ローランド 常若コーポレーションの子会社化 創業者の反発の中でのMBOによる非公開化
更新:
何をなぜ決めたか
- 概要
-
2014年5月14日、ローランドの三木純一社長は、大株主の米系投資ファンド、タイヨウ・ファンドと組み、経営陣とファンドが出資するSPC(常若コーポレーション)を通じてTOBで全株式を取得するMBO(経営陣による買収)を発表した。買収総額は約416億円であった。これに対し創業者の梯郁太郎氏が猛反発し、混乱の中でTOBは成立、同年10月に上場廃止に至った。
- 背景
-
電子楽器の販売は長く下降線をたどり、2010年3月期から4期連続で最終赤字を計上していた。三木純一社長は、上場しているかぎり株価や利益の増減に縛られて短期間の同時並行の改革ができないとして、非上場化による構造改革の加速を選択した。
- 内容
-
経営陣とタイヨウ・ファンドが出資するSPCが、1株1,875円でTOBを実施し全株式を取得する。TOBと同時にプリンタ子会社ローランドDGの保有株の一部を自己株取得に応じて売却し、買収資金の一部に充てる仕組みであった。TOB不成立でも少数株主を排除できるスクイーズアウトの手法が用いられた。
- 含意
-
筆頭株主である財団の理事長を務める創業者・梯氏が"ファンドによる乗っ取り"と反対し、TOB期間中に株主総会を迎える異例の展開となった。効率を急ぐ経営陣と、短期利益を追うファンドを容れない創業者の理念が正面から衝突した判断であった。
いつ何が起きたか 9件
筆者の見解
効率の論理と、創業者の理念
この判断の核心には、成熟し変質する電子楽器市場のなかで4期連続赤字を抱えた事業を、上場の制約のもとで立て直すことの難しさがあった。株価や短期の利益から離れ、拠点統廃合や製品点数の削減を非公開下で一気に進める——資本政策としてのMBOは、改革の速度を優先する経営陣にとって理にかなった選択であっただろう。ただ、その対象が創業者みずから育て、世界共通規格MIDIとともに音楽産業に足跡を残した会社であったために、判断は財務や手続きの当否を超えて、会社が誰のものかという問いにまで及んだ。
効率を急ぐ経営陣と、短期利益を追うファンドを容れない創業者。両者は立て直しの必要では一致しながら、ファンドの参画という一点で最後まで交わらなかった。創業者の反発、低い応募確保からの出発、割安との指摘が重なるなかで押し切られたMBOは、その後の構造改革と再上場によって結果としては事業の再生につながっていったとみられる。もっとも、創業者の理念と投資家の論理がどこで折り合うのかという問いは、非公開化の是非とは別に、なお残されたままであった。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
同じ問いに直面した会社
同じ問いに直面した会社
参考文献
- ローランド 有価証券報告書(2014年3月期)
- ローランド 有価証券報告書・適時開示(MBO・上場廃止・再上場に関する開示)