E-Plan2025策定(2023年・荏原製作所の決断)

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論点多角化した事業をどう選別するか
荏原製作所:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
対面市場別5カンパニー制への移行と、成長事業・基盤事業の区分

何をなぜ決めたか:対面市場別5カンパニー制への移行と、成長事業・基盤事業の区分

概要

2023年1月、製品別の3カンパニー体制を、対面する市場別の建築・産業/エネルギー/インフラ/環境/精密・電子の5カンパニー体制へ組み替え、翌2月に3か年の中期経営計画E-Plan2025を発表した経営判断。事業セグメントも「風水力」「環境プラント」「精密・電子」の3区分から、同じ5区分へ変更した。

最終年度の2025年度に全社営業利益率10.0%以上・ROIC10.0%以上・ROE15.0%以上を掲げ、期間中の売上収益のCAGRを7%と置いた。2005年以来の事業体制の再編で、浅見正男社長のもとで進めた。

背景

前の中期経営計画E-Plan2022の期間に、長期ビジョンE-Vision2030が掲げたROIC10%の水準は2022年に実現していた。2022年12月期の売上収益は6,808億円、営業利益は705億円である。次の3年をE-Vision2030の「2030年にありたい姿」へ近づくための期間と位置づけ、プロダクトアウトから脱却し、顧客の要望と課題に向き合って価値を創造する企業文化を根付かせることをテーマに据えた。「2030年に時価総額1兆円」をより強力に推進するため、ROEを重要指標に加えている。

内容

製品軸の「風水力」セグメントを建築・産業/エネルギー/インフラの3つの対面市場別セグメントへ再構成し、環境・精密・電子と並べた。成長分野と位置づけたのは建築・産業と精密・電子で、売上収益のCAGRをそれぞれ6.0%以上・15.0%以上、営業利益率を7.0%以上・17.0%以上と置いている。

3か年累計のキャッシュ・アロケーションは、成長投資1,800億円〜2,250億円(うち研究開発費650億円)、基盤投資500億円〜800億円。D/Eレシオ0.3〜0.5倍を管理目安として有利子負債を成長投資に充て、連結配当性向は35.0%以上とした。

含意

多角化そのものから撤退するのではなく、資本配分の設計で選別する決め方であった。最終年度の2025年12月期は売上収益9,583億円・営業利益1,138億円で、営業利益率11.9%・ROIC11.9%・ROE15.6%・売上収益CAGR12.1%と全社目標をすべて上回った。時価総額は2020年12月期末の3,203億円から1兆7,065億円へ伸びている。

ただし事業別では、成長事業の精密・電子が営業利益率16.9%、建築・産業が6.3%、エネルギーが11.9%と目標に達せず、基盤事業の環境が13.3%、インフラが8.2%で目標を大きく超えた。後継のE-Plan2028は2028年度に売上収益1.2兆円規模・営業利益率14.5%以上・ROE18.0%以上を掲げている。

いつ何が起きたか7件
当時の取締役10名

当時の取締役(2022年3月株主総会決議)

考察:撤退せずに選別するという決め方
考察

考察:撤退せずに選別するという決め方

荏原がこの再編でやらなかったことのほうが、やったことより性格を表している。事業は一つも売らず、五つ並べたまま、精密・電子と建築・産業を成長事業、環境とインフラを基盤事業に分けて資金の配り方だけを変えた。五つの事業のいずれについても自社がベストオーナーであるという立場をとり、選択と集中を撤退で示す方針は選んでいない。1990年代の風力発電や燃料電池から撤退した経験が、事業を減らす痛みではなく、増やす前の規律のほうへ効いたと推察される。

もっとも、3年後に出た答えは、掲げた筋書きとは少しずれていた。全社では営業利益率11.9%と目標を超えたが、成長事業に置いた精密・電子は営業利益率16.9%で目標に達せず、基盤事業に置いた環境が13.3%で目標を最も大きく上回っている。資金を厚く配る事業と実際に稼ぐ事業が入れ替わっても全社の数字が目標を上回ったのは、半導体と水インフラの両方に追い風が吹いた3年だったからかもしれない。撤退せずに選別するという決め方が本当に効くかどうかは、風向きの変わる局面でしか確かめられないのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

