2008年9月1日、ウエルシア関東と高田薬局は共同株式移転によりグローウェルホールディングスを設立し、株式を東京証券取引所市場第二部に上場した。両社が資本ごと一つの親会社の下に入ったのは、業界の条件が単独での存続を許さなくなっていたからである。統合の9か月後にあたる2009年6月には改正薬事法が施行され、異業種の参入と業務・資本提携やM&Aによる業界再編が加速した。グローウェルホールディングスは設立初年度の事業環境を、消費の低迷と出店競争・価格競争のなかでさらなる独自性と差別化が問われる状況と見ていた。ウエルシア関東の本店は埼玉県さいたま市に、高田薬局の本店は静岡県静岡市にあり、商圏は重なっていなかった。仕入や販促を持ち寄る緩やかな連合にとどまらず、資本を一つにまとめる方式を選んだ。
設立から2か月後の2008年11月、ウエルシア関東は公開買付けにより寺島薬局を傘下に収めた。持株会社は統合の完成形ではなく、買収の起点として作られていた。第1期の連結キャッシュ・フローでは、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が76億58百万円、長期借入れによる収入が146億26百万円に達している。期首412店で始まったグループは、寺島薬局の102店と新規出店66店を加え、閉店14店を差し引いて期末には566店となった。第1期の売上高は1,989億28百万円、経常利益は59億4百万円であった。上場した株式と借入枠が、そのまま次の買収の原資になった。
グローウェルホールディングスは第1期の課題を、「ドラッグ&調剤」「化粧品販売の強化」「深夜営業の強化」という三つの言葉で示した。品揃えや価格ではなく、店の機能で競争するという方針である。調剤を併設すれば処方箋が客を呼び、カウンセリングを伴う化粧品販売は価格の比較から離れた売り場を作り、深夜営業は商圏の時間を延ばす。介護専業企業と連携して調剤に介護を加えた専門性を高める方針も、このとき併記されている。ただし三つの型は、集まった会社に均等には備わっていなかった。ウエルシア関東が350店のうち調剤取扱店282店・深夜営業店247店を持つ一方、高田薬局は104店のうち調剤取扱店43店・深夜営業店20店にとどまった。
2010年3月、グローウェルホールディングスは株式交換により株式会社イレブンを子会社化した。関東と静岡に偏っていた店舗網に、関西の足場が加わった。ただしイレブンの店は、買い手が掲げる型から最も遠かった。子会社化の翌期末で64店のうち調剤取扱店は19店、深夜営業店は40店にすぎない。2010年8月期の決算説明会は、グループ全体の調剤併設が前期比2%の進捗にとどまった理由を、イレブンの併設の低さに求めている。イレブンの23時までの店舗を数に加えれば、深夜営業率は12ポイント上がる水準にあった。規模を取るほど平均が薄まる関係が、この時点で表れていた。
2010年8月期末のグループは660店を数え、うち調剤併設店は425店、深夜営業店は455店となった。調剤併設率は前期末の62.2%から64.4%へ、深夜営業率は58.7%から68.9%へ動いている。この二つの比率は、地盤も規模も違う4社を同じ物差しに載せる道具だった。会社別に見れば落差は大きい。寺島薬局の調剤併設率が24.1%から48.3%へ倍増した一方、高田薬局は41.3%から40.9%へほとんど動かなかった。売上高は2,387億52百万円で計画比100.3%、販売費及び一般管理費の削減が効いて経常利益は計画比111.6%を達成した。どの会社のどの店が型に達していないかが、毎期比率の形で示された。
2011年8月期の重点項目として、グローウェルホールディングスは調剤売上構成比10%を掲げた。内訳は調剤併設500店・併設率70%への引き上げと、連携する介護施設を2010年8月末の99施設から2011年に140施設へ増やす計画である。並行して本社の機能を厚くした。事業会社の間接部門を軽くして販売管理費を削減し、店舗運営を定型化し、店舗開発力とガバナンス体制、財務経理機能を持株会社の側へ集める。M&Aや新規事業を具現化するための戦略立案機能の強化も、同じ重点項目に並んでいる。4社が別々に抱えていた本部を一つに寄せることが、店の型を揃える前提だった。
2011年3月11日の東日本大震災で、福島県と茨城県を中心に100店舗以上が営業できない状態に陥った。被害が最も重かったのは寺島薬局で、75店が営業不能となり、うち26店は連絡も取れず安否確認もできなかった。それでも震災2日目には11店を残し、通常営業か店頭販売に戻っている。復旧を支えたのは、生活インフラとしてドラッグ店舗の営業が必要だという従業員の使命感だった。グループは日本赤十字社を通じて総額1億円の義援金を寄附した。深夜営業を掲げて商圏の時間を延ばしてきた店が、災害時にも開いている店として現れた。
2012年4月、株式は東京証券取引所市場第一部へ移った。同年5月15日、取締役会は商号変更を決議し、7月下旬に開く臨時株主総会へ定款一部変更を諮ることを決めている。9月1日、グローウェルホールディングスはウエルシアホールディングスへ商号を改め、同じ日に株式会社イレブンはウエルシア関西株式会社となった。ウエルシアホールディングスは2013年8月期の課題に、店舗名を「ウエルシア」へ統一して認知度を高め、ブランディングを強化することを挙げた。屋号の異なる4社を集めて始まったグループが、持株会社から店頭の看板までひとつの名前に揃えられた。
