1969年5月、丸紅飯田(現・丸紅)、富士銀行[1](現・みずほ銀行)を中心とする芙蓉グループ6社を株主として、資本金1億円で芙蓉総合リース[2]が東京都千代田区大手町二丁目4番地(新大手町ビル)に設立された。芙蓉グループは旧富士銀行の融資先企業を中核とする企業集団で、1964年に発足した『芙蓉懇談会』を母体に三菱・三井・住友各グループと並ぶ六大企業集団のひとつとして昭和30年代から形成されてきた。芙蓉総合リースは、このグループの法人需要に応えるリース・割賦金融機関として、丸紅・富士銀行・日本鋼管・昭和電工などのグループ各社を主要顧客に据える事業構造を出発点に持った。
1960年代後半の日本では、米国式のリース手法が法人設備投資の新しい資金調達手段として広がり始めていた。製造業や流通業が高度成長期の旺盛な設備投資需要を抱える一方、銀行融資中心の資金繰りは設備の所有・減価償却・修繕費の負担を企業に残した。芙蓉総合リースは富士銀行系の信用と丸紅の商社ネットワークから営業導線を引き、機械設備・情報機器・事務機器のリースを軸に法人取引を伸ばした。1970年9月には大手町ビルに移転し[3]、1973年5月には業務代行子会社の千代田エンタープライズ[4](現・FGLグループ・ビジネスサービス)を設立して、グループ周辺機能の内製化にも踏み込んだ。
1980年代後半は、日本のリース業界全体が事業多角化の局面に入った時期である。1987年1月、芙蓉総合リースは芙蓉オートリースを設立して自動車リース専業の子会社[5]を立ち上げ、同月には横河電機との共同出資で横河レンタ・リース(持分法適用会社)を設立した[6]。事業会社との合弁による領域分業はこの時期の業界に共通する動きで、富士銀行系の汎用リース会社として法人取引基盤を広げる一方、特定分野は事業会社との合弁子会社に担わせる二段構えの事業構造が芙蓉総合リースで固まった。1988年9月には米国現地法人Fuyo General Lease(USA) Inc.を設立し[7]、北米の日系企業向けリースを開始した。
1990年代の日本のリース業界は、バブル崩壊後の不良債権問題と地価下落で経営環境が一変した。芙蓉総合リースの主要株主である富士銀行は不動産融資の不良債権処理に追われ、リース業界全体でも親銀行の与信枠に依存した成長モデルが揺らいだ。1993年11月、芙蓉総合リースは本社を千代田区神田三崎町(ニチレイビル)へ移転し[8]、業容拡張に対応する体制整備を進めた。1994年3月には芙蓉建機レンタル(現・アクア・アート[9])、1996年4月には芙蓉リース販売を設立し[10]、リース満了物件の再販・建機レンタル分野に手を広げた。物件売却益と中古物件再販という収益源は、後の2015年3月期(FY14)以降のセグメント開示でリース及び割賦事業の主柱として表れる構造の原型となる。
1999年7月、芙蓉総合リースはアイルランドにFGL Aircraft Ireland Limitedを設立し、航空機リース事業に参入した[11]。アイルランドは航空機リース会社の集積地で、税制・専門人材・取引ネットワークの面で世界最大のクラスター市場である。設立当初の事業規模は小さかったが、芙蓉総合リースが2010年代に航空機リースを長期重資産事業の柱に育てる基盤となった。同時期の1999年には、ニチイ学館との合弁で日本信用リース(後に2022年に吸収合併)を設立し[12]、医療・福祉機関向けリースの最初の事例も整えた。
2000年9月、第一勧業銀行・富士銀行・日本興業銀行の3[13]行が経営統合してみずほフィナンシャルグループが発足し、3行系列の事業会社の整理統合が業界横断で進んだ。みずほFG発足を受け、芙蓉総合リースは2001年4月に旧安田信託銀行系の安信リースを[14]、2002年4月に旧安田生命系の安田リースを相次いで吸収合併し[15]、芙蓉総合開発のリース金融事業部門も分割承継した。みずほ系芙蓉グループのリース機能を1社に集約する再編で、合併後の芙蓉総合リースは芙蓉系リース3社統合の受け皿となった。営業基盤と顧客接点の拡充が一気に進み、2006年3月期(FY05)の単体売上高は3,704億円、経常利益183億円という上場前の事業規模が形成された。
