1971年4月、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)、三菱商事、三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)、明治生命保険(現明治安田生命)、東京海上火災保険(現東京海上日動火災)等を中心とする三菱グループ11社、日本生命保険、第一生命保険[1]、米国チェース・マンハッタン銀行関連会社3社の合計16社を株主としてダイヤモンドリース株式会社が設立された[2]。資本金10億円、本店は東京都千代田区[3]。1970年前後の日本は設備投資の拡大期にあり、各都市銀行系列で『○○リース』が相次いで設立された時期にあたる。三菱グループは銀行・商事・信託の3社軸で1社のリース会社を共同で立ち上げ、グループ取引先の設備調達需要をオフバランスで賄う窓口の役割を持たせた。
設立当初の事業は情報関連機器、事務用機器、産業工作機械を中心とする動産リースで、グループ商社・銀行の顧客基盤がそのまま顧客リストになった。三菱商事の取り扱う輸入機械、三菱銀行の取引先である中堅製造業の設備投資、三菱信託の不動産ファイナンスの周辺需要が、設立直後から安定した契約実行高をもたらした。リース取引は設備代金を割賦に置き換える金融商品であり、メーカーの販売支援、顧客のオフバランス、銀行のクレジット代替という3者の利害が一致する商品設計で、グループ各社にとって新規市場というよりも既存取引の延長線上にあった。三菱グループの共同出資という資本構成自体が、設立直後から大口顧客を集めるブランドの代わりを果たした。
1985年3月に東京証券取引所市場第二部に上場[4]、1988年9月には第一部に指定替えとなり[5]、設立から17年で東証一部上場のリース会社の一角を占めた。同社の事業モデルは『グループ顧客向けの動産・割賦・貸付』[引用元]を組み合わせた金融サービスで、業界内では銀行系リース会社の典型的な業態と位置付けられた。発注者であるメーカーと借手である顧客の双方に三菱系の取引先が多く、新規開拓よりも既存取引網の深耕が成長の主軸となった。リース業界全体が高度成長から安定成長への移行期に入った1980年代、同社は資金調達コストの低さと三菱グループの信用力を武器に、業界上位のシェアを確保した。
1999年10月、ダイヤモンドリースは三菱信託銀行系列[6]の菱信リースを合併した[7]。三菱グループ内ではグループ銀行ごとに別系列のリース会社を抱える二重構造があり、菱信リースは三菱信託の不動産・大口設備向けリースを主軸とする補完的な存在だった。合併はグループ内のリース機能を1社に集約する第一段階で、商業設備・生産設備・病院設備等の割賦販売事業や金銭の貸付業務、有価証券運用業務といった周辺金融サービスも同社の事業に組み込まれた。リース業界はこの時期、リース料総額や契約実行高でランキングを競う成熟段階に入っており、合併による規模拡大は同業他社(オリックス、東京リース、芙蓉総合リース等)に対する競争上の意味を持った。
リース業界の収益構造は、賃貸料収入から減価償却費・支払利息を差し引いた『リース取引総利益』が中心で、契約期間中のキャッシュフローが安定的に流入する代わりに、新規契約の獲得競争が熾烈だった。情報関連機器の更新サイクルの短期化、工作機械の中古市場形成、リース会計基準の見直しによる会計処理の複雑化など、業界環境は1990年代後半から複雑化した。ダイヤモンドリースは三菱グループの顧客基盤を活かして契約実行高を伸ばす一方、新規領域として不動産関連ファイナンスや有価証券運用にも踏み込み、純粋なリース会社から金融サービス会社への業容拡張を進めた。FY05(2006年3月期)の連結売上高は5,241億円、経常利益296億円、当期純利益211億円で、業界中堅の規模に到達していた。
2000年代前半の同社の経営課題は、設備投資需要の鈍化に伴う国内リース市場の縮小に対する備えだった。日本のリース市場全体は1991年度の8.8兆円をピーク[8]に減少局面に入り、リース会社の競争は新規取引から既存顧客のリピートと業務範囲の拡張へと軸足が移った。ダイヤモンドリースは三菱グループ向けが収益の柱である構造を維持しつつ、グループ外への営業展開、海外案件への取り組み、不動産・有価証券・割賦販売を組み合わせた複合金融サービスへの進出を時間をかけて進めた。しかしリース会社単独の規模では銀行系大手や独立系大手(オリックス)に対する競争劣位が解消されず、グループ内の再編による規模拡大が次の経営課題として浮かんだ。
