米JSAの買収(2012年・三菱HCキャピタルの決断)

更新:
論点航空機リースを買収で本格化するか
三菱HCキャピタル:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
Jackson Square Aviation の買収と航空機リースの本格化

何をなぜ決めたか:Jackson Square Aviation の買収と航空機リースの本格化

概要

2012年10月4日、三菱UFJリースは取締役会でJSA International Holdings, L.P.の全出資持分の取得を決議し、持分譲渡契約を締結した。傘下のJackson Square Aviation, LLC などを通じてグループ全体で約70機の航空機を保有する大手航空機リース会社の全株式を、現金105,344百万円で取得する内容である。取得は2013年1月11日に完了し、取得原価107,192百万円に対して40,784百万円ののれんが生じた。

背景

中期経営計画Vision2013で、国内トップグループの総合ファイナンスカンパニーから、グローバルベースで広範に事業展開するアジアを代表する総合ファイナンスカンパニーへの転換を掲げていた。柔軟性と機動性を活かせるアセットファイナンスでは、オペレーティングリースや中古機器売買など、モノが持つ潜在価値や流通性に着目したアプローチを取り、航空機・船舶・コンテナ・貨車といったグローバル市場で高い流通性と価値が見いだせる資産の拡大を進めていた。航空機については、業界に精通した人材の積極登用と営業拠点の開設で体制を強化しつつあった。

内容

取得原価107,192百万円は、現金対価105,344百万円にアドバイザリー費用等1,848百万円を加えた金額である。企業結合日は2013年1月11日だが、みなし取得日を2013年1月1日とし、2013年3月期の連結財務諸表にはJSAの貸借対照表だけが反映され、業績は含まれていない。受け入れた資産は286,467百万円、引き受けた負債は212,916百万円で、連結開始時の有形固定資産272,408百万円がアセットファイナンス事業に加わった。期首に完了していたと仮定した通期換算の影響は、売上高26,814百万円・経常利益4,552百万円である。

含意

航空機はその後の主力事業になった。アセットファイナンス事業の売上高は2013年3月期の139,816百万円から2018年3月期の278,566百万円へ、セグメント利益は21,422百万円から50,453百万円へ伸びている。一方で新型コロナウイルス感染症の影響を受けた2021年3月期には、JSAが保有する航空機に1,691百万円、航空セグメントの賃貸資産に2,578百万円の減損損失を売上原価へ計上し、航空セグメントのセグメント利益は前期の24,932百万円から2,807百万円まで減少した。

いつ何が起きたか11件
考察:値札のついた時間
考察

考察:値札のついた時間

この買収で三菱UFJリースが獲得したのは、約70機の機体そのものよりも、機材の残価を読み、世界の航空会社と交渉し、売り時を決める人と関係の束であった。受け入れた資産286,467百万円から負債212,916百万円を差し引いた正味は73,551百万円で、107,192百万円の取得原価との差40,784百万円がのれんになっている。有価証券報告書はその発生原因を将来の超過収益力と書き、20年で均等に償却すると定めた。国内でその能力を一から育てれば10年はかかる。差額の値札は、その時間に対して付けられている。組成3年目の若い運用体を、立ち上げの赤字期を越えた直後に資金力のある会社が引き取るという取引の形も、それをよく表している。

もっとも、買った時間の使い方までが値札に含まれていたわけではなかった。アセットファイナンス事業の売上高は5期で倍になり、セグメント利益は21,422百万円から50,453百万円へ伸びた。ところが同じ資産は、航空需要が止まればそのまま残価の下振れに変わる。2021年3月期にJSA保有機へ1,691百万円、航空セグメントの賃貸資産へ2,578百万円の減損が立ち、翌期の減損は3,550百万円へ増加した。航空セグメントのセグメント利益は24,932百万円から2,807百万円へ減少している。流通性の高い資産へ移ることは、国内の設備リースが抱えていた信用リスクを、機材の残価と世界の航空需要に置き換える選択でもあった。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

三菱HCキャピタル:のれんの未償却残高と連結総資産の推移

のれん(百万円)
三菱HCキャピタル:のれんの未償却残高と連結総資産の推移
(百万円)のれん総資産備考
2008年3月期52,7333,965,891第37期。合併で生じたのれん42,713百万円が加わった期
2009年3月期49,7403,909,077
2010年3月期46,7473,885,161
2011年3月期43,4163,721,136
2012年3月期40,4983,682,299
2013年3月期78,3644,177,784第42期。JSAののれん40,784百万円が加わり、総資産は4,955億円増加した
2014年3月期86,8394,497,502第43期。企業結合等関係は該当事項なしで、暫定処理の確定もない
2015年3月期94,4975,035,676Beacon Intermodal Leasingの連結でのれん2,008百万円が加わった
2016年3月期79,9555,121,253
2017年3月期75,7855,388,844
2018年3月期71,2995,552,712第47期。新たな企業結合がなく、合併とJSAののれんの償却だけが進んだ
出所:三菱UFJリース 有価証券報告書 第42期・第44期・第47期・第49期【主要な経営指標等の推移】【連結貸借対照表】
出所:三菱UFJリース 有価証券報告書 第42期・第44期・第47期・第49期【主要な経営指標等の推移】【連結貸借対照表】