合併で営業基盤を拡張した芙蓉総合リースは、上場による独立性確保と資本市場からの資金調達多様化を経営課題に据えた。芙蓉総合リースのリース・割賦事業は、物件購入時に多額の借入が必要となる資産集約型ビジネスで、主要株主であるみずほ銀行からの借入だけでは資金調達手段が単一に偏る構造を抱えた。資本市場での社債発行や公募増資を通じて調達を多様化することが、業界中堅から上位への成長条件となった。1990年代後半までにオリックスが多角化先進企業として他社を引き離し、三菱UFJリース・日立キャピタル・東京リースなど競合各社も上場済みで、芙蓉総合リースは上場リース会社という業界標準から遅れていた。
2002年4月の安田リース合併後、芙蓉総合リースは新光証券を主幹事[16]に上場準備に入り、社内のコンプライアンス・開示体制・財務管理を上場基準に合わせる改革を続けた。リース業界の標準的な会計慣行であるJGAAPベースでのリース債権・割賦債権の評価、関連会社・連結子会社のガバナンス整備、与信管理の高度化が並行して進んだ。1980年代後半から1990年代に多角化したグループ会社の再編も上場準備の一環で実施された。芙蓉総合リースは富士銀行系の銀行系リース会社という旧来の位置づけを残しつつ、市場規律に従う上場企業への移行を準備した。
2004年12月、芙蓉総合リースは東京証券取引所市場第一部に上場した。公募価格2,200円、上場日は12月7日で、上場時に資本金は1億2,500万円から105億円へ拡張された。[17][18][19]みずほ銀行・丸紅をはじめとする芙蓉グループ各社の安定株主構造は維持しつつ、流通株式の確保で機関投資家・個人投資家による株式保有が広がった。上場により銀行系リース会社という業界内の位置づけは形式上保ちつつ、株式市場からの資金調達と経営の透明化を備えた上場リース会社としての出発点を得た。創業から35年を経て[20]、芙蓉総合リースは芙蓉グループ内の事業会社から独立した上場金融サービス会社へと法人格の位置づけを移した。
2004年の上場直後、芙蓉総合リースの売上高は2006年3月期(FY05)の3,704億円、経常利益183億円から2008年3月期(FY07)には売上3,991億円・経常利益179億円とほぼ横ばいで推移した。上場で得た資金調達の自由度を活用し、芙蓉総合リースは2007年5月に日本抵当証券を追加取得して連結子会社化し[21]、不動産担保ローン・抵当証券事業を組み込んだ。リース・割賦に加えて不動産金融という第2の柱を持つことで、リース業界の収益構造(リース料収入+物件売却益)への一極集中を緩和する狙いがあった。
2008年4月、芙蓉総合リースはシャープファイナンス[22]株式会社の株式65%をシャープから312億円で取得し、連結子会社化[23]した。シャープファイナンスは事務機器・情報機器・医療機器など販売会社の商品の販売支援[24]を担うベンダーリース・割賦の専業会社で、家電量販店・OA機器販売店を顧客基盤に持っていた。芙蓉総合リースが主体としていた法人向け一括契約リースとは別領域のリテール・ベンダーファイナンス事業の取り込みであり、買収当時のリース業界では業容拡大を狙うM&Aとして注目された。シャープ側にとってはリース子会社の連結離脱とコア事業集中の意味があり、芙蓉側にとっては顧客接点の拡張という意味があった。
シャープファイナンスの取得は単体での収益寄与にとどまらず、ベンダーファイナンスというビジネスモデルそのものの取り込みでもあった。販売会社と組んだ商品販売連動型のファイナンスは、リース債権の質を販売店経由で確保しつつ営業の効率化を図る形態で、芙蓉総合リースが2010年代以降に進めるM&Aの基本パターンの一つとなった。2008年9月のリーマンショックで日本のリース業界全体が信用収縮に直面したが、FY08(2009年3月期)の連結売上高は3,723億円、経常利益174億円と微減にとどまり、シャープファイナンス連結化の効果と既存ポートフォリオの分散が下支えとなった。リース事業の景気耐性は、契約期間中のリース料収入が経済変動の影響を受けにくい構造によって保たれた。
