KKRによる非公開化と成膜事業分割(2017年・KOKUSAIエレクトリックの決断)

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論点二事業を分割して非公開化に応じるか
KOKUSAIエレクトリック:業績の推移
売上高(億円)親会社株主に帰属する当期純利益率(%)
日立国際電気の上場廃止と、成膜プロセスソリューション事業の吸収分割による承継

何をなぜ決めたか:日立国際電気の上場廃止と、成膜プロセスソリューション事業の吸収分割による承継

概要

2017年4月26日、日立製作所・HKEホールディングス合同会社・HVJホールディングス株式会社の3者が基本契約書を締結した。同日、日立国際電気の取締役会は、KKRグループの特別目的会社であるHKEホールディングスによる公開買付けに賛同の意見を表明し、応募するか否かは株主の判断に委ねる旨を決議している。

公開買付けは2017年12月8日に成立。株式併合と日立製作所保有株の自己株式取得を経て、2018年3月9日に東京証券取引所市場第一部の上場を廃止した。2018年6月1日、成膜プロセスソリューション事業が無対価の吸収分割でHKEホールディングスへ承継され、商号は株式会社KOKUSAI ELECTRICへ改まった。

背景

2014年から2016年にかけて斟酌されたのは、特性の異なる映像・通信ソリューション事業と成膜プロセスソリューション事業を分離し、それぞれ個別に売却する選択肢であった。しかし、税務上の影響や事業の連続性、さらに上場会社として企業価値を最大にする観点から見て、両事業を個別に売却するのは難しい点が多いと判断するに至った。

選ばれたのは、株式を非公開化したうえで両事業の資本関係と運営体制を再編する方式である。日立製作所の所有分を含む全株式の取得を入札の必要条件とし、一方の事業だけに関心を示す買手候補による共同入札も許容した。複数の買手候補先への打診は2016年9月下旬に始まっている。

内容

公開買付価格は2017年4月26日の合意時点で1株2,503円、日立製作所が保有する株式の自己株式取得価格は株式併合前1株当たり1,710円であった。5月16日以降の株価が一貫して2,503円を超える価格帯で推移したため価格は二度動き、2017年10月11日に2,900円、11月24日に3,132円となる。

買付予定数の下限は、発行済株式総数105,221,259株から自己株式と日立製作所売却予定株式を控除した49,633,263株の過半数にあたる24,816,632株。支配株主である日立製作所を除く少数株主の過半数が応募しなければ成立しない設計で、応募は26,242,364株に達した。

含意

日立製作所の所有持分は51.7%から20.0%となり、日立国際電気は連結子会社から持分法適用会社へ移った。支配の喪失に伴って認識した利益は32,049百万円。同時に日立製作所はHKEホールディングスへ10,000百万円を出資し、A種優先株式150,000,000株を引き受けている。

KOKUSAI ELECTRICの連結財政状態計算書にあるのれん59,065百万円、顧客関係資産および技術関連資産は、この企業結合により日立国際電気を支配下に収めたときに認識したものである。会社は2023年10月に東京証券取引所プライム市場へ新規上場した。

いつ何が起きたか10件
考察:全株を売却しなかった売り手と、後から決まった値段
考察

考察:全株を売却しなかった売り手と、後から決まった値段

日立製作所は51.7%を売却しながら、映像・通信ソリューション事業には20.0%で残り、装置側を担うHKEホールディングスにはA種優先株式で10,000百万円を再出資した。支配の喪失によって32,049百万円の利益を認識しつつ、二つの事業のどちらとも資本の糸は切っていない。これは事業の売却というより、連結の外へ出したうえで資本の持ち方を組み替える取引だったと思われる。全株式の取得を入札の必要条件としながら、吸収分割後の映像・通信側への再出資を第一次入札の前提条件に据えた設計が、その意図を示している。

もっとも、値段のほうは売り手の描いた線どおりには運ばなかった。2,503円で合意した公開買付価格は、5月以降の株価が一貫してそれを超えて推移したことで二度引き上げられ、最終的に3,132円で決着している。一方の価格を上げれば他方が下がる利益相反が少数株主と日立製作所のあいだに生じることは当初から認識されており、独立社外取締役を含む第三者委員会の設置はその調整装置であった。非公開化の価格は合意の時点ではなく、市場と交渉が動かした結果として確定したのだといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

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図と表

KOKUSAIエレクトリック:分割後の売上収益と当期利益

売上収益(百万円)親会社の所有者に帰属する当期利益率(%)
KOKUSAIエレクトリック:分割後の売上収益と当期利益
(百万円)売上収益親会社の所有者に帰属する当期利益備考
2019年9月期125,783△2,410
2020年3月期67,6207,870決算期変更に伴い2019年10月1日から2020年3月31日までの6か月間
2021年3月期178,02333,043
2022年3月期245,42551,339
2023年3月期245,72140,305
2024年3月期180,83822,374
2025年3月期238,93336,004
2026年3月期235,07930,099
出所:株式会社KOKUSAI ELECTRIC 有価証券届出書(新規公開時)【主要な経営指標等の推移】 / 株式会社KOKUSAI ELECTRIC 有価証券報告書 第9〜11期(連結損益計算書)
出所:株式会社KOKUSAI ELECTRIC 有価証券届出書(新規公開時)【主要な経営指標等の推移】 / 株式会社KOKUSAI ELECTRIC 有価証券報告書 第9〜11期(連結損益計算書)

