みずほリース丸紅との共同買収による米Aircastleの議決権25%取得

合弁相手を丸ごと買うとき、主導権を取るか資金の側に回るか

時期 2019年11月
意思決定者(推定) 本山博史(社長)・取締役会
論点 海外事業の拡大手法と出資比率の置き方
概要
2019年11月、丸紅とみずほリースは米国の航空機リース会社Aircastle Limitedの全株式を共同で取得する契約を発表し、2020年3月に買収を完了した。みずほリースは約672億円を投じて議決権所有割合25%を取得し、Aircastleは丸紅との共同運営会社となった。2016年に合弁相手として組んだ会社を、4年後に丸ごと買い取った取引である。
背景
みずほリースは2016年にAircastleとの合弁2社を設立して航空機オペレーティング・リースへ参入していた。相手方には2013年から丸紅が株主として入っており、2019年にはエムジーリースの合弁化で丸紅との関係が深まっていた。第6次中期経営計画はグローバル分野の残高を5年で3倍にする目標を掲げていた。
内容
買収の投資額は2社あわせて約1,900億円で、丸紅は約1,200億円を負担した。丸紅の直接保有比率は28.8%から50%へ上がり、みずほリースは約672億円で25%を取得した。過半を取らず持分法適用関連会社として損益を取り込む位置に自らを置いた。
含意
買収完了は世界的な移動制限の開始と重なり、2022年3月期にはのれん相当額107億円を全額減損した。ロシアのウクライナ侵攻に伴う損失も乗ったが、みずほリースは持分を薄めず、2024年には5億米ドルの増資を丸紅と比率どおりに引き受けている。
筆者の見解

25%という置き場所

この買収を海外事業の規模拡大という言葉だけで読むと、25%という比率の意味が落ちる。約1,900億円の投資のうち、みずほリースが出したのは約672億円で、丸紅の約1,200億円の半分ほどにとどまった。2016年に合弁の相手として選んだ会社を丸ごと買う場面で、同社は主導権を取りにいかず、丸紅が直接・間接で75%を握る配分を受け入れている。銀行から顧客基盤を得た翌年に商社の案件へ資金の側から乗る型が、ここにも表れているとみられる。

もっとも、この持分が最初に生んだのは利益ではなく損失であった。買収完了の翌々期にはのれん相当額107億円を全額減損し、その次の期にはロシア向けリースの回収不能損失を含む161億円の一時要因が乗っている。機体の残価と航空会社の信用に同時に効く事態が、買収から2年のあいだに続いた。それでも同社は比率を落とさず、2024年には5億米ドルの増資を丸紅と割合どおり引き受けた。少数持分は、責任の軽さと退きにくさを同時に抱える置き場所であったといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

合弁で始めた航空機リース

同社が航空機オペレーティング・リースを自社の事業として持ったのは2016年であった。同年2月にバミューダで、8月に米国で、米Aircastle Limitedとの合弁により航空機オペレーティング・リース専業のIBJ Air Leasing LimitedとIBJ Air Leasing (US) Corp.を相次いで設立している。当時の商号はまだ興銀リースであった。機体を保有して航空会社へ貸し出す事業を、自前の会社を起こすのではなく、既存の専業会社と組む形で立ち上げた[1]

相手方のAircastleには、すでに丸紅が株主として入っていた。丸紅は2013年6月、第三者割当増資の引受により同社株式の約15.25%を約209百万米ドルで取得している。当時のAircastleは2013年3月末で158機を保有し、36カ国66社へリースしていた。興銀リースが2016年に合弁で参入した先は商社が出資する米国の上場会社であり、のちの共同買収へ至る三者の関係は、この時点で下地ができていた[2]

みずほ入りと、グローバル3倍という目標

2019年、会社の資本と看板が入れ替わった。2月にみずほ銀行との資本業務提携を決議して同グループの持分法適用関連会社となり、10月には商号を興銀リースからみずほリースへ改めている。あわせて開始した第6次中期経営計画は、2023年度に親会社株主に帰属する当期純利益300億円、グローバル分野の残高を2019年3月末比で3倍とする目標を掲げた。国内の量的拡大では届かない水準の目標であった[3][4]