2009年11月、佐藤隆氏が代表取締役社長に就任[25]した。佐藤隆社長は1977年に富士銀行に入行し、みずほコーポレート銀行常務執行役員を経て2009年5月に芙蓉総合リース副社長執行役員として入社[26]、半年後に社長に就任した経歴を持つ。リーマンショック直後の経営立て直しと、シャープファイナンス取得後のグループ統合を担う社長として迎えられた。佐藤隆社長は2014年6月3日の日刊工業新聞で、リース以外の比率を高めると題したインタビューに応じ、リース専業からの脱却・サービス事業拡張方針を経営の中心に据えた。
2011年10月、芙蓉総合リースは中国現地法人『芙蓉綜合融資租賃(中国)有限公司』[引用元]を設立し[27]、中国でのリース・融資租賃事業に進出した。1988年の米国法人、1999年のアイルランド法人に続く3か国目の本格的な海外拠点で、芙蓉総合リースの海外展開は北米・欧州・アジアの3極体制に近づいた。2011年3月期(FY10)の連結売上高は4,085億円、経常利益271億円と上場後の最高水準に到達し、海外と国内の両軸で事業規模が拡張する局面に入った。2012年4月には日本抵当証券を吸収合併し、不動産関連金融を本体[28]に取り込んだ。
2014年7月、芙蓉総合リースは英国のALM 2010 Limited(Fuyo Aviation Capital Europe Limitedに商号変更)の全株式を取得し[29]、その子会社Aircraft Leasing and Management Limitedを連結化した。ALM社は航空機リース期間中の機体管理・リース終了後の機体再販を専門とする会社[30]で、芙蓉総合リースが1999年にアイルランド法人を設立して以来の航空機リース事業に運用・再販ノウハウを組み込む位置づけだった。航空機は機体価格が1機数十億円から数百億円規模で、長期リース契約と機体管理・残価評価の高度な専門性が必要となる。芙蓉総合リースはALM買収で航空機リースの一気通貫体制を整え、2014年以降の重資産長期リース戦略の柱を備えた。
2015年3月期(FY14)から、芙蓉総合リースは事業セグメントを再編した。従来の『営業貸付』セグメントを『ファイナンス』に改称し、リース・割賦事業と並ぶ第2セグメントとして独立させた。2016年3月期(FY15)の連結売上高は4,938億円・経常利益292億円・親会社株主に帰属する当期純利益175億円で、リース及び割賦セグメントの外部売上は4,738億円(全体の96%)、ファイナンスは88億円(同2%)、その他は111億円(同2%)の構成だった。リース・割賦が96%という構成比で主柱を占める一方、ファイナンスとその他という非リース系の小規模セグメントを明示的に分離し、内部で育てる構造を会計上も整えた。
セグメント再編の背後には、リース業界全体の事業構造変化があった。会計基準の変更(2008年のリース会計基準改訂で借手側のオンバランス化が広がり)、IFRS 16の影響予告、金利低位環境下でのリース料収益率の縮小という業界共通の課題に対し、リース会社各社は単純なリース料収入から脱却し、不動産・航空機・船舶など重資産投資、ファンド出資・プロジェクトファイナンスなど投資金融、BPO・サブスクなど周辺サービスへ収益源を多様化する方向に動いた。2016年3月期(FY15)時点の芙蓉総合リースのファイナンスセグメント資産5,615億円という規模は、リース及び割賦の1兆4,496億円に比べれば小さいが、ファンド出資型投資・プロジェクトファイナンスへの傾斜の出発点となる枠組みを担った。
