シンガポール証券取引所上場(2013年・トーセイの決断) 更新:2026/07/22 論点 東証に加えて海外市場へ上場するか トーセイ:業績の推移 売上高(億円)営業利益率(%) メインボードへのセカンダリー上場による、東証との同時上場 何をなぜ決めたか:メインボードへのセカンダリー上場による、東証との同時上場 概要 2013年3月27日、トーセイは東証一部への上場を保ったままシンガポール証券取引所メインボードへセカンダリー上場した。証券コードはS2D。日本企業によるシンガポール証取への上場は2000年以来13年ぶりで、不動産業界では初であった。 背景 リーマンショック後の中期経営計画"Charge up 2011"で総資産を783億円から599億円へ絞り、自己資本比率を27.9%から41.6%へ戻したうえで、2012年からの"Next Stage 2014"は海外展開を重点テーマの一つに据えた。2012年1月には初の海外現地法人Tosei Singapore Pte.Ltd.を設けていた。 内容 アジアの国際金融センターで上場することにより、世界の不動産投資家へトーセイグループと東京の不動産を訴求し、海外資金を東京へ誘致する狙いを掲げた。上場に伴い国際会計基準(IFRS)を適用し、開示資料は日本語と英語を同時に出す体制へ移した。 含意 上場3か月経過後に可能となる新株式発行を2013年7月9日に決議し、260万株で19億33百万円を調達した。受託資産残高は2012年11月期末の3,000億円から2024年8月末の2兆4,500億円へ拡大し、その7割弱を海外投資家の案件が占める。 いつ何が起きたか 6件 考察:東京の物件を、東京の外の値付けに晒す 考察 考察:東京の物件を、東京の外の値付けに晒す 二つの取引所に載ることは、それ自体では株価を上げない。この上場で取れた資金は、同じ期の売上高に照らせば控えめな額にとどまった。この判断の実利は資金より、外資系機関投資家を主要顧客とする事業と、株主・開示の作りを揃えた点にあっただろう。IFRSの適用も日英同時開示も、上場に付随した事務ではなく、顧客と株主が同じ言語で同じ会社を読める状態を作る作業であった。首都圏の中小ビルを扱う会社が、その物件の値打ちをアジアの投資家の物差しで説明する側に回っている。 アジア太平洋地域向けファンドの資金の受け皿として、トーセイの受託資産残高は2024年8月末で2兆4,500億円、うち7割弱が海外投資家の案件を占める。2013年に取ったS2Dという4文字の証券コードは、13年後の決算説明資料の表紙にも8923と並んで刷られている。 Yutaka Sugiura, 2026年7月 参考文献 参考文献 参考トーセイ 決算説明資料(2012年11月期)トーセイ 決算説明資料(2013年11月期)トーセイ 決算説明資料(2015年11月期)トーセイ 決算説明資料(2025年11月期)トーセイ 有価証券報告書(連結・IFRS)/同【沿革】 次に読む決断 トーセイの意思決定1994年トーセイトーセイ東誠ビルディングのMBO経営者による賃貸・管理会社の承継と、分譲マンションへの事業拡大1994年2024年トーセイトーセイ名古屋鉄道と資本業務提携創業者に代わる筆頭株主の登場と、資本の後ろ盾の入れ替え2024年同じ問い:上場による資金調達1996年ユニオンツールユニオンツール東証二部に上場店頭登録から2年後の一部指定へ進む資本市場での歩みと香港子会社の設立1996年2013年オープンアップグループオープンアップグループ東証一部へ市場変更ジャスダックから最上位区分まで、6年半をかけた段階的な格上げ2013年2013年サントリービバレッジ&フードサントリービバレッジ&フード飲料子会社の単独上場親会社を非公開に保ったまま、傘下の事業会社だけを東証一部へ送り出す形2013年2014年リクルートHDリクルートHD東証一部への新規上場創業54年での東証一部上場——非上場のまま再建した元祖ベンチャーの株式公開2014年2012年全国保証全国保証東証一部へ新規上場公募増資による資金調達と、公開市場での値付けを受け入れる立場への移行2012年 × 出所