この提携で動いたのは、出資比率よりも取引の向きであった。1991年に深センへ拠点を開設して以来、ツムラにとっての中国は生薬を買う場所であり、品質を管理する対象であった。約2万軒の契約農家に栽培記録を書かせる仕組みも、日本で売る製剤の品質を守るための投資である。その管理手法を持ったまま現地の会社を買い、現地の患者へ売る側に回ったとき、日本国内で積み上げた品質管理そのものが商品になった。2023年度に187億円を売った平安津村薬業の生薬販売は、その転換の最初の数字にあたる。
相手が保険会社である点も、この判断の性格を決めている。老舗の買収に対しては、中国の伝統文化を安値で買い取ったという批判も一部から上がった。この提携が資本のやり取りだけとは受け止められていないことの表れである。ツムラの側は、製薬会社と組んで技術と製品を交換し合う道をとらず、顧客と販売網を抱える金融資本を相手に選び、その代わりに議決権の1割を差し出した。中国から見ると、科学的な根拠の乏しさを弱みとしてきた中医薬の業界へ、日本で130年にわたり磨かれてきた品質管理が入ってくる取引でもある。