ツルハホールディングスと統合(2024年・ウエルシアHDの決断)

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論点同業の傘下に入り統合するか
ウエルシアHD:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
統合に伴う傘下入りと、独立した上場企業としての幕引き

何をなぜ決めたか:統合に伴う傘下入りと、独立した上場企業としての幕引き

概要

2024年2月28日、ウエルシアホールディングスは親会社のイオン、業界2位のツルハホールディングスと資本業務提携契約を締結し、経営統合の協議に入った。最終合意の期限は2027年12月31日と置かれていたが、2025年4月11日に最終契約と株式交換契約を締結して2年8か月早め、同年12月1日にツルハホールディングスの完全子会社となった。東京証券取引所プライム市場の上場は前日までに廃止され、最終売買日は11月26日であった。

背景

ドラッグストアはオーバーストアが常態化し、食品を軸に安売りする競合が伸びる一方、規模で先行するウエルシアの収益力は頭打ちになっていた。経常利益は2023年2月期の521億円を頂点に、2024年2月期477億円、2025年2月期408億円と2期続けて減少し、売上高に対する比率も4.6%から3.2%へ下がった。2025年2月期は不採算店舗の減損損失131億円を特別損失に計上し、当期純利益は前期比43.5%減の150億円にとどまった。

内容

ツルハホールディングスを株式交換完全親会社、ウエルシアを株式交換完全子会社とする株式交換で、ウエルシア1株にツルハ株1.15株を割り当てた。ツルハが2025年9月1日に1株を5株へ分割する前の比率では0.23株にあたる。公正取引委員会へは2025年3月31日に届け出て、4月30日に排除措置命令を行わない旨の通知を受けた。株式交換契約は5月27日の定時株主総会で承認され、交付された株式は237,308,868株となった。

含意

売上高1兆2,850億円で業界首位に立つ側が、1兆円規模の2位の完全子会社となり、上場も廃止した。取得原価は6,677億円、ツルハの連結にはのれんが4,430億円立ち、20年かけて償却される。3社が掲げたシナジーは3年間で500億円で、商品関連のほか電力調達やスケールメリットに見込みを置く。ウエルシア単独では2023年2月期の最高益を超える計画を立てられず、まずは従前の経常利益率4%への回帰を目標としている。規模で先に立ったことと、稼ぐ力を取り戻すこととは別の課題として残っている。

いつ何が起きたか9件
当時の取締役11名

当時の取締役(2023年5月株主総会決議)

  • 柴﨑孝宗:執行役員
  • 岡田元也:取締役
  • 中井智子:取締役
  • 石塚邦雄:取締役
  • 永田正:取締役
  • 野沢勝則:取締役
  • 堀江重郎:取締役
  • 石坂典子:取締役
  • 池野隆光:会長
  • 松本忠久:社長
  • 中村壽一:副社長
考察:首位の座を譲るということ
考察

考察:首位の座を譲るということ

業界1位と2位が組んで規模を取った、という説明では、この統合の性格を捉えきれない。ウエルシアの側から見れば、これは自社が選んだ相手との合併ではなく、親会社イオンが議決権の過半を獲得する過程で組み立てられた再編であった。イオンは株式交換の直前にツルハホールディングス株を買い増して議決権保有割合を27.13%まで高め、株式交換で薄まる分を公開買付けで埋めて50.9%に到達させる段取りまで、あらかじめ契約に書き込んでいる。売上高で上回る会社が完全子会社となって上場も廃止したのは、その設計の帰結だと推察される。

もっとも、ウエルシアが受け身のまま組み込まれたと片づけるのも当たらない。経常利益は2期続けて減少し、最後の通期決算では不採算店舗の減損損失131億円を特別損失に計上した。単独で規模を追う構想は、その時点で現実味を失っている。新年度にまず掲げたのが統合効果ではなく従前の経常利益率4%への回帰であったことは、規模より先に立て直すべきものがあるという自認にほかならない。3年間で500億円というシナジーの見積りも、独占禁止法上のクリアランス前に置かれた数字である。規模を得ることと稼ぐ力を取り戻すことは別の問題で、その答えは統合そのものではなく、これから積む一店一店の商いに委ねられているのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

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図と表

ウエルシアHD:売上高と利益の推移

売上高(百万円)経常利益率(%)
ウエルシアHD:売上高と利益の推移
(百万円)売上高経常利益親会社株主に帰属する当期純利益備考
2019年2月期779,14831,50017,423
2020年2月期868,28040,34822,802
2021年2月期949,65245,80027,999
2022年2月期1,025,94747,59026,453
2023年2月期1,144,27852,14927,030経常利益はこの期が頂点。以後2期続けて減少した
2024年2月期1,217,33947,75626,4512024年2月28日に資本業務提携契約を締結
2025年2月期1,285,00540,83714,958減損損失13,127を特別損失に計上。上場企業としての最後の通期決算
出所:ウエルシアホールディングス 有価証券報告書 第11〜17期(連結損益計算書)
出所:ウエルシアホールディングス 有価証券報告書 第11〜17期(連結損益計算書)