2007年4月、ダイヤモンドリースはUFJセントラルリースと合併し、商号を三菱UFJリース株式会社へ変更[9]、同月に名古屋証券取引所市場第一部に上場した。UFJセントラルリースはUFJ銀行(旧東海銀行・三和銀行系)の系列リース会社で、東海地方を中心に中堅企業向けリース取引で実績を持っていた。背景には2006年1月の東京三菱銀行とUFJ銀行の経営統合(三菱UFJフィナンシャル・グループ発足)があり、メガバンク統合に伴ってグループ内のリース会社も1社に集約する判断が下された。合併によってダイヤモンドリース+UFJセントラルリースの単純合算で、契約実行高ベースの業界順位はオリックスに次ぐ2位へ浮上した。
合併後の三菱UFJリースは、旧ダイヤモンドリースが強い首都圏・三菱商事系顧客と、旧UFJセントラルリースが強い中京圏・東海銀行系顧客の双方を取り込み、地域・顧客層の両面で補完関係が成立した。FY07(2008年3月期)の連結売上高は9,870億円と前期5,174億円のほぼ倍に拡大し、合併シナジーが数字に現れた。経常利益は517億円、当期純利益302億円。三菱UFJ銀行・三菱商事・三菱UFJフィナンシャル・グループという3社が筆頭株主に並び、銀行系・商社系のリース会社という性格はそのまま継承された上で、グループ統合の規模効果が発揮された。
しかし合併直後の2008年9月、リーマン・ショックが発生した。FY08(2009年3月期)の連結売上高は8,186億円、当期純利益は71億円へ急減した。リース会社にとって金融危機は二重の打撃で、顧客の設備投資マインドの冷え込みで新規契約が減ると同時に、既存契約先の信用力悪化で貸倒れリスクが上昇する構造にある。合併直後の収益反落は組織統合のコスト負担とも重なり、新生・三菱UFJリースの最初の試練となった。だがこの危機を契機に、国内リース市場の長期縮小を見据えた海外展開と非リース領域への分散が経営課題として明確化し、続く2010年代の事業ポートフォリオ転換の前提となった。
2010年代の三菱UFJリースの戦略軸は、国内設備リース中心の事業構造から、海外案件と非リース型の金融サービスを組み合わせた『アセットファイナンス会社』への転換だった。FY14(2015年3月期)のセグメント開示で[10]、同社は事業を『カスタマーファイナンス』と『アセットファイナンス』の2区分に整理した。前者は機械・器具備品等のファイナンスリース、割賦販売、金銭貸付を統合した国内設備金融で、契約実行高1兆777億円・営業資産残高2兆6,219億円[11]。後者はオペレーティングリース、不動産関連ファイナンス、営業有価証券運用を統合した投資型ビジネスで、契約実行高3,846億円・営業資産残高1兆9,189億円[12]。後者の比率を引き上げ、リース料収入だけでなく持分投資の損益も収益源とする構造への移行を意図した。
2010年代前半に同社が踏み込んだ最大の領域は航空機リースで、世界各国の航空会社向けに機材を貸し出すクロスボーダー案件を本格化させた。航空機リースは1機あたり数十億〜数百億円の案件で、リース期間が10〜20年に及び、機材の残存価値とテナント信用力の双方を見極める専門性が求められる。同社はJackson Square Aviation[13](米国の航空機リース会社)を2013年に買収し、続く2015年にはエンジンリースを手がけるEngine Lease Finance(アイルランド)の取得[14]にも踏み込んだ。これらの海外子会社を通じて、世界各国の航空会社向け長期リース契約とエンジン部品流通を組み合わせる『機体+エンジン』の事業構造を組み立てた。
FY15(2016年3月期)の連結売上高は8,258億円、経常利益926億円、当期純利益546億円、有利子負債残高は1兆8,840億円に達した。リース会社のバランスシートは『営業資産=有利子負債』というキャッシュフロー商品の性格上、収益拡大とともに有利子負債も膨らむ。同社の総資産は2012年3月期の3.7兆円から2020年3月期の6.3兆円へ約1.7倍に膨張し、自己資本比率は10%台前半で推移した。この資本構成は銀行・信託系列リース会社に共通する特徴で、低コストの資金調達力(三菱UFJ銀行・三菱信託銀行の信用補完)がレバレッジを支える構造にある。事業の重心が海外・航空・不動産へ移るほど、為替・金利・市況の変動が業績に影響する度合いも増した。
