米Aircastleの買収(2019年・みずほリースの決断)

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論点海外買収を単独でなく共同で行うか
みずほリース:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
単独ではなく丸紅と組んだ共同買収と、議決権25%の取得

何をなぜ決めたか:単独ではなく丸紅と組んだ共同買収と、議決権25%の取得

概要

2019年11月6日、興銀リースから商号を変更したばかりのみずほリースは、取締役会で米国の航空機リース会社Aircastle Limitedの全株式を丸紅と共同で取得することを決議し、同日に契約を締結した。2020年3月24日に関係当局の許認可を得て取引条件が充足し、27日に取得が完了している。みずほリースが握ったのは議決権の25%で、全額が子会社を通じた間接所有であった。2016年に合弁の相手として組んだ会社を、4年後に丸ごと買い取った取引である。

背景

みずほリースは2016年2月にAircastleとの合弁でIBJ Air Leasing Limitedを、同年8月にIBJ Air Leasing (US) Corp.を設立し、航空機オペレーティング・リースへ参入していた。2020年3月期の有価証券報告書は、中長期的な市場成長が見込まれる同分野で事業基盤を拡大させていくために高度なノウハウ・機能を持つプラットフォームが必要であるとの認識のもと持分を取得した、と書いている。相手方には丸紅が28.8%の株主として先に入っており、2019年3月にはエムジーリースの株式取得で丸紅との合弁関係が一段深まっていた。

内容

取得は二段の持株構造を通した。丸紅とみずほリースの子会社が新会社MM Air Limitedを共同で設立し、丸紅とMM AirがAircastle株式をそれぞれ50%保有する形をとっている。みずほリースの議決権所有割合は25.00%で、全額が間接所有である。買付価格は1株あたり32米ドル、丸紅側の取得対価はMM Air経由分を含め約1,127百万米ドルであった。みずほリースは自らの取得原価を開示していないが、関連会社等に対する投資有価証券(株式)は2019年3月期末の12,793百万円から2020年3月期末の95,136百万円へ増えている。

含意

取得の完了は世界的な移動制限の始まりと重なった。2022年3月期、みずほリースはAircastleについて株式を取得した際に想定していた収益が見込めなくなったと判断し、のれん相当額の未償却残高10,671百万円を全額減損して持分法による投資利益に含めている。回収可能価額は投資先の事業計画に基づく使用価値で、割引率は11.8%であった。それでも同社は持分を落とさず、2023年7月には丸紅と共同でAircastleの増資を引き受ける関連契約を締結し、議決権比率25.00%を保ったまま航空機事業を続けている。

いつ何が起きたか8件
当時の取締役11名

当時の取締役(2019年6月株主総会決議)

考察:25%という位置づけ
考察

考察:25%という位置づけ

2016年に合弁の相手として選んだ会社を丸ごと買う場面で、みずほリースは主導権を取りにいかなかった。間に置いたのはMM Air Limitedという丸紅との共同出資会社で、その先のAircastleを丸紅とMM Airが半分ずつ持つ。みずほリースに届く議決権は二段を経た25.00%であり、連結子会社ではなく持分法適用関連会社にとどまる。買付価格は1株32米ドルと丸紅の有価証券報告書に載るが、みずほリースは自らが出した額を開示していない。銀行から顧客基盤を得た翌年に商社の案件へ資金の側から乗る型が、持分の置き方にも表れているのだろう。

この持分が最初に生んだのは利益ではなく損失であった。取得の完了は2020年3月27日で、世界的な移動制限が始まる時期と重なる。2022年3月期には、株式を取得した際に想定していた収益が見込めなくなったとして、のれん相当額の未償却残高10,671百万円を全額減損し、持分法による投資利益に含めて計上した。割引率は11.8%である。それでも同社は比率を落とさず、2023年7月には増資引受の関連契約を丸紅と結んだ。持分法による投資利益は2023年3月期に9,718百万円、2025年3月期に18,008百万円まで伸びており、少数持分は責任の軽さと退きにくさを同時に抱える置き場所であったといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

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図と表

みずほリース:持分法による投資利益と経常利益の推移

持分法による投資利益(百万円)持分法による投資利益率(%)
みずほリース:持分法による投資利益と経常利益の推移
(百万円)持分法による投資利益経常利益備考
2015年3月期43518,972
2016年3月期35818,570
2017年3月期21218,789
2018年3月期12419,964
2019年3月期33224,226
2020年3月期81626,714Aircastleの持分取得は3月27日で、当期の損益にはほとんど効いていない
2021年3月期2,96127,542
2022年3月期2,03520,064Aircastleののれん相当額の減損10,671を持分法による投資利益に含む
2023年3月期9,71840,110
2024年3月期10,48250,897
2025年3月期18,00866,219
出所:みずほリース 有価証券報告書 第46期〜第56期(連結損益計算書 営業外収益、主要な経営指標等の推移)
出所:みずほリース 有価証券報告書 第46期〜第56期(連結損益計算書 営業外収益、主要な経営指標等の推移)

