蘭ロベコの買収(2013年・オリックスの決断)

更新:
論点 資産運用事業へ海外買収で進出するか
オリックス:業績の推移
売上高(億円)親会社株主に帰属する当期純利益率(%)
2,551億円を投じた資産運用事業への本格進出

何をなぜ決めたか:2,551億円を投じた資産運用事業への本格進出

概要

2013年2月19日にオランダの協同組合系金融機関ラボバンクとの間で株式売買契約を締結し、同年7月1日にラボバンクが保有していた資産運用会社ロベコ(Robeco Groep N.V.)の普通株式の約90.01%を取得して連結子会社とした経営判断。株式の取得価額総額は2,551億円で、現金2,305億円と自己株式194億円で支払った。

背景

有価証券報告書はこの取得を、金融とそれに付随するサービスを融合させた新しいビジネスモデルを追求する戦略の一環として、グローバルな資産運用事業の拡大を目的としたものと説明している。取得の対象としたロベコは中堅規模のグローバルな資産運用会社で、全世界の機関投資家・個人投資家に向けて幅広い戦略のなかから投資手法の組み合わせを提供していた。

内容

対価の一部は自己株式13,902,900株の第三者割当による交付でまかない、1株あたりの価額は取得日の終値1,396円とした。2013年度から2015年度までのロベコの特定子会社の運用業績に応じた追加代金も約束し、その見積公正価値51億円を支払対価に含めた。取得により営業権1,310億円と識別可能な無形資産2,057億円を計上し、ラボバンクが残した約10%は2016年10月に追加取得して100%子会社としている。

いつ何が起きたか 6件
考察:危機後の攻めと、運用という軸
考察

考察:危機後の攻めと、運用という軸

この買収で取得したものの中身は、有価証券報告書の取得原価の配分によく表れている。2,551億円の取得価額に対し、受け入れた資産のうち識別できた無形資産が2,057億円、残差としての営業権が1,310億円であった。無形資産の内訳をみると、償却の対象とならないアセットマネジメント契約が1,526億円、商標権が181億円を占める。つまり支払った対価のほとんどは、建物や機械ではなく、顧客との運用契約とロベコという名前に対するものであったことになる。米国会計基準では営業権も耐用年数を確定できない無形資産も規則的に償却しないため、この買収の値打ちは毎期の減損テストを通じて問われ続ける構えとなった。

取り込んだ後の歩みは、海外事業部門の輪郭の変化に現れている。同部門のセグメント資産は2013年3月期の1兆2,115億円から取得の翌期には1兆9,721億円へ膨らみ、セグメント収益も2,025億円から4,162億円へ倍増した。営業権も792億円から2,736億円へと積み上がっている。もっとも、その後の海外事業部門の営業権はHoulihan Lokeyの持分法適用会社化などで上下しており、ロベコ由来の部分だけを取り出して成否を測れる開示にはなっていない。2016年10月に残る株式を買い取って完全子会社とし、2018年1月に社名をORIX Corporation Europe N.V.へ改めた一連の動きは、この会社を出口を探る投資先ではなく欧州の事業拠点として長期に保有する構えを示したものと思われる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

オリックス:営業権(のれん)の推移

海外事業部門の営業権(百万円)海外事業部門以外の営業権(百万円)
オリックス:営業権(のれん)の推移
(百万円) 海外事業部門の営業権営業権合計 備考
2009年3月期 48,22082,196
2010年3月期 44,68371,074
2011年3月期 69,39594,790
2012年3月期 71,24495,811
2013年3月期 79,085126,329 株式売買契約を締結した期。ロベコの取得は翌期
2014年3月期 273,643335,907 ロベコの営業権130,961を計上。当期の有報の公表値は暫定366,375
2015年3月期 248,374372,615 営業権の減損は海外事業部門で587、不動産事業部門のゴルフ事業で8,708
2016年3月期 183,679332,153 Houlihan Lokeyの持分法適用会社化で海外事業部門の営業権が57,153減少
2017年3月期 177,761341,178
2018年3月期 203,106368,625
2019年3月期 245,058430,679
出所:オリックス 有価証券報告書 第46〜57期(連結財務諸表注記「営業権およびその他の無形資産」・セグメントごとの営業権の推移)
出所:オリックス 有価証券報告書 第46〜57期(連結財務諸表注記「営業権およびその他の無形資産」・セグメントごとの営業権の推移)