2016年8月、三菱UFJリースは日立キャピタル[15]株式会社と資本業務提携を締結した。日立キャピタルは日立製作所系列のリース・ファイナンス会社で[16]、日立グループの製品販売金融を主軸に、英国・欧州での海外事業を展開していた。三菱UFJリースが筆頭株主クラスとして日立キャピタル株式を取得し、両社は事業面でも共同案件の組成、海外拠点の相互活用、商品開発の連携を進めた。リース業界では2010年代半ば、独立系・銀行系・メーカー系の3つの系統が併存していたが、市場縮小局面のなかで業界再編が水面下で進行しており、両社の提携も将来の経営統合を視野に入れた布石だった。
提携の経済合理性は、両社の事業領域が補完関係にあった点にある。三菱UFJリースは三菱グループ顧客と航空機リース・不動産投資に強みを持ち、日立キャピタルは日立グループ販売金融と英国・欧州の海外事業に強みを持っていた。地理的にも顧客的にも重複が少なく、合併すれば日本国内では業界トップクラス、海外では主要先進国全域に拠点を持つグローバルなリース・ファイナンス会社が誕生する構図だった。FY16(2017年3月期)から両社の連携案件は順次拡大し、FY19(2020年3月期)には資本業務提携から経営統合へ進む方向で具体的な検討が進められた。当時の社長は柳井隆博氏(2017年6月就任、三菱銀行出身)で[17]、合併に向けた折衝の主導役を担った。
FY19(2020年3月期)のセグメント開示で、三菱UFJリースは事業区分を『カスタマービジネス』『ヘルスケア』『ロジスティクス』『不動産』『環境・エネルギー』『航空』『インフラ・企業投資』の7区分[18]へ再編した。リース会社の事業区分としては異例の多領域構成で、ファイナンス事業の枠を超えて『アセット運用会社』『インフラ投資会社』としての性格を強める方向性を示した。航空セグメントは売上1,354億円・営業資産1.16兆円、不動産セグメントは売上1,365億円・営業資産9,801億円と、規模面でも国内設備リースに並ぶ事業の柱に育っていた。FY19の連結売上高は9,237億円、経常利益943億円。リース業界が成熟・縮小するなかで、同社は事業の重心を国内設備リースから多角的なアセット運用へ移すことで成長を継続した。
2021年4月1日、三菱UFJリースは日立キャピタルと合併し、商号[19]を三菱HCキャピタル株式会社へ変更した。合併方式は三菱UFJリースを存続会社とする吸収合併で、日立キャピタル株主には三菱UFJリース株式が割り当てられた。『HC』は『Hitachi Capital』の頭文字を取ったもので、日立側のブランド資産を社名に残した。合併によって新会社の連結売上高はFY21(2022年3月期)に1兆7,655億円と前期9,476億円のほぼ倍に拡大、総資産は10.3兆円(前期6.0兆円)、自己資本は1.31兆円(前期8,053億円)へ膨張した。契約実行高ベースの業界順位はオリックスに次ぐ2位、銀行系リース会社としては国内最大手となった。
合併の事業設計は、両社の事業領域を『カスタマーソリューション』『モビリティ』『ロジスティクス』『不動産』『海外地域』『環境エネルギー』『航空』の7区分に再編する形で進んだ。最大事業のカスタマーソリューションは旧両社の国内設備金融・販売金融・不動産リースを統合したもので、FY21の売上1兆1,357億円・営業資産3.34兆円を占めた。海外地域セグメントは欧州・米州・中国・ASEAN地域のファイナンスソリューションを束ね、FY21に売上2,683億円・営業資産2.32兆円。航空は世界各国の航空会社向け機材リースとエンジン部品流通で売上1,565億円・営業資産1.36兆円。連結従業員数は前期3,284名から8,803名へ約2.7倍に拡大し、海外子会社の従業員を一体化した。
