四半期の株価に追われずに不採算店を閉鎖し、大型店中心の構造を組み替えるには、市場の目から一度離れる必要があった。店舗網を作り替える時間を、上場企業の身分と引き換えに買う取り引きである。横川竟社長が再上場を5年後とし、人事権と資産処分権を自らに残す条件を付したのは、時間だけを買い、経営の主導権は譲らないという線引きだったのだろう。2,700億円という国内最大級の値づけは、その主導権の対価でもあった。
ただし、資金の1,500億円を野村とCVCに依存した座組では、主導権を条件で縛りきることは難しかった。業績が計画を下回ると分かった2008年、大株主となったファンドは業績不振を理由に横川氏の退任を求め、創業家はことぶき食品以来の経営から退いた。買ったはずの時間は、創業家が退任した後の再建に使われ、店舗網の整理はそこから本格化する。主導権を守るための条件が資金の出し手との力関係の前でどこまで有効かを、この一件は示しているといえる。