三菱HCキャピタル:アセットファイナンス事業の売上高とセグメント利益

売上高(百万円)セグメント利益(百万円)
三菱HCキャピタル:アセットファイナンス事業の売上高とセグメント利益
(百万円)売上高セグメント利益セグメント資産備考
2011年3月期134,68322,0631,234,628第40期からカスタマーファイナンスとアセットファイナンスの2区分へ
2012年3月期152,28617,7371,150,441
2013年3月期139,81621,4221,493,042JSAの貸借対照表のみ連結。セグメント資産は前期比3,426億円増
2014年3月期166,96434,3721,586,234JSAの業績が通期で入った最初の期。セグメント利益は前期比60.5%増
2015年3月期191,63737,9962,079,853エンジンリースとコンテナリースの取得でセグメント資産が4,936億円増
2016年3月期256,79457,4112,117,615
2017年3月期250,76746,7802,294,966
2018年3月期278,56650,4532,363,522第47期。第48期を最後にこの区分はやめ、航空を独立させた7区分へ
出所:三菱UFJリース 有価証券報告書 第42期〜第48期【セグメント情報】
出所:三菱UFJリース 有価証券報告書 第42期〜第48期【セグメント情報】

買収の条件

買収の条件
科目概要備考
被取得企業の名称JSA International Holdings, L.P.英国領ケイマン諸島。子会社108社のうち22社が特定子会社にあたる
被取得企業の事業の内容航空機リース事業汎用性の高いナローボディーを中心に機齢の若い航空機を約70機保有
取締役会決議と契約締結2012年10月4日同日に持分譲渡契約を締結。第42期の経営上の重要な契約等に記載された
企業結合日2013年1月11日みなし取得日は2013年1月1日。決議から取得完了まで3か月余り
企業結合の法的形式出資持分取得結合後企業の名称に変更はない
取得した議決権比率100%現金を対価として議決権の過半数を取得したため取得企業と決定した
取得原価107,192百万円現金105,344百万円と、アドバイザリー費用等1,848百万円の合計
受け入れた資産の額286,467百万円流動資産10,694百万円、固定資産275,772百万円
引き受けた負債の額212,916百万円流動負債21,234百万円、固定負債191,682百万円
発生したのれん40,784百万円今後の事業展開で期待される超過収益力。20年間にわたる均等償却
暫定的な会計処理の確定第43期に該当事項なし翌期の企業結合等関係は該当事項なしで、のれんの額は動いていない
連結財務諸表に含まれる業績貸借対照表のみ2012年12月31日現在の財務諸表を基礎とするため業績は含まれない
通期換算した業績への影響売上高 26,814百万円営業利益5,287百万円、経常利益4,552百万円、当期純利益2,046百万円
連結開始時の有形固定資産272,408百万円アセットファイナンス事業の固定資産増加額には含めていない
出所:三菱UFJリース 有価証券報告書 第42期(2013年3月期)【経営上の重要な契約等】【企業結合等関係】、第43期(2014年3月期)【企業結合等関係】
出所:三菱UFJリース 有価証券報告書 第42期(2013年3月期)【経営上の重要な契約等】【企業結合等関係】、第43期(2014年3月期)【企業結合等関係】
参考文献

参考文献

参考
  • 三菱UFJリース ニュースリリース 2012年9月26日「一部報道に関する件」
  • 三菱UFJリース ニュースリリース 2012年10月4日「子会社の異動(出資持分取得)に関するお知らせ」
  • 三菱UFJリース ニュースリリース 2013年1月15日「航空機リース会社JSA International Holdings, L.P.の出資持分取得完了について」
  • 三菱UFJリース 有価証券報告書(2015年3月期・沿革)
  • 三菱HCキャピタル 統合報告書2025
  • 三菱UFJリース 有価証券報告書「第42期(2013年3月期)【経営上の重要な契約等】【企業結合等関係】【セグメント情報】」
  • 三菱UFJリース 有価証券報告書「第43期(2014年3月期)【企業結合等関係】【連結貸借対照表】」
  • 三菱UFJリース 有価証券報告書「第44期(2015年3月期)【連結キャッシュ・フロー計算書関係】」
  • 三菱UFJリース 有価証券報告書「第49期(2020年3月期)【主要な経営指標等の推移】【セグメント情報】」
  • 三菱HCキャピタル 有価証券報告書「第50期(2021年3月期)・第51期(2022年3月期)【重要な会計上の見積り】【セグメント情報】」

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