KOKUSAIエレクトリック:企業結合で認識したのれんと無形資産

顧客関係資産(百万円)技術関連資産(百万円)
KOKUSAIエレクトリック:企業結合で認識したのれんと無形資産
(百万円)のれん顧客関係資産技術関連資産備考
2021年3月期59,06554,88219,7712021年4月1日現在の帳簿価額
2022年3月期59,06551,65416,946
2023年3月期59,06548,42514,122
2024年3月期59,06545,19711,297
2025年3月期59,06542,0708,372
2026年3月期59,06538,7405,649顧客関係資産の残存償却期間は12年、技術関連資産は2年
出所:株式会社KOKUSAI ELECTRIC 有価証券届出書(新規公開時)連結財務諸表注記「11.のれん及び無形資産」 / 株式会社KOKUSAI ELECTRIC 有価証券報告書 第9〜11期 連結財務諸表注記「のれん及び無形資産」
出所:株式会社KOKUSAI ELECTRIC 有価証券届出書(新規公開時)連結財務諸表注記「11.のれん及び無形資産」 / 株式会社KOKUSAI ELECTRIC 有価証券報告書 第9〜11期 連結財務諸表注記「のれん及び無形資産」

非公開化と事業分割の条件

非公開化と事業分割の条件
科目概要備考
基本契約の締結2017年4月26日日立製作所・HKE・HVJの3者間。変更覚書を2017年10月11日、11月24日、2018年3月30日に締結
公開買付者HKEホールディングス合同会社KKRの関連投資ファンドが持分の全てを所有する特別目的会社。2017年12月に株式会社へ組織変更
株式価値評価額2,150億円2017年4月上旬にKKRとJIPが修正共同提案で提示し、最終買付候補者の選定に至った額
公開買付価格3,132円当初合意は2,503円。2017年10月11日に2,900円、11月24日に3,132円へ引き上げ
自己株式取得価格1,870円株式併合前1株当たり。日立製作所保有株の取得価格で、当初合意は1,710円
買付予定数の下限24,816,632株日立製作所を除く少数株主49,633,263株の過半数。マジョリティ・オブ・マイノリティ
公開買付期間2017年10月12日〜12月8日2017年11月24日に12月8日まで延長し、公開買付期間は合計40営業日となった
応募株数26,242,364株少数株主からの応募。下限24,815,889株以上であることが2017年12月9日に判明した
株式併合17,690,043株につき1株2018年2月15日の臨時株主総会で決議。発行済株式総数は5株となった
日立製作所が売却した株式53,070,129株株式併合の効力発生後に日立国際電気が自己株式として取得し、消却した
上場廃止2018年3月9日東京証券取引所市場第一部。2000年10月の発足から17年5か月での退出
成膜事業の吸収分割2018年6月1日無対価。HKEホールディングスが承継し、商号を株式会社KOKUSAI ELECTRICへ変更
日立国際電気株式の譲渡日立製作所・HVJへ各20%2018年6月4日。この譲渡をもって一連の取引が全て完了した
日立製作所の所有持分51.7%→20.0%日立国際電気は連結子会社から持分法適用会社となった
支配の喪失に伴う利益32,049百万円日立製作所の連結損益計算書のその他の収益に計上された
日立製作所のHKEへの出資10,000百万円A種優先株式150,000,000株。第6期(2021年3月期)の発行済株式総数からは消えている
認識したのれん59,065百万円日立国際電気の支配獲得により認識。償却せず毎期減損テストを実施する
顧客関係資産の償却期間20年技術関連資産は10年。いずれも企業結合において取得した無形資産
KKRとのMonitoring Agreement2018年6月1日〜2022年3月31日経営全般のコンサルティング等。両当事者の合意により解除し、約10億円を支払った
三井住友銀行等との借入タームローンA 30,000百万円・B 95,000百万円2021年3月24日付。コミットメントライン10,000百万円、最終返済日2026年3月29日
日立国際電気との資本関係の解消2020年2月19日2019年7月4日にHVJへプットオプションを行使し、保有株式の売却が完了した
出所:株式会社KOKUSAI ELECTRIC 有価証券届出書(新規公開時)(はじめに)【経営上の重要な契約等】連結財務諸表注記/株式会社日立製作所 有価証券報告書 第150期(2019年3月期)「主な事業再編等」
出所:株式会社KOKUSAI ELECTRIC 有価証券届出書(新規公開時)(はじめに)【経営上の重要な契約等】連結財務諸表注記/株式会社日立製作所 有価証券報告書 第150期(2019年3月期)「主な事業再編等」
参考文献

参考文献

参考
  • 株式会社KOKUSAI ELECTRIC 会社沿革(公式コーポレートサイト)
  • 日立国際電気 適時開示「HKEホールディングス合同会社による当社株券に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ」
  • KKR・日本産業パートナーズ 共同プレスリリース「KKR、日立国際電気株式の取得を目的とした公開買付けを発表、日立国際の事業分割後JIPと日立製作所はそれぞれ映像・通信事業の20%を保有」
  • 日立国際電気 有価証券報告書「第93期(2017年3月期)【重要な後発事象】」
  • 日立製作所 有価証券報告書「第150期(2019年3月期)「主な事業再編等」」
  • Applied Materials プレスリリース「Applied Materials Announces Termination of Kokusai Electric Acquisition」
  • KOKUSAI ELECTRIC 有価証券届出書(新規公開時)「(はじめに)【経営上の重要な契約等】連結財務諸表注記「11.のれん及び無形資産」」

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