みずほリースみずほ銀行との資本業務提携によるみずほFG持分法適用関連会社化と商号変更

興銀リースという50年の看板を、みずほの顧客基盤とどう引き換えたか

時期 2019年2月
意思決定者(推定) 本山博史(社長)・取締役会
論点 資本政策と提携相手の選択
概要
2019年2月26日、興銀リースは取締役会でみずほ銀行との資本業務提携と同社を割当先とする第三者割当増資を決議し、同日付で提携契約を締結した。増資と既存株主からの相対取得を通じてみずほフィナンシャルグループがグループ全体で22.2%を保有し、興銀リースは同グループの持分法適用関連会社となった経営判断である。
背景
国内の設備投資が伸び悩み、単純なファイナンス・リースでは銀行とも同業とも競合する環境で、興銀リースは第5次中期経営計画のもと成長分野への傾斜を進めていた。一方で株主構成は1969年の16社連合の名残をとどめ、社名に興銀を掲げながらみずほ銀行の持株比率は3.81%にとどまっていた。
内容
みずほ銀行が第三者割当増資6,355,000株を発行価格2,585円で全額引き受け、2019年3月29日に払込を完了した。あわせて既存株主から2,654,200株を市場外の相対取引で取得した。同じ日に丸紅とのエムジーリース合弁化も決議し、丸紅は興銀リース株式の5%を目途に取得することを検討した。
含意
2019年5月22日の取締役会と6月25日の定時株主総会を経て、同年10月1日に商号をみずほリースへ変更した。創立50年の節目に興銀の冠を外し、みずほの顧客基盤と交換する取引となった。2024年には丸紅が20%を保有する第二の親会社級株主として加わった。
筆者の見解

看板を渡した対価

この判断で興銀リースが差し出したものは、株式の22.2%と、50年使ってきた社名であった。受け取ったのは、みずほフィナンシャルグループの顧客基盤への接続と、成長分野で共同組成する権利である。銀行系リース会社が単独で顧客を開拓し続ける形に限界を感じたとき、選べる道は、独立を保って規模の劣後を受け入れるか、系列の内側へ入って案件の供給を受けるかのいずれかであった。興銀リースは後者を選び、しかも子会社ではなく持分法という距離を残した。上場と経営の自律を保ったまま、看板だけを先に渡した順序に、この取引の設計が表れている。

提携初年度の実績を見ると、数字を押し上げたのはみずほではなく丸紅との海外共同運営であった。銀行から得たものは案件の共同組成であり、成果が財務に現れるまでには時間がかかる性質のものといえる。同じ日に銀行と商社の双方を株主に迎えた設計は、どちらか一方に依存しない案件供給を狙ったものとみることができる。2019年に空いた資本の椅子は、ひとつではなかった。みずほ銀行に譲った席の隣には、5年後の2024年、20.0%を持つ丸紅が座っている。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

伸びない国内投資と、競合するファイナンス・リース

2010年代後半の興銀リースは、国内のリース需要が拡大しない前提で事業を組み直していた。本山博史社長は2018年の業界特集で、国内の設備投資が伸びないという見通しを述べ、単純なファイナンス・リースにとどまれば銀行とも同業のリース会社とも競合すると語っている。物件を購入して貸し出すだけの機能は、低金利下で銀行の融資と区別がつきにくくなっていた。新規の注力分野として医療・ヘルスケア、環境・エネルギー、テクノロジー、グローバルを挙げたのも、この認識の裏返しであった[1]

第5次中期経営計画(2017年度〜2019年度)は、企業のビジネスモデルと社会構造・産業構造の変化を捉え、商流サポートや共同事業推進といった収益性の高い領域を広げる方針を掲げていた。この計画の数値目標は3年間の計画期間を1年前倒しで全て達成し、2019年3月期の連結売上高は3,849億円、経常利益242億円、親会社株主に帰属する当期純利益は166億円に達した。数字の上では順調でありながら、リース・割賦の量的拡大だけでは次の5年を描きにくくなっていた[2][3]

興銀の名を掲げながら、資本の紐帯は薄かった

1969年12月、日本興業銀行を中心に他15の事業会社が資本金5億円を出し合ってパシフィック・リースが発足し、1981年に商号を興銀リースへ改めた。設立の経緯がそのまま株主構成に残り、2018年3月末の大株主は第一生命保険が6.87%で筆頭、みずほ銀行は3.81%の第3位にすぎなかった。社名に興銀を掲げる会社が、後継行であるみずほ銀行の連結にも持分法にも入らない状態が続いていた。共同出資で始まった会社の資本構成は、50年近くを経ても組み替えられていなかった[4][5]