2016年3月期(FY15)時点で、芙蓉総合リースの大株主構成にはヒューリック13.93%(旧富士銀行系不動産会社)、明治安田生命7.47%、みずほ信託銀行(丸紅口)4.99%、損害保険ジャパン日本興亜[31]3.80%、アズビル3.30%、みずほ銀行3.00%が並んだ。芙蓉グループ系の安定株主構造が上場後10年を経ても維持され、リース業界の中ではみずほ系列を主たる顧客基盤とする中堅上位の事業構造に着地した。リース業界の売上ランキングではオリックス・三井住友ファイナンス&リース・東京センチュリー・三菱UFJリース(後の三菱HCキャピタル)に次ぐ第5位前後で、上場後10年の事業拡張は『業界中位の銀行系リース会社』という位置を強化した。次の経営課題は、リース・割賦という主柱に集中するセグメント構造を、ファイナンスと非リース系に再配分する10年計画として持ち上がった。
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|---|---|---|---|---|
| 1969〜2003年旧富士銀行系の芙蓉グループ総合リース会社として | 丸紅飯田と富士銀行を軸とする芙蓉グループ6社の共同出資による総合リース会社の設立 1969年5月、丸紅飯田(現・丸紅)を中心に、富士銀行(現・みずほ銀行)・安田信託銀行・安田火災・安田生命の金融機関4社と芙蓉開発を加えた芙蓉グループ6社が、資本金1億円で芙蓉総合リースを設立した。本社は東京都千代田区大手町二丁目4番地の新大手町ビルに置かれた。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 千代田エンタープライズを設立 | ★ | |||
| 芙蓉オートリースを設立 | ★ | |||
| 横河レンタ・リースを設立 | ★ | |||
| Fuyo General Lease(USA) Inc.を設立 | ★ | |||
| アイルランドにFGL Aircraft Ireland Limitedを設立 | ★ | |||
| 安信リースと合併 | ★★ | |||
| 安田リースと合併・芙蓉総合開発のリース金融事業を分割承継 | ★★ | |||
| 2004〜2015年上場後の海外拡張とリーマン後の収益基盤再構築 | 小倉利之 | 東京証券取引所市場第一部に上場 | ★ | |
| 小倉利之 | 日本抵当証券を子会社化 | ★ | ||
| 町田充 | シャープファイナンスの株式を65%取得し子会社化 | ★★ | ||
| 佐藤隆 | 佐藤隆氏が代表取締役社長に就任 | ★ | ||
| 佐藤隆 | 中国現地法人芙蓉綜合融資租賃(中国)有限公司を設立 | ★ | ||
| 佐藤隆 | 日本抵当証券を吸収合併 | ★ | ||
| 佐藤隆 | ALM 2010 Limited(Fuyo Aviation Capital Europe)の全株式を取得 | ★★ | ||
| 2016〜2024年辻田・織田両社長による非リース化とCSV経営への転換 | 辻田泰徳 | 辻田泰徳氏が代表取締役社長に就任 | ★ | |
| 辻田泰徳 | アクリーティブの株式を公開買付けで51%取得し子会社化 | ★★ | ||
| 辻田泰徳 | ジーアイ・HD株式の60%を取得し子会社化 | ★ | ||
| 辻田泰徳 | LNHD株式を100%取得し子会社化 | ★ | ||
| 辻田泰徳 | WorkVisionを買収し子会社化 | ★ | ||
| 織田寛明 | 織田寛明氏が代表取締役社長に就任 | ★ | ||
| 織田寛明 | 中期経営計画「Fuyo Shared Value 2026」を策定 | ★ | ||
| 織田寛明 | Pacific Rim Capital, Inc.を子会社化 | ★★ | ||
| 織田寛明 | CBHDの株式を100%取得し子会社化 | ★ |
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事実根拠:出所(芙蓉総合リース)