2012年9月、株式会社ドラッグフジイを株式交換で完全子会社化し、同じ日にウエルシア関東が同社を吸収合併して北陸に店舗網を広げた。2013年3月には寺島薬局のドラッグストア事業を会社分割でウエルシア関東へ移し、寺島薬局は介護に特化した。事業会社の数を減らし、店をウエルシア関東へ寄せる作業である。2013年8月期末の店舗数は874店、うち調剤取扱店559店、深夜営業店677店に達した。売上高は3,343億93百万円、経常利益は138億11百万円。調剤売上の構成比は2013年8月期第1四半期で10.7%となり、2年前に置いた目標を達成している。
2014年9月、ウエルシア関東は高田薬局、ウエルシア関西、ウエルシア京都の3社を吸収合併し、ウエルシア薬局へ商号を改めた。持株会社の下に複数の事業会社が並ぶ体制は、6年で終わった。合併の直前にウエルシア薬局が抱えていた店舗は711店だったが、統合により240店が移り、2015年2月末には987店となっている。消えた高田薬局の146店とウエルシア関西の94店は、そのまま1社の店舗網へ繰り入れられた。本部組織も同時に一つへ寄せたため、この期は人件費が一時的に増え、店舗改装の費用と重なって営業利益は前年同期比82.9%へ低下した。型を揃える作業の費用が、損益の側に現れた期である。
2014年11月、イオンによる公開買付けが成立し、ウエルシアホールディングスはイオンの子会社となった。設立初年度のイオンは議決権の29.6%を持つその他の関係会社にすぎず、統合を見守る出資者の位置にあった。親会社が定まることは、買収を重ねる側にとって資金と信用の裏づけになる。公開買付けと並行した2014年10月22日の取締役会では、タキヤとシミズ薬品を完全子会社とする株式交換契約が決議され、翌2015年4月21日にはCFSコーポレーションとの株式交換契約が続いた。傘下に入ることと買い続けることは、同じ半年のうちに決まっている。
2015年2月期は、決算日を8月31日から2月末日へ変更したことに伴い、2014年9月1日から2015年2月28日までの6か月の変則決算となった。この半年の売上高は1,919億91百万円、経常利益は66億11百万円である。親会社となったイオンの事業年度へ暦を合わせる操作であり、以後の業績は2月期で読むことになる。店舗数は2015年2月末で992店、うち調剤取扱店687店、深夜営業店804店を数えた。合併前の2014年8月末が951店・調剤取扱店663店・深夜営業店763店だったから、半年で調剤が24店、深夜が41店増えた計算になる。4社を1社へ集約したことで、型の達成度は会社別の内訳ではなく一本の数字で読めるようになった。
2015年3月1日、関西を地盤とするタキヤとシミズ薬品を株式交換により完全子会社化し、同年9月1日にはCFSコーポレーションを同じ方法で傘下に収めた。CFSは310店を持ち、1度の株式交換で加わった数としては最も大きい。この年度の自前の出店は74店、閉店は40店にとどまる一方、子会社化による店舗の増加は446店に達した。期末店舗数は1,472店、売上高は5,284億2百万円で前年同期間比138.9%の増収となった。店を建てるより会社を買収するほうが速いという関係が、数字の上に表れている。
買収した会社には、同じ順序で同じ仕組みが移された。タキヤとシミズ薬品については2015年6月から基幹システム、物流拠点、POSシステム及び販促施策の統合を行い、CFSについては「日本一のドラッグストアチェーンの構築」に向けて2016年3月からの統合準備を進めた。2015年12月1日にはウエルシア薬局がタキヤを吸収合併し、関西での事業拡大を早めている。有価証券報告書はこの期の課題の筆頭に、M&Aによる経営統合効果を発揮すべくビジネスモデルの統一へスピード感をもって取り組むと置いた。買うことと揃えることが、一続きの作業として設計されていた。
その後も買収は途切れなかった。2017年9月に丸大サクラヰ薬局、2018年3月に一本堂、同年12月にMASAYA、2019年6月に金光薬品、2020年3月によどや、同年6月にクスリのマルエ、7月にネオファルマーとサミット、2021年12月にププレひまわり、2022年6月にコクミンとフレンチ、同年12月にふく薬品を、いずれも株式取得により傘下へ入れた。青森、岡山、高知、群馬、広島、大阪、沖縄と、買う相手は地域の有力チェーンである。買収先の多くは数年のうちにウエルシア薬局へ吸収合併された。ウエルシアホールディングスは2020年2月期の課題の第一に、重要戦略であるM&Aを積極的に推進して規模拡大のシナジー効果を追求することと、グループ各社でウエルシアモデルを推進することを置いた。
