リース・融資から自己資金の事業投資への業態転換
低金利で本業が稼げなくなったリースの草分けは、なぜ融資(デット)を離れ資本を入れる事業投資会社へ転じたか
更新:
- 概要
- リーマンショック後、オリックスは借り入れで利益を膨らませる融資(デット)中心の商売から、自己資金を投じてリターンを狙うエクイティ型の事業投資へ大きく転じた。旅館やホテルの運営、中堅企業への出資まで幅を広げ、リースの草分けが「事業投資会社」へと業態そのものを組み替えた経営判断。
- 背景
- 超低金利の長期化でリースの利幅は0.5%まで縮み、本業では利益が伸びなくなっていた。加えてリーマンショックで過剰レバレッジと不動産偏重の危うさが露呈し、借り入れを膨らませて稼ぐ従来路線は閉ざされた。限られた資金で利益を伸ばす新しい稼ぎ方が求められていた。
- 内容
- 不動産関連資産を圧縮して財務を身軽にし、レバレッジを引き下げたうえで、事業承継やカーブアウト案件を中心に中堅企業へ出資する事業投資部門を育てた。買収先を自社の戦略に縛らず、手持ち資金で回収期限を柔軟に決めるPEファンドとは異なる投資を重ねた。旅館・水族館などの施設運営にも進出した。
- 含意
- 2017年3月期には最終利益が3期連続で最高を更新し、リースから上がる利益は全体の約2割まで下がった。総資産利益率は他の大手リース各社を上回り、オリックスは「何の会社か一言で説明しにくい」多角的な事業投資会社として、2度目の繁栄期を迎えた。
筆者見解
この転換の要点は、稼ぎ方を金利差から投資リターンへ移したことと、免許や設備という「基盤」を持たない身軽さを弱みでなく強みと読み替えたことにあったとみることができる。手持ち資金で回収期限に縛られずに投資できる立ち位置は、借入依存のファンドとは異なる時間軸を同社に与えた。リーマンショックで負った傷が、逆に過剰レバレッジと決別する契機になった点も見落とせない。
一方で、事業投資会社という姿は評価の物差しを難しくする面もある。何の会社かを一言で言えないほど領域が広がると、個々の投資の巧拙は全体の最高益に埋もれやすい。低金利という追い風のもとで積み上げた投資が、金利上昇や市況の反転にどこまで耐えるかは、なお見届ける段階にあるとみられる。祖業を薄めてまで得た多角性が、次の危機で強みとして働くかどうかが問われていく。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
超低金利で稼げなくなったリース本業
オリックスは1964年にオリエント・リースとして生まれた国内リースの草分けで、物件を貸して調達金利と貸出金利の差で稼ぐのが長く本業であった。ところが超低金利が常態化すると、この利幅は0.5%まで縮んだ。融資残高のわずか1%が焦げ付くだけで稼ぎが飛ぶ薄さで、リースだけでは利益が伸びない構造がはっきりしていた。井上亮社長はリースを、収益源というより顧客との接点を持つための事業と割り切っていた[1]。
リーマンショックが閉ざした過剰レバレッジの道
もう一つの契機はリーマンショックであった。オリックスは借り入れを膨らませて利益をたたき出す高レバレッジ経営と、不動産への傾斜が裏目に出て、各種の融資を含む不動産関連資産はショック直前の2.7兆円台に達していた。金融危機で当期純利益は2009年3月期に377億円まで落ち込み、過剰レバレッジで稼ぐ従来路線は閉ざされた。限られた資金で利益を伸ばす別の稼ぎ方を、危機は同社に突きつけた[2][3]。
決断
デットからエクイティへの舵切りと財務の作り替え
危機を経て、オリックスは融資などのデット商売から、リスクは高いがリターンの大きいエクイティ投資へ大胆に転じた。不動産関連資産を圧縮し、株主資本に対する借入債務の倍率であるレバレッジは、リーマン当時の4倍から1.6倍まで下げた。負債を長期化して流動性を厚く確保し、身軽になった財務を土台に、いつでも投資へ動ける態勢を整えた。守りを固めたうえで攻めに転じる二段構えであった[4]。
転換を思想として支えたのは、宮内義彦会長・グループCEOの「ベースがないから変身できる」という発想であった。免許に守られた金融機関や線路を持つ鉄道と違い、オリックスには縛られる基盤がない。それゆえデットからエクイティへ、さらに金融を離れた運営事業まで手掛けても構わないとした。祖業の看板に固執せず、稼げる領域へ主力を移していく身のこなしが、この転換の底流にあった[5]。
PEファンドとは違う自己資金の事業投資
育てたのが事業投資部門であった。多額の借金を用い回収期限が決まったPEファンドと異なり、オリックスは手持ちの資金で投資するため回収期限を柔軟に決められた。買収先を自社の戦略チェーンに位置づける必要もなく、投資先の成長そのものを目指せた。狙いはニッチで強みを持つ中堅企業で、2012年以降は事業承継やカーブアウト案件を中心に酒販から動物用医薬品まで17社へ出資し、そのうち損失を出した失敗案件はないとされた。2014年3月期には営業収益が前期の1兆524億円から1兆3752億円へ伸び、転換は数字にも表れ始めた[6][7][8]。
結果
高ROA経営と2度目の繁栄
転換は数年で実を結んだ。2017年3月期の最終利益は2732億円と3期連続で最高を更新し、リーマンショックの不動産損失を乗り越えた同社は2度目の繁栄期に入った。利益で見るとリースから上がる分は全体の約2割に過ぎず、事業投資部門やリテール部門が利益を牽引した。総資産利益率は大手リース各社の1%前後に対し2%台半ばと際立ち、後ろ盾となる銀行を持たないまま高いリターンを稼いだ[9][10]。
事業投資会社としての拡張と次の一手
リースの草分けは、一言では説明しにくい多角的な事業投資会社へと姿を変えた。生命保険と銀行のリテール事業に加え、旅館・ホテルなどの施設運営、環境エネルギー、海外の企業投資へと領域を広げ、2019年には米MGMと組み総事業費1.3兆円規模の大阪のIR構想にも乗り出した。井上社長は、金利がいずれ上がる事態に備えファイナンスの機能は残すとしつつ、リスクを取る事業投資を増やすほかに活路はないと語った[11]。
- 週刊東洋経済 2014年4月11日号「本業消失 勝ち残る経営 オリックス 旅館運営にまで進化『付け足し』変身経営」
- 週刊東洋経済 2017年5月27日号「リース反攻 オリックス『高ROA』経営のヒミツ」
- 週刊東洋経済 2017年12月30日号「2018年大予測 ビジネス オリックス 社長 井上亮 リーマンショック前に状況がよく似ている」
- 週刊東洋経済 2019年12月28日号「迫られる業態の大転換 リース オリックス 社長 井上亮 本業では稼げず事業投資に活路」
- オリックス 有価証券報告書(2009年3月期・連結)
- オリックス 有価証券報告書(2014年3月期・連結)
- オリックス 有価証券報告書(2017年3月期・連結)