三菱電機モビリティ株式50%の鴻海への譲渡(2024年・三菱電機の決断)

更新:
三菱電機:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
自動車機器事業を会社分割で切り出した三菱電機モビリティの設立と、外部資本への開放2023年4月、三菱電機は自動車機器事業の構造改革を決議し、1年以内の分社化を表明した。2024年4月1日に会社分割で三菱電機モビリティを設立し、カーマルチメディアなど課題事業の終息と、電動化・ADASでの社外パートナーとの協業を進める経営判断。2026年4月に鴻海精密工業と共同運営の検討で覚書を締結し、同年10月には三菱電機モビリティの発行済株式の50%を鴻海精密工業の投資管理会社へ譲渡する契約を締結した。

何をなぜ決めたか:自動車機器事業を会社分割で切り出した三菱電機モビリティの設立と、外部資本への開放

概要

2023年4月、三菱電機は自動車機器事業の構造改革を決議し、1年以内の分社化を表明した。2024年4月1日に会社分割で三菱電機モビリティを設立し、カーマルチメディアなど課題事業の終息と、電動化・ADASでの社外パートナーとの協業を進める経営判断。2026年4月に鴻海精密工業と共同運営の検討で覚書を締結し、同年10月には三菱電機モビリティの発行済株式の50%を鴻海精密工業の投資管理会社へ譲渡する契約を締結した。

背景

1989年6月に事業本部として発足した自動車機器事業は、2023年3月期に三菱電機単独売上高の22.9%を占めるまで育っていたが、収益改善が課題で赤字が続いた。CASEによる産業構造の転換が進むなか、九つの事業本部が並ぶ総合電機の手続きのままでは、電動化とADASの投資判断が間に合わなくなっていた。

内容

2023年4月24日の執行役会議で構造改革を決議。CASE関連は選択と集中のうえでパートナーとの協業、電動パワーステアリングなど強みの事業はコスト削減と価格転嫁、カーマルチメディアなど課題事業は早期終息と、三つに仕分けた。2023年10月に吸収分割を決定し、2024年4月1日に三菱電機モビリティが事業活動を開始した。

含意

2024年5月に基本合意したアイシンとの共同出資会社は同年10月に業務提携へ後退したが、社外へ開く方針は保たれた。収益改善と並行して事業ポートフォリオ上の位置付けの見極めを進めるとし、2026年4月には鴻海精密工業と共同運営を検討する覚書を締結し、同年10月16日に三菱電機モビリティの発行済株式の50%をLin Yin International Investmentへ譲渡する株式譲渡契約を締結した。100%子会社として保つ選択肢は、ここでなくなった。

いつ何が起きたか11件
筆者考察
考察

考察:切り出した先を、どこまで売却するか

分社化の理由として三菱電機が先に挙げたのは、赤字ではなく意思決定の遅さであった。2023年3月期の自動車機器事業は単独売上高の22.9%を占めたが、九つの事業本部が並ぶ総合電機の内側では、電動化とADASに要る巨額投資の順番を待つ一事業にすぎない。漆間啓社長が別法人へ切り出したのは、赤字事業を体よく外へ出すためというより、資本を受け入れる相手と向き合える単位を先に作るためだったとみられる。

アイシンとの共同出資会社は基本合意から五カ月で業務提携へ後退し、カーマルチメディアの終息も2024年10月の説明では実際に終えたのがまだ一部の製品にとどまるなど、社外へ開く道筋は思惑どおりに運んでいない。組み替えの当初は連結業績への影響は軽微だとしていたが、二年後には事業ポートフォリオでの位置付けを見極める段階に進み、三菱電機モビリティが鴻海精密工業から50%の出資を受け入れる検討にまで至った。2026年10月には鴻海精密工業の投資管理会社と株式譲渡契約を締結し、三菱電機モビリティの株式の半分を譲渡することが決まった。2027年3月期の連結で減損損失約1,000億円を計上する見込みで、切り出した事業は共同運営の形で外へ出た。

Yutaka Sugiura, 2026年8月

数字で見る

三菱電機:自動車機器事業の売上高と営業利益

三菱電機:自動車機器事業の売上高と営業利益

売上高(億円)営業利益率(%)
三菱電機:自動車機器事業の売上高と営業利益
(億円)売上高営業利益備考
2022年3月期7,046△315報告セグメント区分の変更に伴い、新区分へ組み替えて再表示された期
2023年3月期8,164△462国内製造拠点で減損損失を計上し、営業赤字が462億円へ広がった
2024年3月期9,441313分社化を決定した期。売上高は前年度比1,277億円増、営業損益は黒字へ転じた
2025年3月期9,192358全社の収益及び費用の配賦方法を変更。組み替えた前年度の営業利益は309億円
出所:三菱電機 2023年3月期・2024年3月期・2025年3月期 決算説明会資料(セグメント別実績:インダストリー・モビリティ)
出所:三菱電機 2023年3月期・2024年3月期・2025年3月期 決算説明会資料(セグメント別実績:インダストリー・モビリティ)
三菱電機:インダストリー・モビリティセグメントの推移

