持株会社制への移行(2006年・DOWAの決断)

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論点事業運営の権限を事業会社へ移管するか
DOWA:業績の推移
売上高(億円)当期純利益率(%)
5部門を10社へ分社し、事業運営の権限を事業会社へ移管する再配置

何をなぜ決めたか:5部門を10社へ分社し、事業運営の権限を事業会社へ移管する再配置

概要

2006年5月16日の取締役会でDOWAメタルマインなど10社との吸収分割契約の締結を決議し、同年6月28日の定時株主総会の承認を経て、10月1日に分社型吸収分割で製錬・環境・リサイクル・電子材料・金属加工・熱処理の5部門を各社へ移した。同日、商号を同和鉱業からDOWAホールディングスへ改めている。

承継させた資産は10社合計で221,007百万円、負債は145,042百万円で、うちDOWAメタルマイン1社が資産126,285百万円を占めた。持株会社に残したのは、グループ全体戦略の策定・推進、最適な経営資源の配分、コンプライアンス等の戦略機能である。

背景

移行は2000年4月からの事業構造改革の延長に置かれている。「選択と集中」で筋肉質な企業体質をつくり、製錬、環境・リサイクル、電子材料・金属加工、熱処理の4つをコアビジネスに据える作業が先にあり、2006年4月から始まった3か年の中期計画「事業構造改革Ⅲ~Jump up to the New Stage~」が、その目標レベルをさらに引き上げた。

持株会社制は、その高い目標を実現するための重要な施策にあたる。事業を引き継ぐ会社は市場の最前線で顧客ニーズを捉え、権限を持って迅速な意思決定を行う。持株会社はグループとして最適な事業ポートフォリオを構築する。分業はこう決められている。

内容

吸収分割の承継会社は10社ある。DOWAメタルマイン、DOWAエコシステム、DOWAエレクトロニクス、DOWAメタルテック、DOWAサーモテックの5社が各19,800株、エコシステム山陽など残る5社が各1,800株の普通株式を発行し、そのすべてを分割会社へ割り当てた。株主への現物配当は行っていない。

後者5社の株式はさらにコア4社へ承継され、持株会社、事業会社、その傘下という二段の構造になった。コア5社の資本金は効力発生日に各10百万円から1,000百万円へ増資され、分割会社の資本金36,436百万円は動いていない。

含意

移行が最も直に出たのは提出会社の従業員数で、2006年3月期の1,002名が翌期には80名になった。連結は3,591名から3,823名へ増加しており、人は外へ出たのではなく事業会社へ移っている。セグメントも移行に合わせて組み替えられ、電子材料・金属加工部門が電子材料部門と金属加工部門に分かれた。

環境・リサイクル部門は区分も品目も変わらず、売上高は2006年3月期の41,340百万円から2012年3月期の56,211百万円へ伸びた。ただし営業利益は2008年3月期の8,028百万円が頂で、その後の4年は一度もこれを超えていない。

いつ何が起きたか12件
考察:5つの箱の大きさは等しくなかった
考察

考察:5つの箱の大きさは等しくなかった

5つの部門を横並びに分社したように見えて、承継させた資産221,007百万円のうち126,285百万円、6割近くを製錬のDOWAメタルマインが占めていた。環境・リサイクルを引き受けたDOWAエコシステムは15,359百万円で、その8分の1でしかない。分社後も資産の中心は依然として製錬にあり、原料を鉱石から廃棄物へ移すという方向は、この時点では資産の配分にまだ現れていない。移行が決めたのは事業ごとに損益と権限を持たせる体制であって、どの事業を拡大するかは、その後の投資が決めることになったのだと思われる。

もっとも、箱を分けたことで各事業の採算が独立して見えるようになった効果は小さくない。2009年3月期には製錬部門が14,114百万円の営業損失を計上し、その理由として小坂製錬の新炉の操業度の低さが名指しされている。全社の損益に紛れていれば、個別の炉の稼働率まで説明の対象にはならなかっただろう。環境・リサイクル部門の営業利益が2010年3月期に2,103百万円まで減少したことも、同じ仕組みで露わになった。組織の形が、経営を説明する粒度を決めたといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