合併直後の2021年11月、新生・三菱HCキャピタルはCAI International, Inc.(米国の海上コンテナリース会社)の全株式を取得し、連結子会社化した[20]。買収対価は約1,400億円規模で[21]、コンテナリース大手7社の一角を占めるCAI買収によって、ロジスティクスセグメント(Beacon Intermodal Leasing+PNW Railcars+CAI)の営業資産は合併後半年で1兆円規模へ拡張した。合併と1,400億円規模の買収を半年で重ねる組織統合の難度は高かったが、柳井隆博社長は統合の進捗を『足し算から掛け算へ』と表現し[22]、統合効果を早期に数字へ表す姿勢を示した。FY21の経常利益は1,172億円、当期純利益994億円と過去最高水準に到達し、合併と買収の規模拡大が収益面でも数字となって現れた。
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|---|---|---|---|---|
| 東京・大阪日立家庭電器月賦販売を設立 | ★ | |||
| 日立リースを設立 | ★ | |||
| 1971〜2006年三菱グループ16社の共同出資で始まった金融子会社 | ダイヤモンドリースを設立 | ★ | ||
| 初の海外子会社を設立 | ★ | |||
| 子会社(後の日立キャピタル(UK)PLC)を設立 | ★ | |||
| ダイヤモンドリースが金融業務に参入 | ★ | |||
| 東京証券取引所市場第二部に上場 | ★ | |||
| ダイヤモンドリースが不動産業に参入 | ★ | |||
| 東京証券取引所市場第一部に上場 | ★ | |||
| 菱信リースと合併 | ★ | |||
| 小幡尚孝 | 日立クレジットが日立リースを吸収合併し商号を日立キャピタルに変更 | ★ | ||
| 2007〜2020年三菱UFJリース時代の海外・航空シフト | 小幡尚孝 | UFJセントラルリースとの合併と三菱UFJリースの発足 2006年10月19日、三菱UFJフィナンシャル・グループの持分法適用関連会社であるダイヤモンドリースとUFJセントラルリースが、2007年4月1日を合併期日とする基本合意書を締結したと発表した。ダイヤモンドリースを存続会社とする吸収合併で、新会社の商号は三菱UFJリースとなった。 詳細を読む | ★★★ | |
| 小幡尚孝 | 名古屋証券取引所市場第一部に上場 | ★ | ||
| 白石正 | Jackson Square Aviation の買収と航空機リースの本格化 2012年10月4日、三菱UFJリースは取締役会でJSA International Holdings, L.P.の全出資持分の取得を決議し、持分譲渡契約を締結した。取得価額は約1,000億円で、傘下のJackson Square Aviation, LLC などを通じてグループ全体で約70機の航空機を保有する会社を完全子会社化する内容である。取得は2013年1月11日に完了した。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 柳井隆博 | 日立キャピタルとの資本業務提携 2016年5月13日、三菱UFJリースは日立キャピタル、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱東京UFJ銀行、日立製作所と業務提携を行うことで合意した。日立製作所が保有する日立キャピタル株式の一部を三菱UFJフィナンシャル・グループと三菱UFJリースが取得し、日立キャピタルは日立の連結子会社から持分法適用会社へ移った。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 柳井隆博 | ジャパン・インフラストラクチャー・イニシアティブを設立 | ★ | ||
| 柳井隆博 | 三菱UFJリースと日立キャピタルが合併による経営統合契約・合併契約を締結 | ★★ | ||
| 2021〜2025年三菱HCキャピタルとしてリース業の枠を超える | 柳井隆博 | 三菱UFJリースが日立キャピタルと合併し商号を三菱HCキャピタルに変更 | ★★ | |
| 柳井隆博 | CAI International, Inc.を子会社化 | ★★ | ||
| 久井大樹 | 名古屋証券取引所を上場廃止 | ★ |
免責事項およびポリシー
事実根拠:出所(三菱HCキャピタル)