三菱電機:インダストリー・モビリティセグメントの推移

三菱電機:インダストリー・モビリティセグメントの推移
(百万円)売上高セグメント利益減損損失備考
2022年3月期1,480,83196,4873,684報告セグメント区分を変更した期。旧区分は自動車機器を産業メカトロニクスに含む
2023年3月期1,660,29695,98722,094減損はセグメント全体の額。自動車機器の国内製造拠点分は18,673
2024年3月期1,710,602118,8431,542会社分割を決定した期。分社化が連結業績に与える影響は軽微と見込んだ
2025年3月期1,644,80682,603222三菱電機モビリティが4月1日に事業活動を開始した期
出所:三菱電機 有価証券報告書 第151〜154期(2022年3月期〜2025年3月期)【セグメント情報】
出所:三菱電機 有価証券報告書 第151〜154期(2022年3月期〜2025年3月期)【セグメント情報】
三菱電機:三菱電機モビリティへ承継した資産・負債

三菱電機:三菱電機モビリティへ承継した資産・負債

三菱電機:三菱電機モビリティへ承継した資産・負債
(百万円)資産負債評価・換算差額等備考
分割決定時の見込み256,141211,419−2023年3月31日時点の現況に基づく見込額で、変動する可能性があるとした
第153期 重要な後発事象241,685194,24817,447負債には本取引に際して認識した三菱電機への負債185,854百万円を含む
第154期 企業結合等関係239,793192,35617,447負債に含む三菱電機への負債は183,962百万円。承継した固定資産は40,720百万円
出所:三菱電機 有価証券報告書 第153期(2024年3月期)【重要な後発事象】・第154期(2025年3月期)【企業結合等関係】
出所:三菱電機 有価証券報告書 第153期(2024年3月期)【重要な後発事象】・第154期(2025年3月期)【企業結合等関係】
会社分割の条件

会社分割の条件

会社分割の条件
科目概要備考
分割会社三菱電機2023年3月末の資本金175,820百万円、発行済株式数2,147,201,551株
承継会社三菱電機モビリティ設立時の商号はMelco自動車機器事業分割準備株式会社
分割の法的形式吸収分割(簡易吸収分割)会社法第784条第2項に基づき株主総会の承認を要さず、執行役社長の決定で実施
構造改革の決議日2023年4月24日執行役会議で決議。同日から1年以内を目安に新会社の設立を目指すとした
吸収分割の決定日2023年10月31日準備会社の設立日は2023年11月1日、吸収分割契約締結日は同年11月15日
効力発生日2024年4月1日
承継する事業自動車機器に関する事業2023年3月期の対象事業売上高621,810百万円は単独売上高の22.9%
割当ての内容普通株式1株準備会社が三菱電機へ交付。三菱電機の資本金の増減はない
承継した資産の額239,793百万円分割決定時の見込みは256,141百万円、第153期の後発事象では241,685百万円
承継した負債の額192,356百万円本取引に際して認識した三菱電機への負債183,962百万円を含む
評価・換算差額等の額17,447百万円
承継した固定資産40,720百万円うち建物24,458百万円、土地4,763百万円等。第154期の有形固定資産等明細表
承継会社の資本金100億円準備会社の設立時は10百万円。決算期は3月31日
出資比率三菱電機100%
会計処理共通支配下の取引等企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針に基づく処理
取得企業を決定するに至った経緯記載なし完全子会社への移転で支配の移動を伴わず、取得企業の決定を要さない
出所:三菱電機 有価証券報告書 第153期(2024年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】・第154期(2025年3月期)【企業結合等関係】
出所:三菱電機 有価証券報告書 第153期(2024年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】・第154期(2025年3月期)【企業結合等関係】
当時の取締役10名

取締役10名(2024年6月株主総会議決)

区分役員名役職
取締役業務執行担当領域
業務執行兼務漆間啓取締役:取締役業務執行:担当:
増田邦昭取締役:取締役業務執行:担当:
武田聡取締役:取締役業務執行:担当:
ピーターD.ピーダーセン取締役:取締役業務執行:担当:
藪重洋取締役:取締役業務執行:担当:
独立役員小坂達朗取締役:取締役業務執行:担当:
柳弘之取締役:取締役業務執行:担当:
江川雅子学者取締役:取締役業務執行:担当:
松山遙法曹取締役:取締役業務執行:担当:
皆川邦仁取締役:取締役業務執行:担当:
この一覧は2024年6月の定時株主総会の直後に提出された有価証券報告書の【役員の状況】による。
参考文献

参考文献

参考

次に読む決断

同業他社の状況(電機・事務機)

免責事項およびポリシー