豊田通商 仏CFAOの買収 買収による現地流通網の獲得を通じたアフリカ市場への進出

更新:

時期 2012年12月
当時の社長 加留部淳
論点 アフリカ流通網の獲得と差異化
何をなぜ決めたか
概要

2012年12月5日、豊田通商は現金を対価とする公開買付けによりアフリカ流通大手の仏CFAO S.A.を子会社化した。企業結合日の直前に29.80%を保有しており、同日に68.01%を追加取得して議決権比率は97.81%となった。取得原価は2,420億円、のれんは暫定で1,965億円が立った。加留部淳社長が主導した。

背景

有価証券報告書は結合の理由として、成長著しいアフリカを重点地域のひとつと位置付けモビリティ分野で事業展開を進めてきたこと、豊田通商が南・東アフリカ25カ国でトヨタ車等のネットワークを持つのに対しCFAOは北・西アフリカ32カ国で20ブランド以上の自動車代理店・販売店を展開していること、CFAOのもうひとつの柱である医薬品事業がアフリカNo.1のシェアを持つことを挙げている。

内容

CFAOの事業は自動車の輸出入と販売・メンテナンス、医薬品卸、ITサポート、レンタル、建機・エレベータの販売、飲料などで、豊田通商は資産2,781億円・負債2,071億円を受け入れた。段階取得に係る差益75億円を計上し、連結従業員は14,491人増えて48,336人となった。みなし取得日が2012年12月31日のため、2013年3月期の連結損益計算書に業績は入っていない。

含意

株式取得によりアフリカでの展開国は全54カ国中48カ国となった。2014年3月期に取得原価の配分が確定し、のれんは871億円を無形固定資産へ振り替えて1,414億円へ修正された。2016年12月に残る非支配持分を53億円で取得して完全子会社化し、Euronext Parisの上場を廃止。2017年4月にはアフリカ本部を新設している。

いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
筆者の見解

資源商社と違う道を選ぶということ

この取引で何を買ったのかは、取得原価の内訳よりも、のれんの大きさに表れている。受け入れた資産2,781億円から負債2,071億円を引いた差は710億円にすぎず、払った2,420億円との開きが暫定で1,965億円ののれんになった。つまり豊田通商が代価を払った相手は、CFAOが持つ在庫や設備ではなく、北・西アフリカ32カ国に張られた代理店と医薬品卸の網そのものであった。資源やインフラで各社が競い合う総合商社の世界にあって、暮らしに近い商材をアフリカでさばく土俵を選んだ判断であり、その網は資金を投じてすぐ手に入るものではない。

もっとも、翌期の配分確定は、その網に会計上の名前と寿命を与えた。のれんのうち871億円は顧客関連資産と商標権へ振り替えられ、前者は11年、後者は15年で償却される。1世紀以上かけて築いた関係が、十数年で費用へ落ちる資産として測り直されたわけである。買った網が償却の期限より長く働くかどうかは、その後の数字が答えている。アフリカ本部の売上収益は新設初年度の2018年3月期に5,789億円、当期利益は33億円の赤字であったが、2025年3月期には売上収益1兆6,494億円、当期利益795億円に達した。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
買収の条件

