この判断を、グループ経営の効率化という言葉だけで読むと芯を外す。1999年当時、上場子会社は親会社と少数株主の利害が分かれる構図を抱え、ソニーはその回路を親会社へ統合する方針を選んだ。株式交換で少数株主の株を自社株と替え、独立心の強いソニーケミカルの資本市場との接点をいったん閉じた。素材子会社が外部にも製品を売り、独自の株主を持っていた12年間を、親会社の資本のなかへ統合した判断と思われる。
もっとも、資本を親会社へ寄せたこの判断は、12年後に逆向きへ折り返した。2012年、ソニーは選択と集中を掲げて同じ会社を今度は売却し、ソニーケミカルはPEファンドのもとで独立し、2015年に再上場した。連結売上高は2023年3月期に1062億円へ伸び、新家由久社長は子会社のままなら投資判断は遅れたと後年語っている。資本を誰の手に置くかは、親会社の事業構成の都合で動くのかもしれない。同じ会社を統合し、また放したソニーの二つの判断は、その一例として読める。