この売却を、親会社に見限られた非中核部門の切り離しという言葉だけで読むと芯を外す。売却された化学事業は好採算で、外部メーカーへも素材を売り、もともと独立心の強い子会社であった。むしろ親会社の資本配分の論理から外れたことが、投資判断の速さをこの会社にもたらしたと思われる。
もっとも、分離がそのまま再建を約束したわけではない。2015年の再上場から数年は売上700億円以下で停滞し、時価総額は2019年3月に約420億円まで沈んだ。潮目が変わったのは、初の生え抜き社長がROIC経営で製品を選び直し、車載シフトとコロナ特需という外部の追い風が重なってからであった。カーブアウトが用意したのは独立という前提にすぎず、そこから稼ぐ力を引き出すには別の経営が要ったといえる。売却する側の選択と集中と、売却された側の再建とは、同じ一つの事業をめぐって別々に問われる主題であったのだろう。