2020年2月期の有価証券報告書で、ウエルシアホールディングスは2023年2月期を最終年度とする中期計画を示した。売上高1兆800億円、経常利益540億円、経常利益率5.0%、店舗数2,308店という数字である。当期の売上高は8,683億円だったから、3年で2,000億円あまりを積み増す計算になる。同じ有価証券報告書は、生活のプラットフォームとなるために専門総合店舗の実現に努めるとビジョンを掲げ、地域社会に貢献する「かかりつけ薬局」の実現を基本方針に置いた。規模と利益率を同時に取ることが、計画の前提だった。
2023年2月期の売上高は1兆1,442億円となり、計画の1兆800億円を6.0%上回った。一方で経常利益率は4.6%にとどまり、計画の5.0%に0.4ポイント届かなかった。決算説明会は前中期経営計画の総括として、国内ドラッグストア初の売上高1兆円を達成したことと、規模の成長に対し収益性の改善が未達に終わったことの二つを並べている。買収で積み上げた売上は計画を超え、買収に伴う費用と統合の手間は利益率を押し下げた。規模で解ける問題と規模では解けない問題が、この3年で分かれた。
2023年3月28日、ウエルシアグループは全国約2,500店の店舗でWAON POINTサービスの取り扱いを始めた。イオンの子会社となって9年目に、客を数える仕組みが親会社の側へ揃えられたことになる。同じ時期に示された2024年2月期から2026年2月期の中期経営計画は、2026年2月期の売上高1兆5,000億円、経常利益率5.0%、ROE15.0%以上を目標に置いた。前の計画で届かなかった利益率が、そのまま次の計画へ持ち越されている。調剤併設、カウンセリング営業、深夜営業、介護の4大方針を軸としたウエルシアモデルを推進し、2030年にありたい姿を「地域No.1の健康ステーション」と定めた。
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|---|---|---|---|---|
| 2008〜2013年経営統合と業態の標準化 | 髙田隆右 | ウエルシア関東と高田薬局の共同株式移転による持株会社の発足と東証二部上場 2008年3月14日、埼玉を地盤とするウエルシア関東と静岡の高田薬局が、株式移転によって共同持株会社を設立し経営統合すると発表した。同年9月1日にグローウェルホールディングスが発足し、両社は完全子会社となって、持株会社が東京証券取引所市場第二部へ新規上場した。現在のウエルシアホールディングスは、この日に上場企業としての歩みを始めた。 詳細を読む | ★★★ | |
| 髙田隆右 | 東京証券取引所市場第二部に上場 | ★ | ||
| 髙田隆右 | イレブンを株式交換により子会社化 | ★ | ||
| 髙田隆右 | ウエルシアHDに商号変更 | ★ | ||
| 2014〜2023年資本再編を伴う連続買収 | 水野秀晴 | ウエルシア関東を株式交換により完全子会社化 | ★★ | |
| 水野秀晴 | ウエルシア関東が高田薬局・ウエルシア関西・ウエルシア京都を吸収合併 | ★ | ||
| 水野秀晴 | ウエルシア関東がウエルシア薬局に商号変更 | ★ | ||
| 水野秀晴 | 公開買付けへの賛同と傘下入り、M&Aによる規模拡大の加速 2014年10月22日、イオンがウエルシアホールディングス株式への公開買付けを決め、ウエルシア側は同日の取締役会で賛同を決議した。買付価格は1株4,000円、上限は5,606,000株。成立によりイオンの保有割合は37.37%から50.10%へ上がり、ウエルシアはイオンの連結子会社となった。上場は維持され、以後はM&Aによる規模拡大が加速した。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 水野秀晴 | タキヤとシミズ薬品を株式交換により完全子会社化 | ★ | ||
| 水野秀晴 | CFSコーポレーションを株式交換により完全子会社化 | ★★ | ||
| 水野秀晴 | 丸大サクラヰ薬局を株式取得により完全子会社化 | ★ | ||
| 松本忠久 | 金光薬品を株式取得により子会社化 | ★ | ||
| 松本忠久 | ププレひまわりを株式取得により子会社化 | ★ | ||
| 松本忠久 | コクミンとフレンチを完全子会社化 | ★ | ||
| 2024〜2025年ツルハHDとの経営統合による上場廃止 | 松本忠久 | 統合に伴う傘下入りと、独立した上場企業としての幕引き 2024年2月28日、ウエルシアホールディングスは親会社のイオン、業界2位のツルハホールディングスと資本業務提携契約を締結し、経営統合の協議に入った。最終合意の期限は2027年12月31日と置かれていたが、2025年4月11日に最終契約と株式交換契約を締結して2年8か月早め、同年12月1日にツルハホールディングスの完全子会社となった。東京証券取引所プライム市場の上場は前日までに廃止され、最終売買日は11月26日であった。 詳細を読む | ★★★ | |
| 桐澤英明 | ウェルパークを株式取得により完全子会社化 | ★ | ||
| 桐澤英明 | 東京証券取引所プライム市場を上場廃止 | ★ | ||
| 桐澤英明 | 株式交換によりツルハHDの完全子会社となり経営統合 | ★★ |
免責事項およびポリシー
事実根拠:出所(ウエルシアホールディングス)