ツルハホールディングス イオンの子会社化 同業との統合と引き換えに受け入れた、親会社の傘下への移行

更新:

時期 2024年2月
当時の社長 鶴羽順
論点 業界再編と支配権の帰属
何をなぜ決めたか
概要

2024年2月28日、ツルハホールディングスはイオン、ウエルシアホールディングスと資本業務提携契約を締結し、経営統合の協議を始めた。ウエルシアHDを株式交換で完全子会社として取り込む一方、みずからはイオンの持分法適用関連会社を経て連結子会社になるという、二つの方向の資本移動を一つの契約に収めた取引である。

2025年4月11日に最終契約と株式交換契約を締結し、同年12月1日に株式交換が効力を生じ、2026年1月14日にイオンの議決権割合は50.3%となった。1995年1月のジャスコ(現イオン)との業務・資本提携から30年を経て、提携関係は親子関係に変わった。

背景

1929年に旭川で創業したツルハは、2000年代以降、地域チェーンを傘下に収める連邦型のM&Aで店舗網を拡大し、2019年5月期の直営2,082店から2024年5月期には2,653店、連結売上高1兆274億円に達していた。ドラッグストアは出店余地が細り、業種を越えた食品小売との競合と調剤への傾斜で、規模と機能の両方が問われるようになっていた。

株主構成も動いていた。イオンは1995年の提携以来13%前後の筆頭株主にとどまっていたが、2023年5月8日時点でオアシス・マネジメントが12.84%を保有し、拮抗する二大株主が並ぶ状態が生まれていた。

内容

資本提携は三段構えで設計された。①イオンがツルハHD株を追加取得して持分法適用関連会社とする、②ツルハHDを親会社、ウエルシアHDを完全子会社とする株式交換で経営統合する、③その完了後にイオンが議決権割合を過半数以上51%未満の範囲まで引き上げて連結子会社とする。②③の最終合意の期限は2027年12月31日と置かれた。

実際には期限より2年8か月早い2025年4月11日に最終契約が締結された。株式交換比率はツルハHD1に対しウエルシアHD1.15、交付株式は237,308,868株、のれんは443,066百万円。イオンは1株2,900円の公開買付けで40,727,772株を取得した。

含意

統合を経た2026年2月期の連結売上高は1兆4,505億85百万円、営業利益630億37百万円、グループ店舗数は直営5,676店となった。ウエルシアHDの業績が通年で乗っていれば売上高は1兆円あまり上積みされる計算で、2025年2月時点の単純合算では2兆3,124億円、国内5,659店の規模になる。

その対価として渡したのは支配権である。イオンは非業務執行取締役1名の指名権を持ち、役員選任議案を除く会社提案には賛成し、他の株主の提案には反対の議決権を行使することが最終契約に書き込まれた。掲げた目標は統合3年後のシナジー500億円と、2032年2月期の売上高3兆円である。

いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
筆者の見解

30年の伏線と、統合の行方

この取引の特徴は、ツルハが統合の主体でありながら、同時にイオンの子会社になった点にある。ウエルシアHDを株式交換で取り込んで店舗網を5,676店へ倍増させる一方、みずからは議決権の50.3%をイオンに委ねた。規模の頂点と支配権の移転とが、同じ契約の表と裏で起きている。1995年に地方チェーンとして全国資本と結んだ提携が、30年をかけて業界再編の中核へと膨らみ、創業家の名を残したまま統治の主導権はイオンへ移った。三段構えの資本提携に置かれた2027年12月31日という期限が2年8か月も繰り上がったことは、当事者のいずれもが時間を惜しんだことを示しているようにみえる。

もっとも、統合が数字のうえで完了したことと、二つの組織が一つに機能することは別である。仕入れや物流、プライベートブランド、調剤という重なりの多い事業をどう統合し、掲げた3年後500億円のシナジーを実際に引き出せるかは、本稿の時点でなお進行中の課題である。443,066百万円というのれんは20年にわたって毎期の利益を削り、その負担に見合う統合効果が出なければ、規模だけが残ることになる。地方の薬局から始まった連邦型の集合体が、イオンという巨大な傘の下で一体の経営へ踏み込めるかどうかに、この選択の成否はかかっている。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
資本業務提携と経営統合の条件