ウエルシアHD:期末店舗数と従業員数の推移

連結従業員数(人)期末店舗数(店)
ウエルシアHD:期末店舗数と従業員数の推移
(人)連結従業員数期末店舗数備考
2019年2月期8,9361,878
2020年2月期9,8822,012
2021年2月期11,7082,217
2022年2月期13,2942,468
2023年2月期14,8652,763
2024年2月期15,2862,8252024年2月28日に資本業務提携契約を締結
2025年2月期16,6113,013出店78・閉店55のほか、子会社化等で165店が加わった
出所:ウエルシアホールディングス 有価証券報告書 第11〜17期(従業員の状況・経営成績等の状況)
出所:ウエルシアホールディングス 有価証券報告書 第11〜17期(従業員の状況・経営成績等の状況)

経営統合の条件

経営統合の条件
科目概要備考
資本業務提携契約の締結日2024年2月28日親会社イオン、ツルハホールディングスとの三者契約。同日に経営統合の協議を始めた
当初に設定した最終合意の期限2027年12月31日株式交換とイオンの株式追加取得について、遅くともこの日までに最終合意すると定めた
最終契約と株式交換契約の締結日2025年4月11日当初の期限より2年8か月早い。同日の取締役会で締結を決議した
統合の方式株式交換による完全子会社化ツルハホールディングスが株式交換完全親会社、ウエルシアが株式交換完全子会社となる
株式交換に係る割当比率ツルハホールディングス1:ウエルシア1.15株式分割の考慮前は0.23。ツルハは2025年9月1日に1株を5株へ分割した
交付された株式数237,308,868株ツルハホールディングスの普通株式。同社が保有する自己株式を一部充当した
公正取引委員会への届出2025年3月31日4月30日付で排除措置命令を行わない旨の通知を受領した
株式交換契約を承認した株主総会2025年5月27日ウエルシアの定時株主総会。ツルハホールディングスは前日の5月26日に承認した
最終売買日2025年11月26日東京証券取引所プライム市場
上場廃止日2025年11月27日株式交換の効力発生に先立って廃止された
株式交換の効力発生日2025年12月1日同日、ツルハホールディングスの完全子会社となった
イオンが目指した議決権割合50.9%株式交換だけで届かない場合に公開買付けを行うと契約に定めた。2026年1月に完了
取得企業を決定した根拠株式を対価とする全株式の取得取得した議決権比率は、企業結合直前の1.60%に98.40%を加えて100.00%となった
取得原価6,677億84百万円交付した株式の時価6,571億8百万円と、直前に保有していた株式の時価106億75百万円の合計
のれん4,430億66百万円今後の事業展開によって期待される超過収益力。20年間にわたる均等償却
受け入れた資産6,065億20百万円引き受けた負債は3,798億61百万円。取得関連費用はアドバイザリー費用等26億60百万円
出所:ウエルシアホールディングス 有価証券報告書 第16期(2024年2月期)【追加情報】・第17期(2025年2月期)【重要な後発事象】/ツルハホールディングス 有価証券報告書 第64期(2026年2月期)【企業結合等関係】
出所:ウエルシアホールディングス 有価証券報告書 第16期(2024年2月期)【追加情報】・第17期(2025年2月期)【重要な後発事象】/ツルハホールディングス 有価証券報告書 第64期(2026年2月期)【企業結合等関係】
当時の取締役11名

当時の取締役(2023年5月株主総会決議)

  • 柴﨑孝宗:執行役員
  • 岡田元也:取締役
  • 中井智子:取締役
  • 石塚邦雄:取締役
  • 永田正:取締役
  • 野沢勝則:取締役
  • 堀江重郎:取締役
  • 石坂典子:取締役
  • 池野隆光:会長
  • 松本忠久:社長
  • 中村壽一:副社長
参考文献

参考文献

参考
  • 公正取引委員会(2025年4月30日)「イオン株式会社及び株式会社ツルハホールディングスの経営統合に関する審査結果について」
  • ウエルシアホールディングス 有価証券報告書「第16期(2024年2月期)【追加情報】㈱ツルハホールディングス及びイオン㈱との資本業務提携契約の締結」
  • ウエルシアホールディングス 有価証券報告書「第17期(2025年2月期)【重要な後発事象】資本業務提携に係る最終契約書の締結・株式交換契約の締結」
  • ウエルシアホールディングス 決算説明会 質疑応答「2025年2月期 決算説明会 質疑応答」
  • ツルハホールディングス 有価証券報告書「第64期(2026年2月期)【企業結合等関係】ウエルシアホールディングス株式会社との経営統合」

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