みずほリース丸紅への第三者割当増資による20%出資の受け入れと丸紅の持分法適用関連会社化

みずほに続いて商社を株主に迎えるとき、どちらの系列にも属さない位置は保てるか

時期 2024年5月
意思決定者(推定) 中村昭・取締役会 社長
論点 主要株主の構成と提携相手の並べ方
概要
2024年5月14日、みずほリースと丸紅は資本業務提携契約を締結した。丸紅は第三者割当増資の一部引受と既存株主からの取得により、約4%であった出資比率を20%へ引き上げ、投じた額は総額約500億円であった。同年6月の払込完了により、みずほリースはみずほフィナンシャルグループに続いて丸紅の持分法適用関連会社ともなった。
背景
丸紅との関係は2019年2月のエムジーリース合弁化に始まり、2020年のAircastle共同買収、PLM Fleet、豪州の自動車販売金融会社と共同運営会社が積み上がっていた。2023年4月に就任した中村昭社長は中期経営計画2025でグロース・フロンティア領域へ累計1,500億円のインオーガニック投資を掲げていた。
内容
増資と相対取得を組み合わせ、丸紅の持株比率は2024年3月末の4.4%から20.0%へ上がった。同社の説明では、みずほフィナンシャルグループとはモノに関する知見を生かした顧客への提案、丸紅とは主にグローバル分野のインフラ事業や海外共同投資で協業する役割分担となる。
含意
2025年3月末の大株主はみずほFGが23.09%、丸紅が20.0%で、上場2社が3ポイント差で並んだ。2025年3月期の連結売上高6,954億円、親会社株主に帰属する当期純利益420億円はいずれも過去最高となり、丸紅からは19名の人財を受け入れた。
筆者の見解

二人の株主を同じ高さに置く

みずほに続いて丸紅を迎えた判断を、資本増強という言葉だけで読むと肝心のところが抜ける。5年のあいだに二度渡したのは、いずれも20%台の議決権であり、子会社化には届かない比率であった。2024年3月末に23.03%と4.4%だった二社の持株は、翌期末には23.09%と20.0%で並んでいる。銀行と商社のどちらの系列にも吸収されないまま双方から案件を引くには、二人の株主を同じ高さに置くほかなかったとみられる。

もっとも、この均衡を自力で選んだとばかりはいえない。累計1,500億円のインオーガニック投資を掲げた計画は自己資本を厚くする相手を必要としており、丸紅の約500億円はその求めに応えた資金でもあった。丸紅からは19名の人財が入り、2025年6月には取締役副社長を含む二名の役員が加わっている。1969年に16社の共同出資で生まれた会社は、56年を経て、二人の大株主に支えられる形へ落ち着いている。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

みずほと同じ日に始まっていた丸紅との関係

丸紅との資本の話は、みずほ銀行との資本業務提携と同じ日に始まっている。2019年2月26日、当時の興銀リースは丸紅子会社エムジーリースの合弁会社化を決議し、同時に公表したリリースには、丸紅が興銀リース普通株式の5%を目途に取得することと社外取締役の派遣を検討すると記された。翌3月には第三者割当増資の払込が完了し、同社はみずほフィナンシャルグループの持分法適用関連会社となっている[1][2]

以後の5年間で、両社の共同運営会社が積み上がった。2020年3月には米Aircastle Limitedを丸紅と共同で買収し、みずほリースは議決権の25%を取得している。同月には米PLM Fleet, LLC、2022年1月には豪州の自動車販売金融会社Affordable Car Leasing Pty Ltdの持分も、いずれも丸紅との共同運営会社として取得した。それでも丸紅自身の持株比率は、2024年3月末で4.4%の第3位にとどまっていた[3][4]

出資と買収を稼ぐ手段に置いた計画

2023年4月、中村昭氏が社長に就いた。同氏のもとで始まった中期経営計画2025(2023〜2025年度)は、コアにリース・割賦、グロースに不動産・環境エネルギー・国際、フロンティアに新規事業を置く3分野のポートフォリオを掲げ、グロースとフロンティアの領域へ累計1,500億円のインオーガニック投資を行う方針を示した。既存の貸出資産を積むのではなく、出資と買収で収益源を増やす計画であった[5][6]

