すかいらーくホールディングス創業家と投資ファンドによる総額2,700億円超のMBOと東証一部からの非上場化
- 概要
- 2006年、すかいらーくは創業家の横川竟社長が主導し、投資ファンドと組む経営陣による買収(MBO)で非上場化した。SNCインベストメントが同年7月に公開買付けを実施し、9月に東京証券取引所市場第一部の上場を廃止する。総額2,700億円を超える当時の国内最大級の買収で、株式交換を経てすかいらーくはSNCの完全子会社となった。
- 背景
- 1982年の東証二部上場、1984年の一部指定を経て、すかいらーくは上場企業として四半世紀を歩んだ。ガスト転換でバブル崩壊後の危機は越えたものの、家賃の高い立地の大型店中心の店舗構造や膨らんだ有利子負債が残り、上場のままでは着手しにくい課題が積み残されていた。
- 内容
- 買収の主体には野村プリンシパル・ファイナンスと欧州系のCVCキャピタル・パートナーズが名を連ね、負債を含め2,500億円を超える規模で組まれた。横川社長は上場を5年後とすること、人事権と資産処分権を自らが持つことを条件とし、四半期業績や株価の圧力から離れて構造改革を進める狙いを掲げた。
- 含意
- 非上場化の後も業績はすぐには上向かず、2008年には大株主となった野村・CVCが業績不振を理由に横川社長の退任を求めた。創業家経営はここで途切れ、2011年にベインキャピタルが親会社となる。2014年10月の再上場時の時価総額は約2,219億円で、MBO前の水準には届かなかった。
筆者の見解
主導権と時間をめぐる取り引き
四半期の株価に追われずに不採算店を畳み、大型店中心の構造を組み替えるには、市場の目から一度離れる必要があった。店舗網を作り替える時間を、上場企業の身分と引き換えに買う取り引きである。横川竟社長が再上場を5年後とし、人事権と資産処分権を自らに残す条件を付したのは、時間だけを買い、経営の主導権は手放さないという線引きだったとみられる。2,700億円という国内最大級の値づけは、その主導権の対価でもあった。
ただし、資金の1,500億円を野村とCVCに頼った座組では、主導権を条件で縛りきることは難しかった。業績が計画に届かないと分かった2008年、大株主となったファンドは業績不振を理由に横川氏の退任を求め、創業家はことぶき食品以来の経営から退いた。買ったはずの時間は、創業家が去った後の再建に使われ、店舗網の整理はそこから本格化する。主導権を守るための条件が資金の出し手との力関係の前でどこまで有効かを、この一件は示しているといえる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
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