筆者の見解
特化を組織で支えるということ
この判断の核心は、業績の失速を営業の努力や商品数の増加で取り返すのではなく、開発組織の設計そのものに原因を求めた点にある。プロダクトリーダーが企画から生産までを抱えれば責任は明快だが、規模が大きくなると目先の採算が新技術への挑戦を抑えてしまう。ローランドはその構造を見抜き、企画と生産を切り離してプロデューサーを企画に専念させ、斬新さを経営会議で問う仕組みを重ねた。組織を大きくするのではなく役割を絞ることで挑戦を促す——"縮小"という言葉が示すのは後退ではなく、開発を身軽にする選択であったのだろう。
もっとも、こうした仕組みが働き続けるには、市場の変化を読める若い企画者を絶えず育てられるかが問われる。プロデューサーの数を増やし、同時に開発できる製品を増やしたいという当時の課題は、人材の育成にそのままかかっていた。特化を貫くほど、一つひとつの分野で二百歩先を読み続ける負荷は重くなる。創業者の特化の思想を組織で支えるこの体制が、世代を超えて機能し続けられるかは、その後の育成の成否に委ねられていたといえる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月