TKHDによるMBO非公開化(2010年・幻冬舎の決断)

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論点株式を非公開化して事業を再構築するか
幻冬舎:業績の推移
売上高(百万円)営業利益率(%)
純資産割れの株価のもとでの公開買付けとジャスダック上場の廃止

何をなぜ決めたか:純資産割れの株価のもとでの公開買付けとジャスダック上場の廃止

概要

2010年10月、見城徹氏=社長が代表を務める特別目的会社TKホールディングスが、幻冬舎株式に対する公開買付けを発表した。創業から17年でジャスダックを降り、経営陣が全株を握る体制へ移す判断である。

非公開化に向かう出発点の株式構成は偏っていた。2010年3月31日時点の発行済株式総数は36,000株。うち自己株式が8,650株で24.02%を占め、見城徹氏が8,300株・23.05%を持つ。議決権のある株式は27,350株にとどまり、創業社長と会社自身で半分近くを押さえていた。2011年3月、上場は廃止された。

背景

業績は非公開化の理由になっていない。2010年3月期の売上高131億6,791万円は過去最高で、営業利益16億7,696万円、経常利益17億3,646万円、当期純利益9億3,361万円をあげた。自己資本比率は64.9%、有利子負債はゼロである。

離れていたのは株価だった。第17期の株価は最高168,000円・最低111,000円。連結の1株当たり純資産額358,101円48銭の半値以下で、解散して配るほうが得になる水準に市場は値を付けていた。

内容

公開買付けに先立つ2年、会社は自社株買いを続けている。2009年5月15日の取締役会で1,000株・1億5,000万円、同年11月25日の取締役会で1,500株・2億2,000万円の取得枠を決議し、2010年3月期に合わせて2,081株・2億9,955万円を買い付けた。

その結果、自己株式は8,650株に積み上がり、議決権の分母は27,350株まで縮んだ。市場に出回る株式を減らしてから公開買付けに入る流れであり、買い集める側にとっては必要な株数がその分だけ軽くなる。

含意

上場廃止を境に、業績の開示は途絶えた。2011年3月期以降の売上高・利益・純資産は公表されていない。外から確かめられる最後の姿は、売上高が過去最高、有利子負債ゼロ、純資産101億5,468万円という2010年3月期の決算である。

公開買付けの価格や応募の結果は、会社の公表資料からは追えない。決議期にあたる第18期の有価証券報告書は、上場廃止により提出されていないためである。非公開化の是非を測る材料そのものが、この判断によって外部から見えなくなった。

いつ何が起きたか8件
考察:値を付けたのは誰か
考察

考察:値を付けたのは誰か

非公開化の是非は、結局のところ株価と純資産の開きをどう読むかに帰する。連結の1株当たり純資産額358,101円48銭に対し、第17期の株価は最高でも168,000円だった。市場の評価は実態に合わないという理由で降りるのであれば、降りる価格の出発点もその市場価格に置くほかない。編集者の目利きを貸借対照表に載らない資産と考えるなら、それを織り込まない株価を買い取りの基準に使うことは、自らの主張と噛み合わない。値付けの循環が、この判断の芯に残っている。

もっとも、市場の評価が一方的に低すぎたとも言い切れない。買い手が名乗り出るまで、誰も本気で値を付けていなかっただけかもしれないからである。確かめようはない。2010年3月期を最後に業績の開示は止まり、電子書籍が流通を変えるという見通しに幻冬舎がどう応えたのかも、非公開のまま歩んだ15年について外から検証する手立てがない。市場が値を付けられなかったのか、値の付く構成で事業が示されなかったのか——問いは保留されたままである。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る2表

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図と表

幻冬舎:売上高・営業利益・純資産額の推移

売上高(百万円)営業利益率(%)
幻冬舎:売上高・営業利益・純資産額の推移
(百万円)売上高営業利益純資産額備考
2005年3月期11,8882,1736,485第12期。売掛金に関する不正行為を受けた訂正報告書の訂正後の値
2006年3月期10,9472,3479,885
2007年3月期10,9001,7009,989
2008年3月期11,5041,7649,593
2009年3月期11,6411,3769,538
2010年3月期13,1681,67710,155非公開化前の最後の通期開示。売上高は過去最高で、有利子負債はゼロ
出所:幻冬舎 有価証券報告書 第17期(2010年3月期)【主要な経営指標等の推移】【連結損益計算書】 / 幻冬舎 有価証券報告書 第11期〜第15期の訂正報告書(訂正の概要・連結財務諸表)
出所:幻冬舎 有価証券報告書 第17期(2010年3月期)【主要な経営指標等の推移】【連結損益計算書】 / 幻冬舎 有価証券報告書 第11期〜第15期の訂正報告書(訂正の概要・連結財務諸表)

非公開化直前の株式の状況

非公開化直前の株式の状況
科目概要備考
発行済株式総数36,000株発行可能株式総数は144,000株。単元株制度は採用していない
自己株式8,650株(24.02%)2009年の取締役会決議2件により、2010年3月期に2,081株・2億9,955万円を取得した結果
総株主の議決権27,350個自己保有株式8,650株に議決権はなく、その分だけ買い集めに要する株数は軽くなる
筆頭株主の所有株式数8,300株(23.05%)見城徹。上位10名の合計は13,656株・37.93%で、残りは市場に分散していた
1株当たり純資産額358,101円48銭連結。単体では313,079円37銭
株価(第17期)最高168,000円・最低111,000円ジャスダック証券取引所。1株当たり純資産額の半値以下で推移した
公開買付けの条件有価証券報告書に記載なし公表は2010年10月で直前の第17期には記載がなく、決議期の第18期は上場廃止により提出がない
出所:幻冬舎 有価証券報告書 第17期(2010年3月期)【株式等の状況】【自己株式の取得等の状況】【株価の推移】
出所:幻冬舎 有価証券報告書 第17期(2010年3月期)【株式等の状況】【自己株式の取得等の状況】【株価の推移】
参考文献

参考文献

参考
  • 幻冬舎 公式サイト「沿革」
  • 幻冬舎 有価証券報告書「第17期(2010年3月期)【株式等の状況】【自己株式の取得等の状況】【株価の推移】」
  • 幻冬舎 有価証券報告書「第17期(2010年3月期)【主要な経営指標等の推移】【連結損益計算書】」
  • 幻冬舎 訂正有価証券報告書「第11期〜第15期の訂正報告書」

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