資本業務提携と経営統合の条件

科目 概要 備考
資本業務提携契約の締結日 2024年2月28日 同日の取締役会で、イオン・ウエルシアHDとの経営統合の協議開始を決議した
業務提携の範囲 店舗開発・仕入・物流など9分野 調剤併設化、PBの共同開発、決済・ポイント、DX・EC、フード&ドラッグ、人材交流
資本提携の枠組み イオンが議決権の過半数以上51%未満まで取得 最終合意の期限は2027年12月31日。ウエルシアHDはツルハHDの完全子会社となる
最終契約の締結日 2025年4月11日 株式交換契約も同日に締結。当初に置いた期限より2年8か月早い最終合意
その他の関係会社への異動 2025年5月14日 イオンが野村證券から3,530,000株を追加取得し、議決権保有割合は27.13%に
ウエルシアHDとの統合の方式 株式交換による完全子会社化 ツルハHDが株式交換完全親会社。結合後企業の名称は変更していない
株式交換比率 ツルハHD1:ウエルシアHD1.15 交付した株式数は237,308,868株。うち自己株式31,609,718株を充当した
株式交換の効力発生日 2025年12月1日 ウエルシアHDは2025年11月27日に上場廃止。最終売買日は11月26日
ウエルシアHDの取得原価 667,784百万円 交付株式の時価657,108百万円と、結合直前に保有していた株式の時価10,675百万円
のれん 443,066百万円 20年間の均等償却。当期の償却費は5,538百万円、取得関連費用は2,660百万円
通期換算した影響額 売上高1,010,394百万円 期首に完了と仮定した概算額。経常利益は14,798百万円。監査証明は受けていない
イオンの公開買付期間 2025年12月3日〜2026年1月6日 20営業日。株式交換だけで議決権50.9%に届かない場合の担保として定めた
公開買付価格 普通株式1株につき2,900円 2025年9月1日に1株を5株とする株式分割を行ったあとの価格
買付けを行った株券等の数 40,727,772株 公開買付けは2026年1月6日に成立。決済の開始日は2026年1月14日
親会社の異動日 2026年1月14日 議決権比率は株式交換前27.1%、交換で14.3%、買付けで9.0%を加え50.3%
イオンとの合意事項 非業務執行取締役1名の指名権 役員選任議案を除く会社提案には賛成し、他の株主の提案には反対の議決権を行使

出所:ツルハホールディングス 有価証券報告書 第62期(2024年5月期)【追加情報】・第63期(2025年2月期)【重要な後発事象】・第64期(2026年2月期)【企業結合等関係】、イオン 有価証券報告書 第101期(2026年2月期)【企業結合等関係】

売上高とグループ店舗数の推移

ツルハホールディングス:売上高とグループ店舗数の推移

(百万円) 売上高グループ店舗数 備考
2019年5月期 782,4472,082
2020年5月期 841,0362,150
2021年5月期 919,3032,420 ドラッグイレブンなど207店舗が子会社化等でグループに加わった
2022年5月期 915,7002,522
2023年5月期 970,0792,589
2024年5月期 1,027,4622,653 2024年2月28日に資本業務提携契約を締結。連結売上高が1兆円を超えた
2025年2月期 845,6032,658 決算期変更にともなう9.5か月決算。前期までの12か月と並べられない
2026年2月期 1,450,5855,676 12月1日にウエルシアHDを連結。統合で2,991店が加わった
売上高とグループ店舗数
売上高(百万円)グループ店舗数(直営店)(店)

出所:ツルハホールディングス 有価証券報告書 第57〜64期(連結損益計算書・経営成績等の状況)

イオンの持株比率の推移

ツルハホールディングス:イオンの持株比率の推移

(%) イオンの所有株式数の割合 備考
2019年5月期 13.06
2020年5月期 13.05
2021年5月期 13.01
2022年5月期 13
2023年5月期 13.59
2024年5月期 19.89 所有株式数は9,675千株。オアシスは12.84%の大量保有報告書を出していた
2025年2月期 19.88
2026年2月期 50.33 228,632千株。議決権割合は50.3%で、2026年1月14日に親会社となった
イオンの持株比率
イオンの所有株式数の割合(%)

出所:ツルハホールディングス 有価証券報告書 第57〜64期【大株主の状況】

同じ問いに直面した会社

同じ問いに直面した会社

上場廃止2025年豊田自動織機グループ主導で進めた上場からの退出上場子会社の非公開化と資本関係の再設計
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2008年富士電機水環境事業を日本碍子の同事業と合併させ、連結子会社から持分法適用会社へ切り替えた選択水環境事業の体制
参考文献
出典・参考
  • 証券アナリストジャーナル 36(8)(1998年8月)
  • ツルハホールディングス 有価証券報告書「第62期(2024年5月期)【経営上の重要な契約等】【追加情報】」
  • ツルハホールディングス 有価証券報告書「第63期(2025年2月期)【重要な後発事象】」
  • ツルハホールディングス 有価証券報告書「第64期(2026年2月期)【企業結合等関係】【関係会社の状況】【大株主の状況】」
  • イオン 有価証券報告書「第101期(2026年2月期)【企業結合等関係】」
  • ツルハホールディングス 統合報告書「統合報告書2025」
  • ツルハホールディングス 決算説明会質疑応答「2024年5月期 決算説明会 質疑応答」

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