オリックス:海外事業部門のセグメント損益と資産

セグメント収益(百万円)セグメント利益(百万円)
オリックス:海外事業部門のセグメント損益と資産
(百万円) セグメント収益セグメント利益セグメント資産 備考
2009年3月期 167,63520,066949,852
2010年3月期 185,90637,142860,815
2011年3月期 176,87545,639972,224
2012年3月期 187,24049,768986,762
2013年3月期 202,51652,7561,211,500
2014年3月期 416,22669,6881,972,138 7月1日からロベコを連結。ロベコの営業収益は111,166、継続事業からの利益は17,251
2015年3月期 561,893104,1432,178,895
2016年3月期 526,008142,8792,284,733
2017年3月期 458,912112,3122,454,200
2018年3月期 477,420106,6022,594,728
2019年3月期 490,730125,4443,138,928
出所:オリックス 有価証券報告書 第46〜57期(セグメント情報・海外事業部門)
出所:オリックス 有価証券報告書 第46〜57期(セグメント情報・海外事業部門)

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
被取得企業 Robeco Groep N.V. オランダ・ロッテルダム。中堅規模のグローバルな資産運用会社
売り手 ラボバンク オランダ・ユトレヒトに本社を置く協同組合系の金融機関
取得した株式の割合 発行済株式総数の約90.01% 2016年10月に残る株式を追加取得し100%子会社とした
株式の取得日 2013年7月1日 株式売買契約の締結は2013年2月19日
取得価額総額 255,163百万円 2014年3月期の有価証券報告書では255,900百万円。翌期に確定した
対価の内訳 現金230,579百万円・自己株式19,408百万円 自己株式13,902,900株を第三者割当で交付。1株1,396円で算定した
条件付対価 見積公正価値5,176百万円 2013年度から2015年度の特定子会社の運用業績に応じた追加代金
取得関連費用 2,039百万円 販売費および一般管理費に計上した
受け入れた資産・負債 資産441,785百万円・負債158,854百万円 非支配持分は27,768百万円。差引の純額が取得価額総額に一致する
営業権(のれん) 130,961百万円 暫定計上額131,780百万円を翌期第1四半期に確定。米国基準のため償却しない
識別可能な無形資産 205,730百万円 うちアセットマネジメント契約152,680と商標権18,115は耐用年数を確定できない
企業結合を行った主な理由 グローバルな資産運用事業の拡大 金融とそれに付随するサービスを融合させた新しいビジネスモデル追求の一環
取得の年度の業績寄与 営業収益111,166百万円 2014年3月期の連結損益計算書に計上した継続事業からの利益は17,251百万円
出所:オリックス 有価証券報告書 第51期(2014年3月期)・第52期(2015年3月期)連結財務諸表注記「買収」
出所:オリックス 有価証券報告書 第51期(2014年3月期)・第52期(2015年3月期)連結財務諸表注記「買収」
参考文献

参考文献

参考
  • オリックス株式会社 ニュースリリース 2013年2月19日「Robeco Groep N.V. 株式取得に関する契約締結について」(https://www.orix.co.jp/grp/pdf/newsroom/newsrelease/130219_ORIXJ2.pdf)
  • オリックス株式会社 ニュースリリース 2013年7月1日「Robeco Groep N.V. 株式取得の完了について」(https://www.orix.co.jp/grp/pdf/newsroom/newsrelease/130701_ORIXJ2.pdf)
  • オリックス 有価証券報告書 第50期(2013年3月期)・第51期(2014年3月期)・第52期(2015年3月期)・第54期(2017年3月期)・第55期(2018年3月期)
  • オリックス 有価証券報告書「第51期(2014年3月期)連結財務諸表注記「買収」」
  • オリックス 有価証券報告書「第52期(2015年3月期)連結財務諸表注記「買収」」
  • オリックス 有価証券報告書「第54期(2017年3月期)連結財務諸表注記「買収」」
  • オリックス 有価証券報告書「第55期(2018年3月期)【関係会社の状況】」
  • オリックス 有価証券報告書「第46〜57期 連結財務諸表注記「営業権およびその他の無形資産」「セグメント情報」」
  • オリックス 有価証券報告書「第50期(2013年3月期)【主要な経営指標等の推移】」

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