業の売上高・損益・設備投資

(百万円) 売上高セグメント損益設備投資 備考
2021年3月期 6,883,088△437,021383,513
2022年3月期 7,420,892△155,059361,613
2023年3月期 9,591,85942,952370,839
2024年3月期 11,582,863221,574424,116
2025年3月期 11,437,856△267,979580,150 販売不振と関税への懸念で損益が転落し、Re:Nissanの起点となった期
2026年3月期 10,760,298△292,890540,585 2026年度は連結で4,800億円の設備投資を計画し、投資も抑える
自動車事業の売上高とセグメント損益率
売上高(百万円)セグメント損益率(%)

出所:日産自動車 有価証券報告書 第122〜127期【セグメント情報等】

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参考文献
出典・参考

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