みずほリース:関連会社等に対する株式と投資有価証券の推移

関連会社等に対する株式(百万円)関連会社等以外の投資有価証券(百万円)
みずほリース:関連会社等に対する株式と投資有価証券の推移
(百万円)関連会社等に対する株式投資有価証券総資産備考
2015年3月期3,95128,5861,551,695
2016年3月期3,39026,2891,718,712
2017年3月期3,71428,2481,752,284
2018年3月期3,94230,0391,821,282
2019年3月期12,79331,9852,161,872
2020年3月期95,136119,1312,348,4163月27日にAircastle、30日にPLM Fleetの持分を取得した期
2021年3月期135,918171,9912,603,190
2022年3月期173,271203,6542,748,810
2023年3月期194,135240,6182,954,634
2024年3月期222,788306,3803,363,336
2025年3月期258,689377,2143,898,061
出所:みずほリース 有価証券報告書 第46期〜第56期(連結貸借対照表、連結貸借対照表関係 非連結子会社等に対する項目)
出所:みずほリース 有価証券報告書 第46期〜第56期(連結貸借対照表、連結貸借対照表関係 非連結子会社等に対する項目)

買収の条件

買収の条件
科目概要備考
対象会社Aircastle Limitedバミューダ・ハミルトン。ニューヨーク証券取引所上場の航空機リース会社
取締役会の決議日2019年11月6日同日付で、全株式を丸紅と共同で取得する契約を締結した
取得の法的形式現金を対価とする株式取得丸紅とみずほリースの子会社が新会社MM Air Limitedを共同で設立した
買付価格1株あたり32米ドル丸紅の有価証券報告書による。みずほリースは価格を開示していない
許認可の取得日2020年3月24日関係当局の許認可を受け、取引条件が充足した
株式取得日2020年3月27日取締役会の決議から4か月半。沿革もこの日を持分取得の日とする
取得した議決権比率25.00%全額が子会社を通じた間接所有。取得直前に所有していた持分はない
保有の仕組み丸紅とMM Airが各50%MM Airは丸紅とみずほリース子会社の合弁。25%はこの二段で生じる
会計上の取扱い持分法適用関連会社連結子会社とせず、MM AirとAircastleの双方に持分法を適用した
丸紅側の取得対価約1,127百万米ドルMM Air経由の取得額を含む。丸紅の取得直前の持分は28.8%
みずほリースの取得原価記載なし【経営上の重要な契約等】【関係会社の状況】いずれにも金額の記載がない
のれん相当額の減損10,671百万円2022年3月期に未償却残高の全額。持分法による投資利益に含めて計上
減損の測定割引率11.8%の使用価値回収可能価額は投資先の事業計画に基づく使用価値により算定した
取得後の議決権比率25.00%2025年3月期まで変わらない。2024年7月の増資も比率どおり引き受けた
出所:みずほリース 有価証券報告書 第51期(2020年3月期)【経営上の重要な契約等】【関係会社の状況】・第53期(2022年3月期)【連結損益計算書関係】 / 丸紅 有価証券報告書 第96期(2020年3月期)【経営上の重要な契約等】・関連会社及びジョイント・ベンチャーの注記
出所:みずほリース 有価証券報告書 第51期(2020年3月期)【経営上の重要な契約等】【関係会社の状況】・第53期(2022年3月期)【連結損益計算書関係】 / 丸紅 有価証券報告書 第96期(2020年3月期)【経営上の重要な契約等】・関連会社及びジョイント・ベンチャーの注記
当時の取締役11名

当時の取締役(2019年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • 丸紅 ニュースリリース(2013年6月7日)「航空機リース会社Aircastle Limitedの株式取得について」
  • 丸紅 ニュースリリース(2023年7月6日)「米国航空機リース会社Aircastle Limitedの増資引受けに向けた関連契約締結について」
  • 丸紅・みずほリース ニュースリリース(2024年7月2日)「米国航空機リース会社Aircastle Limitedの5億米ドルの増資引受完了について」
  • 興銀リース 有価証券報告書(2019年3月期)
  • みずほリース 有価証券報告書(2020年3月期・2021年3月期・2022年3月期・2023年3月期・2024年3月期・2025年3月期)
  • 丸紅 有価証券報告書(2020年3月期)
  • みずほリース 有価証券報告書「第51期(2020年3月期)【経営上の重要な契約等】【関係会社の状況】【連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項】」
  • 丸紅 有価証券報告書「第96期(2020年3月期)【経営上の重要な契約等】/関連会社及びジョイント・ベンチャーの注記」
  • みずほリース 有価証券報告書「第53期(2022年3月期)【連結損益計算書関係】【重要な会計上の見積り】」
  • みずほリース 有価証券報告書「第55期(2024年3月期)【経営成績等の状況の概要】」
  • みずほリース 統合報告書「統合報告書2020」

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