撤退の線引きは、商品カテゴリーではなく販路で引かれていた。ツムラが手放したのはマスの棚で広告費を競う家庭用品事業であって、入浴剤そのものではない。生薬エキスを配合した"バスハーブ"は今もツムラの製品として残り、2025年度のヘルスケア製品62億円の伸びを押し上げている。同じ湯船に入れる商品でも、生薬の説明が売りになるものは残り、香りと販促量で売るものは外へ出た。この会社の選別の基準がどこにあるかは、残った商品を見るとよく分かる。
値づけの面では、売却は買い手に厚く働いた。46億円で出た会社は、3年余り後に150億円で次の買い手へ渡り、入浴剤首位の事業として再評価された。ただしツムラの側から見れば、家庭用品を抱えたまま医療用漢方の設備投資と中国での原料調達に資金を割く道はなかった。1930年発売のバスクリンが漢方研究の費用を出し続けた70年余りののち、資金の流れは向きを変え、漢方が自らの成長費用を賄う会社になった。