親会社を非上場に保ったままの飲料子会社・東証一部上場
2013年最大のIPOで約3,900億円を調達し、鳥井信宏社長は海外M&Aの原資をどう手当てしたか
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- 概要
- 2013年7月3日、サントリーホールディングスの飲料・食品事業を担うサントリー食品インターナショナルが、東京証券取引所市場第一部に株式を上場した経営判断。公開価格は3,100円、上場時の時価総額は約9,700億円で、新規上場としてはその年最大の規模となった。持株会社サントリーホールディングスは非上場のまま、傘下の事業会社を上場させる形をとった。
- 背景
- サントリーグループは2009年に持株会社体制へ移行し、飲料・食品事業をサントリー食品として分社独立させ、オランジーナ・シュウェップス買収など海外M&Aで規模を広げていた。国内飲料市場が成熟するなか、東南アジアなどでの買収を続けるための資金と対外信用力の確保が課題となっていた。
- 内容
- サントリー食品は公募増資と株式売出しにより約3,900億円を調達し、その資金を東南アジアなど成長市場でのM&Aに充てる方針を示した。親会社サントリーホールディングスを非上場に保ちつつ、資本市場から資金を得る事業会社だけを上場させる「親子上場」の形を選んだ。
- 含意
- 非上場を貫いてきたサントリーグループが、飲料事業に限って資本市場の資金と規律を受け入れた判断であった。調達資金は上場直後の英Lucozade/Ribena取得などに向かい、同社のグローバル飲料企業への拡張を資本面から支えた。
非上場の思想と、市場から得た資金
この判断の核心には、グループ全体の独立性を守りながら、成長事業の資金だけを外から調達したいという二律を、どう両立させるかという問いがある。サントリーグループは長く非上場を貫き、四半期ごとの市場の評価に縛られない経営を強みとしてきた。その思想を頂点で保ったまま、飲料という最も外へ広がる事業だけを切り出して上場させた組み立ては、独立性と資金調達力のどちらも手放さないための折衷であったとみることができる。
もっとも、事業会社だけを上場させる親子上場は、親会社と少数株主の利害がどこかで交わる論点を抱え続ける形でもある。市場から得た約3,900億円は、上場直後の欧州ブランド取得やアジアでの拡張を確かに後押しし、四極体制の完成を資本面から支えた。非上場の思想を守るための上場という逆説的な選択が、その後の同社の規模拡大にどう影響し続けるのかは、なお見届ける対象であるとみられる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
飲料事業の分社独立と海外M&Aの加速
サントリーグループは2009年に持株会社体制へ移行し、飲料・食品事業を新設のサントリー食品へ吸収分割で承継させて、清涼飲料の製造・販売を独立した事業会社として切り出した。分社と前後して、同グループはニュージーランドのフルコア、フランスのオランジーナ・シュウェップスと海外の飲料会社を相次いで買収し、清涼飲料事業のグローバル化を一気に進めていた。飲料事業は、独立した資本と経営判断のもとで拡張する段階に入っていた[1]。
買収を重ねて事業規模は膨らんだ一方で、国内の清涼飲料市場は人口減少と成熟のなかで大きな伸びを望みにくくなっていた。成長の軸を東南アジアなど海外に置くほど、次のM&Aに投じる資金と、買い手としての対外信用力を厚くしておく必要が増していた。オランジーナ買収では約30億ユーロを投じており、この規模の投資を続けるには自前の資金調達手段が求められていた[2]。
決断
親会社を非上場に保ったまま子会社を上場させる
2013年7月3日、サントリー食品インターナショナルは東京証券取引所市場第一部に株式を上場した。公開価格は仮条件の下限にあたる3,100円で、上場初日の初値は3,120円、上場時の時価総額は約9,700億円に達し、新規上場としてはその年で最大の規模となった。飲料業界では、キリンホールディングス、アサヒグループホールディングスに次ぐ時価総額を、上場初日にして備える会社が生まれた[3]。
この上場で特徴的だったのは、資本市場に姿を現したのがグループの頂点ではなく、飲料の事業会社に限られた点であった。持株会社サントリーホールディングスは非上場のまま、傘下のサントリー食品だけを上場させる形をとった。同社は公募増資と株式の売出しにより約3,900億円を調達し、鳥井信宏社長のもとで、その資金を人口増が見込まれる東南アジアなどでのM&Aに充てる方針を示した。創業家が経営を握るグループの独立性を保ちつつ、成長事業の資金だけを市場から得る組み立てであった[4]。
結果
調達資金が支えた欧州とアジアへの拡張
上場で得た資金は、まもなく次のM&Aへと向かった。2013年から2014年にかけて、サントリー食品は英グラクソ・スミスクラインからエナジードリンク「Lucozade」とフルーツドリンク「Ribena」の事業を約13.5億ポンドで取得し、英国を軸とする欧州事業の足場を広げた。上場時に掲げた海外での買収加速の方針を、まず欧州の有力ブランド取得によって実行に移した[5]。
上場後の同社は、日本・アジア・欧州・米州にまたがる四極体制のもとで規模を伸ばし続けた。上場した2013年12月期に連結売上高1兆1,214億円・営業利益727億円であった業績は、2022年12月期に売上1兆4,504億円へと拡大し、同年4月には東証プライム市場へ移行した。分社独立から上場を経た飲料事業は、コカ・コーラ、ペプシコに次ぐ規模のグローバル清涼飲料グループへと育っていった[6]。
- 日本経済新聞 2013年7月3日「サントリー食品上場、時価総額9700億円 初値3120円」
- 東洋経済オンライン 2013年7月14日「中核子会社が上場、勝負に出るサントリー」(倉沢美左)
- ダイヤモンド・オンライン「サントリー食品事業会社が上場!当時社長の鳥井信宏氏が明かす、持ち株会社ではなく子会社を上場させた理由」
- サントリー食品インターナショナル 有価証券報告書 第15期(2024年12月期)【沿革】