買収の条件

科目 概要 備考
被取得企業 CFAO S.A. 本店はフランス・セーヴル。2017年2月27日にCFAO SASへ商号変更した
被取得企業の事業の内容 自動車輸出入、販売・メンテナンス、医薬品卸 ほかにITサポート、レンタル、建機・エレベータ販売・メンテナンス、飲料
企業結合の法的形式 現金を対価とする株式取得(公開買付け) 取得企業を決定した根拠も、現金を対価として株式を取得したこと
企業結合日 2012年12月5日 みなし取得日は2012年12月31日
連結に含めた被取得企業の業績 2013年3月期には含まれない みなし取得日が期末のため、当期の連結損益計算書に業績は入っていない
取得した議決権比率 97.81% 企業結合日直前は29.80%。同日に68.01%を追加取得した
結合直前に保有していた株式の時価 73,664百万円 29.80%分の企業結合日における時価。対価の一部を構成する
追加取得に伴い支出した現金 166,381百万円 公開買付けにより68.01%を現金で取得した
取得に直接要した費用 2,026百万円 アドバイザリー費用等
取得原価 242,071百万円 結合直前保有株の時価と追加取得の現金、取得関連費用の合計
段階取得に係る差益 7,499百万円 取得原価と取得に至った取引ごとの取得原価の合計額との差額
のれん(暫定) 196,544百万円 取得原価の配分が未了で暫定算定。償却は10年間の均等償却
のれん(確定) 141,490百万円 2014年3月期に55,054百万円を修正。うち87,179は無形固定資産へ配分
無形固定資産への配分額 87,179百万円 顧客関連資産81,639百万円(11年)と商標権5,540百万円(15年)
受け入れた資産合計 278,157百万円 流動資産222,177百万円、固定資産55,979百万円
引き受けた負債合計 207,173百万円 流動負債184,848百万円、固定負債22,324百万円
株式取得による支出(純額) 148,742百万円 CFAO他の取得価額173,648から受け入れた現金24,906を控除した額
通期換算した売上高の増加 367,922百万円 期首に結合したと仮定した概算額。監査証明を受けていない
通期換算した純損益の影響 △8,211百万円 同じ概算で営業利益は9,161百万円。監査証明を受けていない
完全子会社化 2016年12月 議決権比率97.8%から100.0%へ。Euronext Parisの上場を廃止した
完全子会社化の支払対価 5,395百万円 非支配持分の帳簿価額1,966百万円との差額3,429百万円は資本で処理
公開買付価格・買付期間 記載なし 買付価格、買付期間、応募株券数は有価証券報告書に記載がない

出所:豊田通商 有価証券報告書 第92期(2013年3月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】・第93期(2014年3月期)【企業結合等関係】・第96期(2017年3月期)【非支配持分との取引】

のれん残高と総資産の推移

豊田通商:のれん残高と総資産の推移

(百万円) のれん総資産 備考
2008年3月期 118,3572,603,206 2006年のトーメン吸収合併で生じたのれんを10年で均等償却していた
2009年3月期 103,4232,130,089
2010年3月期 90,2022,274,547
2011年3月期 74,9852,436,248
2012年3月期 78,0052,837,428
2013年3月期 256,9573,592,368 CFAOで196,544百万円を暫定計上し、のれんは前期の3.3倍になった
2014年3月期 202,8584,072,728 配分の確定でCFAOののれんは141,490百万円へ。87,179は無形固定資産へ
2015年3月期 170,6474,533,693
2016年3月期 135,9483,952,100 日本基準で開示した最後の期。翌期からIFRSで残高の連続性が切れる
2017年3月期 77,7304,096,843 IFRS適用初年度。うちCFAOに係るのれんは66,596百万円
2018年3月期 70,8284,310,043 うちCFAOに係るのれんは60,127百万円
のれん残高と総資産
総資産(百万円)のれん(百万円)

出所:豊田通商 有価証券報告書 第87期〜第96期(連結貸借対照表) / 豊田通商 有価証券報告書 第96期・第97期(連結財政状態計算書、のれん及び無形資産の注記)

従業員数の推移

豊田通商:従業員数の推移

(人) 連結従業員数提出会社の従業員数 備考
2008年3月期 26,1212,474
2009年3月期 27,9092,530
2010年3月期 29,8322,548
2011年3月期 31,0812,745
2012年3月期 33,8452,850
2013年3月期 48,3362,863 CFAOを連結の範囲に含めたことで前期末に比べ14,491人増えた
2014年3月期 50,4232,809
2015年3月期 53,2412,853
2016年3月期 58,3692,829
2017年3月期 57,9882,689
2018年3月期 56,8272,721

出所:豊田通商 有価証券報告書 第87期〜第97期(従業員の状況。就業人員数で、臨時従業員は含まない)

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参考文献
出典・参考
  • 豊田通商 有価証券報告書「第92期(2013年3月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】【従業員の状況】」
  • 豊田通商 有価証券報告書「第93期(2014年3月期)【企業結合等関係】」
  • 豊田通商 有価証券報告書「第96期(2017年3月期)【沿革】【のれん及び無形資産】【非支配持分との取引】」
  • 豊田通商 有価証券報告書「第87期〜第97期(連結貸借対照表、連結財政状態計算書、従業員の状況、セグメント情報)」
  • 豊田通商 有価証券報告書「第104期(2025年3月期)【セグメント情報】」

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