本体の規模も伸びていた。2024年3月期の連結売上高は6,561億円、経常利益509億円、親会社株主に帰属する当期純利益は352億円で、セグメント資産はリース・割賦が1兆8,049億円、ファイナンスが1兆3,974億円に達している。累計1,500億円という投資枠を回し続けるには、自己資本を厚くする手立てが要る。2024年4月には建設仮設材のジェコスとの資本業務提携契約も締結していた[7][8][9]

決断

500億円で4.4%を20%へ

2024年5月14日、みずほリースと丸紅は資本業務提携契約を締結した。丸紅はみずほリースの第三者割当増資の一部を引き受け、あわせて既存株主から株式を取得することで、約4%であった出資比率を2割超へ引き上げる。投じる額は総額約500億円で、増資の完了は6月18日を予定していた。この枠組みにより、みずほリースは丸紅の持分法適用関連会社となる[10][11]

払込は予定どおり進み、2024年6月、みずほリースは丸紅の持分法適用関連会社となった。2025年3月末の大株主は、みずほフィナンシャルグループが23.09%、丸紅が20.0%で、上場2社が3ポイント差で並んでいる。前年3月末に23.03%と4.4%であった両社の差は、1年で大きく縮まった。どちらか一方の系列に収まりきらない株主構成が、この時点で固まった[12][13]

二社に分けた役回り

二社の役回りは、同社自身の説明で分かれている。みずほフィナンシャルグループとの協業については、培ってきたモノに対する知見やノウハウを生かして同グループの顧客の事業推進に資するソリューションを提供するとし、丸紅との協業については、主にグローバル分野で進めており、インフラ事業や海外共同投資などで着実な成長を図るとしている。金融の顧客基盤と海外の事業機会を、別々の相手から引く形である[14]

人の往来は資本より先に始まっていた。丸紅に入社した矢部延弘氏は2019年6月から取締役を務め、2025年6月には同じく丸紅出身の石附武積氏が取締役副社長に、河村肇氏が取締役に就いている。20%という比率は連結子会社化には届かず、上場と経営の自律は保たれる。みずほとの提携で選んだ持分法という距離を、丸紅に対しても同じ形で用意したことになる[15]

結果

提携後に積み上がった出資

提携後の動きは、共同運営の増強から始まった。2024年7月2日、丸紅とみずほリースはAircastleの5億米ドルの増資引受を完了し、資金は航空機の購入などの成長投資に充てられている。出資比率は丸紅75%、みずほリース25%のまま保たれた。国内では2024年5月にジェコスの株式を取得し、同社を持分法適用関連会社としている[16][17]

翌年には不動産で大型の追加取得が続いた。2025年4月、みずほリースは日鉄興和不動産の発行済株式14.85%を501億円で追加取得し、出資比率を15.29%から30.14%へ引き上げている。2021年8月に持ち始めた株式を、4年をかけて3割まで積み増した。中期経営計画2025が掲げた累計1,500億円の投資枠は、航空機・建設・不動産へ順に振り向けられていった[18][19]

二社体制の初年度

丸紅の出資を受けた最初の通期となる2025年3月期は、いずれの指標も過去最高となった。連結売上高は6,954億円、営業利益490億円、経常利益662億円、親会社株主に帰属する当期純利益は420億円である。前期の352億円から2割近く伸び、2019年のみずほ入りにあわせて掲げた純利益300億円という目標は、計画期間を終えた後に大きく上回る水準へ届いた[20][21]

体制の中身も入れ替わりつつある。2024年度には丸紅からマネジメント層・中堅・若手あわせて19名の人財を受け入れ、丸紅の海外事業網とみずほリースのリース金融機能を組み合わせる運営が始まった。連結従業員数は2025年3月末で2,282人と、みずほ入り前の2019年3月末の1,627人から4割ほど増えている。株主の構成が変わるにつれて、人と案件の通り道も変わった[22][23]

出典・参考

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