数字で見る

図と表

荏原製作所:連結業績の推移

売上収益(百万円)営業利益率(%)
荏原製作所:連結業績の推移
(百万円)売上収益営業利益親会社の所有者に帰属する当期利益備考
2018年12月期509,17532,48218,262前期は決算期変更により2017年4月から12月までの9か月決算
2019年12月期522,42435,29823,349
2020年12月期522,47837,56624,473
2021年12月期603,21361,37242,576
2022年12月期680,87070,57250,488E-Plan2025が売上収益CAGR7%の基準に置いた期
2023年12月期759,32886,02560,283E-Plan2025の初年度。5つの対面市場別セグメントでの開示を開始
2024年12月期866,66897,95371,401
2025年12月期958,285113,80276,633最終年度。営業利益率11.9%・ROIC11.9%・ROE15.6%で全社目標を超過
出所:荏原製作所 有価証券報告書 第154〜161期(連結損益計算書・要約連結損益計算書)
出所:荏原製作所 有価証券報告書 第154〜161期(連結損益計算書・要約連結損益計算書)

荏原製作所:E-Plan2025の目標と2025年度実績

荏原製作所:E-Plan2025の目標と2025年度実績
(%)2025年度目標2025年度実績備考
全社営業利益率1011.9
ROIC1011.9
ROE1515.6
売上収益CAGR712.1
精密・電子(営業利益率)1716.9成長事業。目標に0.1ポイント届かなかった
エネルギー(営業利益率)1211.9
建築・産業(営業利益率)76.3成長事業。5区分で目標への未達幅が最も大きい
インフラ(営業利益率)68.2
環境(営業利益率)713.3基盤事業。目標を6.3ポイント上回った
精密・電子(売上収益CAGR)1515.5
建築・産業(売上収益CAGR)67.7
出所:荏原製作所 有価証券報告書 第161期(2025年12月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
出所:荏原製作所 有価証券報告書 第161期(2025年12月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

E-Plan2025の目標と投資計画

E-Plan2025の目標と投資計画
科目概要備考
計画期間2023年度から2025年度までの3か年
全社営業利益率10.0%以上最終年度の2025年度に達成すべき目標として設定
ROIC10.0%以上NOPLAT÷投下資本(有利子負債と株主資本の期首期末平均)で算出
ROE15.0%以上「2030年に時価総額1兆円」の実現を推進するため重要指標に加えた
売上収益のCAGR7%成長分野と位置づける建築・産業と精密・電子の2事業を中心に実現する
セグメント別営業利益率精密・電子17.0%以上ほか4区分建築・産業7.0%、エネルギー12.0%、インフラ6.0%、環境7.0%以上
セグメント別売上CAGR精密・電子15.0%以上、建築・産業6.0%以上2022年度から2025年度まで
D/Eレシオ0.3〜0.5倍(管理目安)
成長投資(3か年累計)1,800億円〜2,250億円うち研究開発費650億円。増産対応設備・新規事業・M&A等を含む
基盤投資(3か年累計)500億円〜800億円維持更新設備・人的資本・ERP等のIT・ビジネスインフラ・ESG関連投資
株主還元連結配当性向35.0%以上自己株式取得は株価・業績の動向等を勘案し、適切な局面で機動的に実施
事業セグメントの変更3セグメントから5セグメントへ風水力を建築・産業/エネルギー/インフラへ再構成し、環境・精密・電子と並置
非財務目標Scope1,2のGHG排出量を2018年比32%削減ほかCDP評価B以上の維持、エンゲージメントスコア83以上、男性育休取得率100%
出所:荏原製作所 有価証券報告書 第159期(2023年12月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
出所:荏原製作所 有価証券報告書 第159期(2023年12月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
当時の取締役10名

当時の取締役(2022年3月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考

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