丸紅との距離も同じ年に縮まっていた。2019年3月、同社は丸紅子会社エムジーリースの株式を取得して両社の合弁会社とし、リース・ファイナンス事業での提携を始めている。直前の2019年3月期の連結売上高は3,849億円、親会社株主に帰属する当期純利益は166億円であった。銀行から顧客基盤を、商社から海外の案件を引く二方向の回路が、この時期に相次いで開かれた[5][6]

決断

約1,900億円で合弁相手を丸ごと買う

2019年11月6日、丸紅とみずほリースはAircastleの全株式を共同で取得する契約を発表した。投資額は2社あわせて約1,900億円とみられ、丸紅はすでに同社株を3割弱保有していたため、既存株主から残りの株式を買い取る形をとった。対象となったAircastleは約280機の航空機を保有する会社である。買収手続きは2020年6月までに終える計画で示された[7][8]

買収は計画より早く、2020年3月に完了した。みずほリースは約672億円を投じて議決権所有割合25%を取得し、Aircastleは丸紅との共同運営会社となった。持分の配分は、丸紅が直接・間接あわせて75%、みずほリースが25%である。同じ2020年3月には、米国の冷凍・冷蔵トレーラーリース・レンタル事業会社PLM Fleet, LLCの持分も丸紅と共同で取得している[9][10][11]

主導権は商社、資金の機動力はリース会社

買収を主導したのは丸紅であった。柿木真澄社長は「リースを今後の注力分野とする戦略だ。エアキャッスルを軸に航空機リース市場の成長をどんどん取り込む」と述べ、丸紅の直接保有分は28.8%から50%へ引き上げられた。対象のAircastleは277機を保有し、48カ国87社の航空会社などへリースして、足元で1億5000万〜2億ドルの純利益を上げていた会社である[12][13]

みずほリースが担ったのは資金の側であった。丸紅にとって航空機リースの拡大にあたる課題は資金調達力にあり、みずほリースとの協業によって資金調達の機動力を上げられると説明されている。25%という比率は連結にも過半にも届かず、持分法で損益を取り込む位置にとどまる。1機あたりの投資額が大きく残価と信用の双方にリスクを抱える事業を、単独保有ではなく共同運営で持つ形が選ばれた[14][15]

結果

移動制限と戦争が続けて来た

買収を挟んだ2019年度、グローバル分野の残高は前期末比924億円増の2,348億円となり、丸紅との海外事業会社の共同運営開始がその主因であった。2020年3月期の連結売上高は5,392億円、経常利益267億円、親会社株主に帰属する当期純利益は175億円で、7期連続の最高益となっている。数字の上では買収の初年度は順調に映った。買収の完了時期は、しかし世界的な移動制限の始まりと重なっていた[16][17]

損失は2期にわたって表面化した。2022年3月期にはAircastleののれん相当額107億円を全額減損処理し、同期の連結純利益は149億円へ落ちた。翌2023年3月期にはロシアのウクライナ侵攻に伴うロシア向け航空機リースの回収不能損失などを含め161億円の一時要因が乗っている。それでも同期の連結純利益は284億円まで戻り、売上高は5,297億円であった。減損を吸収したうえで水準を回復させた形である[18][19][20]

比率を守ったまま資金を足す

航空需要が戻り始めると、両社は持分を保ったまま資金を追加した。2023年7月、丸紅とみずほリースはAircastleの増資引受けに向けた関連契約を締結し、増資総額を500百万米ドルとした。丸紅のリリースは、各国における移動制限の解除後に航空旅客需要が回復し、航空機リース業界も再び成長軌道に戻りつつあるとし、旅客需要は2040年まで年平均3%台で成長すると予測している[21]

増資は2024年7月2日に完了した。得られた資金は航空機の購入などAircastleの成長投資に充てられ、出資比率は丸紅75%・みずほリース25%のまま据え置かれた。買収から4年を経て、みずほリースは持分を薄めることなく追加の資金を入れたことになる。2024年3月期の連結売上高は6,561億円、経常利益509億円、親会社株主に帰属する当期純利益は352億円と、いずれも買収前を大きく上回る水準へ達した[22][23]

出典・参考

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