三菱商事・日揮の資本参加(2010年・荏原製作所の決断)

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論点水事業の株式を外部に譲渡するか
荏原製作所:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
水事業子会社の株式の3分の2の譲渡と、3社同持分の共同経営への移行

何をなぜ決めたか:水事業子会社の株式の3分の2の譲渡と、3社同持分の共同経営への移行

概要

2010年2月23日の取締役会で三菱商事・日揮との水事業に係る業務上の提携を決議し、3月31日に水事業子会社である荏原エンジニアリングサービスの株式譲渡を完了した経営判断。保有する300万株のうち200万株を両社へ100万株ずつ譲渡し、3社の持株比率を各3分の1とした。譲渡価額は90億円。

前年の2009年に水処理事業と廃棄物処理事業をそれぞれ専業会社へ統合したうえで、水事業だけを外部資本へ開いた。矢後夏之助社長のもとで進めた環境事業の再編である。

背景

都市ごみ焼却や上下水道を担うエンジニアリング事業はプラント一括請負で採算が振れやすく、2008年3月期に122億円、2009年3月期に115億円の営業損失を計上した。2009年3月期は連結でも131億円の純損失を計上している。荏原は2009年4月に水処理事業を荏原エンジニアリングサービスへ、10月に廃棄物処理事業を荏原環境プラントへ統合し、二つの専業会社へ切り分けていた。

内容

100%子会社だった荏原エンジニアリングサービスの株式を三菱商事・日揮へ3分の1ずつ譲渡し、連結子会社から持分法適用の関連会社へ移した。荏原工業洗浄・アクアエンジニアリングを含む3社が連結の範囲から外れ、資産457億円・負債373億円が連結貸借対照表から落ち、連結従業員数は2,302名減少して13,800名となった。

提携の狙いは、国内の水処理施設の運営・管理事業と新興国の水インフラ整備・運営事業での拡大にあり、そのために事業型プロジェクトと海外プロジェクトへの競争力を高める必要があると判断した。

含意

自前でプラントを建てて運営する請負型から、外部と資本・機能を分け合う体制への転換であった。エンジニアリング事業の売上高は2010年3月期の1,394億円から翌期516億円へ落ち、営業損益は138百万円の赤字から9億42百万円の黒字へ転じている。会社は2011年4月に社名を水ingへ改め、2025年12月期末も荏原の議決権所有割合33.3%の持分法適用共同支配企業として、3社の共同経営が続いている。

いつ何が起きたか6件
考察:自前主義を解くということ
考察

考察:自前主義を解くということ

この判断の芯は、水事業を切り出して外に開いたこと自体ではなく、自前で建てて運営する荏原の環境事業のやり方を、資本ごと外部と分け合う方式へ変えた点にある。プラント一括請負で採算が振れ、2009年3月期に連結で131億円の純損失を計上した荏原は、水事業子会社の株式の3分の2を90億円で売却し、三菱商事・日揮と同持分で持ち合う会社へ組み替えた。技術は自前でも、資金と海外網は他社に依存するという割り切りが、そこには表れているだろう。

もっとも、和製水メジャーという掛け声は、思い描いたようには実らなかった。連結から外れたあとのエンジニアリング事業は、売上高が3分の1近くまで縮んだ代わりに営業損益が黒字へ転じ、荏原の関心は水インフラの海外展開よりも本体の収益を安定させるほうへ移っていったようにみえる。持分を3分の1まで薄めたこの判断は、成長事業を育てる出発点というより、単独では負いきれない事業を連結で保有し続けないための線引きだったのだろう。共同経営はその形のまま16年目に入っている。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る2表

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図と表

荏原製作所:エンジニアリング事業の売上高と損益

売上高(百万円)営業損益率(%)
荏原製作所:エンジニアリング事業の売上高と損益
(百万円)売上高営業損益セグメント資産備考
2005年3月期164,717△4,844152,314「エネルギー供給」「原子力関連装置」を含む旧区分
2006年3月期172,823△587144,832
2007年3月期148,062△8,347158,574
2008年3月期141,445△12,181138,993エネルギー供給と原子力関連装置を風水力事業へ移し、区分を変更
2009年3月期146,045△11,472142,479
2010年3月期139,387△13896,6523月31日に荏原エンジニアリングサービスほか2社を連結から除外し資産が減
2011年3月期51,66094255,638通期で連結から外れ、売上高は前期の4割弱へ。都市ごみ焼却が主体となる
2012年3月期50,12832247,734
2013年3月期52,4955,17646,392
2014年3月期52,9834,76745,020
2015年3月期64,9326,23153,734
出所:荏原製作所 有価証券報告書 第141〜150期(セグメント情報)
出所:荏原製作所 有価証券報告書 第141〜150期(セグメント情報)

株式譲渡と資本提携の条件

株式譲渡と資本提携の条件
科目概要備考
取締役会決議2010年2月23日三菱商事・日揮との間で水事業に係る業務上の提携を行うことを決議
株式譲渡の完了2010年3月31日
譲渡した子会社荏原エンジニアリングサービス株式会社資本金650百万円。水処理施設の設計・施工と運転・維持管理、薬品の製造販売
譲渡前の所有株式数3,000,000株(所有割合100.0%)
譲渡後の所有株式数1,000,000株(所有割合33.3%)三菱商事・日揮も各1,000,000株(33.3%)を持ち、3社が同持分となる
株式譲渡価額9,000百万円
会計上の取扱い連結子会社から持分法適用の関連会社へ荏原工業洗浄・アクアエンジニアリングを含む3社を連結の範囲から除外
連結除外した3社の資産45,736百万円2010年3月31日現在。負債合計は37,338百万円
除外直前の売上高68,908百万円内部取引高を含む。経常利益4,359百万円、当期純利益2,247百万円
提携の理由事業型・海外プロジェクトの競争力強化国内の水処理施設の運営・管理と、新興国の水インフラ整備・運営での拡大を見込む
出所:荏原製作所 有価証券報告書 第145期(2010年3月期)【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】【関係会社の状況】
出所:荏原製作所 有価証券報告書 第145期(2010年3月期)【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】【関係会社の状況】
参考文献

参考文献

参考
  • 荏原製作所 有価証券報告書【沿革】
  • 水ing株式会社 会社沿革
  • 荏原製作所 有価証券報告書「第145期(2010年3月期)【経営上の重要な契約等】」
  • 荏原製作所 有価証券報告書「第145期(2010年3月期)【連結キャッシュ・フロー計算書関係】」
  • 荏原製作所 有価証券報告書「第145期(2010年3月期)【関係会社の状況】【従業員の状況】」
  • 荏原製作所 有価証券報告書「第141〜150期(セグメント情報)」
  • 荏原製作所 有価証券報告書「第161期(2025年12月期)【関係会社の状況】」

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