提携相手となるみずほフィナンシャルグループの側にも事情があった。同グループは2017年11月13日、人員と拠点の削減を柱とする構造改革計画を発表し、銀行本体の収益構造を見直す作業に入っていた。銀行が貸出だけで稼ぐ形が細るなかで、グループ内のリース会社をどこまで自陣に引き寄せるかは、非銀行収益をどう厚くするかという問いと重なる。2019年2月の提携を報じた日本経済新聞も、銀行と商社の連合で新たな法人需要を取り込む構図として伝えている[6][7]

決断

増資と相対取得を組み合わせた22.2%

2019年2月26日、興銀リースは取締役会でみずほ銀行との資本業務提携と、同社を割当先とする第三者割当増資を決議し、同日付で提携契約を締結した。増資は6,355,000株を発行価格2,585円で割り当てるもので、払込は3月29日に完了し、資本金は260億88百万円となった。みずほ銀行はこれと並行して既存株主から2,654,200株を市場外の相対取引で取得した。増資による希薄化と既存株の買い集めを重ねることで、みずほフィナンシャルグループはグループ全体で22.2%を握る計算であった[8][9][10]

選ばれた比率は、子会社化には届かず持分法にとどまる水準であった。上場は維持され、興銀リースは独立した意思決定機関を残したまま、みずほの顧客基盤へ接続する形をとった。提携で掲げた柱は、国内外最大級の顧客基盤を使った営業推進、金融の枠を超えた付加価値の高いビジネスの開拓、グローバル・医療・ヘルスケア・環境・エネルギー・テクノロジーといった成長分野での協業拡大の3点である。同じ取締役会では、リース・ファイナンス業務に集中するため不動産賃貸事業を連結子会社へ吸収分割することも決めていた[11][12]

同じ日に丸紅を迎え、興銀の名を返す

2019年2月26日には、丸紅との提携も同時に決議された。興銀リースは丸紅子会社エムジーリースの第三者割当増資を引き受け、23,537株を8,708百万円で取得して議決権の50%を持ち、同社を両社の合弁会社とした。さらに丸紅は、提携の効果を円滑に実現する目的で興銀リース株式の5%を目途に相対取引または市場取引で取得し、社外取締役を派遣することを検討すると明記した。銀行と商社を同じ日に株主として迎える構図は、リース会社の側から見れば案件供給元を二重化する選択であった[13][14]

資本の受け入れは、社名の返上とひと続きであった。興銀リースは2019年5月22日の取締役会で商号変更と定款変更を決議し、6月25日の第50回定時株主総会の承認を経て、10月1日にみずほリース株式会社となった。総会の承認を待つ前の3月26日には、旧社名のロゴとみずほフィナンシャルグループのロゴを並べ、社名変更を予定していると告知する企業広告を出している。設立から50年目に、日本興業銀行の系譜を示してきた2文字を看板から外した[15][16][17]

結果

筆頭株主の交代と、第6次中期経営計画

増資と相対取得が終わった2019年3月末、みずほ銀行は11,283千株・23.03%を保有する筆頭株主となった。前年まで首位にあった第一生命保険は、持株数を変えないまま比率が5.98%へ下がって第2位に退いた。前事業年度に主要株主でなかった会社が、1年で筆頭に立った形である。1969年に幹事行として16社をまとめた興銀の役回りは、50年を経てみずほ銀行による4分の1弱の持分へ姿を変えた[18][19]

提携を受けて、会社は計画そのものを組み替えた。3年間の計画期間だった第5次中期経営計画を1年前倒しで終え、2019年度から2023年度までの5年間を対象とする第6次中期経営計画を開始している。最終年度の目標には親会社株主に帰属する当期純利益300億円、グローバル分野の残高を2019年3月末比で3倍、配当性向25%以上が並んだ。提携で得た顧客基盤と、丸紅を通じた海外の事業機会を、そのまま数値目標の前提に置いた計画であった[20][21]

提携初年度に現れたもの

商号変更を挟んだ2019年度は、連携体制の構築に費やされた。環境・エネルギー分野ではみずほ銀行と組んでバイオマス発電プロジェクトへのファイナンスを手掛け、不動産分野ではみずほ銀行とみずほ証券と連携してREITの物件取得に対する大型ファイナンスへ参画した。銀行の顧客基盤に接続するという提携の柱は、まず案件の共同組成に表れた。親会社株主に帰属する当期純利益は業績予想の170億円を上回る175億円となり、7期連続の最高益を記録している[22][23]

もっとも、初年度に残高を押し上げたのは、みずほ側ではなく丸紅側であった。グローバル分野の残高は2019年3月末比924億円増の2,348億円へ伸びており、その主因は丸紅との海外事業会社の共同運営を始めたことにあった。2020年3月には丸紅と共同で米国Aircastleの持分25%を取得し、冷凍・冷蔵トレーラーリースのPLM Fleetの持分50%も引き取った。1株当たり年間配当は創立50周年記念配当2円を含む82円で18期連続の増配となり、配当性向は22.7%であった[24][25]

出典・参考

免責事項およびポリシー