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図と表

DOWA:従業員数の推移

提出会社(名)連結のうち提出会社以外(名)
DOWA:従業員数の推移
(名)連結提出会社備考
2002年3月期3,584983
2003年3月期3,515996
2004年3月期3,289935
2005年3月期3,305960
2006年3月期3,5911,002移行の直前。製錬から熱処理までの5部門を提出会社が直接抱えていた
2007年3月期3,8238010月1日の移行で提出会社の人員が事業会社へ移り、80名まで減少した
2008年3月期4,166101
2009年3月期4,73984
2010年3月期4,32577
2011年3月期4,51174
2012年3月期4,70367
出所:同和鉱業 有価証券報告書 第103期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】 / DOWAホールディングス 有価証券報告書 第104〜109期【従業員の状況】
出所:同和鉱業 有価証券報告書 第103期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】 / DOWAホールディングス 有価証券報告書 第104〜109期【従業員の状況】

DOWA:環境・リサイクル部門の売上高と営業利益

売上高(百万円)営業利益率(%)
DOWA:環境・リサイクル部門の売上高と営業利益
(百万円)売上高営業利益備考
2005年3月期30,7234,705建設・不動産部門をその他部門へ含める区分変更後の組替値
2006年3月期41,3406,021
2007年3月期44,1757,948移行に合わせ電子材料・金属加工部門が2部門に分かれた。当部門の区分は不変
2008年3月期50,6328,028
2009年3月期45,2084,905期後半の景気悪化で顧客の排出量が激減し、処理単価の値下げで集荷を維持
2010年3月期45,0782,103
2011年3月期49,6782,802
2012年3月期56,2114,477
出所:DOWAホールディングス 有価証券報告書 第103〜109期【セグメント情報】事業の種類別セグメント情報
出所:DOWAホールディングス 有価証券報告書 第103〜109期【セグメント情報】事業の種類別セグメント情報

会社分割の条件

会社分割の条件
科目概要備考
移行の法的形式分社型吸収分割当社を分割会社とし、既存会社を承継会社とする方式。新設分割ではない
取締役会決議日2006年5月16日同日付で承継会社10社との間に吸収分割契約を締結した
株主総会の承認2006年6月28日定時株主総会の承認を得ることを条件として契約は結ばれていた
効力発生日2006年10月1日
承継させた事業製錬・環境・リサイクル・電子材料・金属加工・熱処理の5部門分割対象事業に関する一切の資産、負債、契約上の地位等を承継
吸収分割承継会社10社部門ごとのコア事業会社5社と、その傘下に付く事業会社5社
承継させた資産221,007百万円2006年9月30日現在の10社合計。DOWAメタルマインが126,285百万円
承継させた負債145,042百万円同日現在の10社合計。DOWAメタルマインが84,344百万円
承継させた純資産75,961百万円同日現在の10社合計。資産と負債の各合計との差4百万円は端数による
分割の対価承継会社の新株を全株、分割会社へ割当コア5社は各19,800株、傘下5社は各1,800株。株主への現物配当は行わない
承継会社の資本金各10百万円から1,000百万円へ増資コア事業会社5社。DOWAサーモエンジニアリングは100百万円へ増資
分割会社の資本金36,436百万円移行の前後で増減はない
商号の変更同和鉱業からDOWAホールディングスへ2006年10月1日付。分割した事業会社の全株式を保有する持株会社となった
持株会社に残した機能グループ全体戦略の策定・推進、経営資源の配分コンプライアンス等の戦略機能。事業の運営は各事業会社が担う
出所:同和鉱業 有価証券報告書 第103期(2006年3月期)【重要な後発事象】/DOWAホールディングス 有価証券報告書 第104期(2007年3月期)【経営上の重要な契約等】
出所:同和鉱業 有価証券報告書 第103期(2006年3月期)【重要な後発事象】/DOWAホールディングス 有価証券報告書 第104期(2007年3月期)【経営上の重要な契約等】
参考文献

参考文献

参考
  • DOWAホールディングス 沿革(公式サイト)
  • 同和鉱業 有価証券報告書「第103期(2006年3月期)【重要な後発事象】「会社分割による純粋持株会社への移行」」
  • DOWAホールディングス 有価証券報告書「第104期(2007年3月期)【経営上の重要な契約等】」
  • DOWAホールディングス 有価証券報告書「第104期(2007年3月期)【セグメント情報】事業の種類別セグメント情報」
  • DOWAホールディングス 有価証券報告書「第106期(2009年3月期)【業績等の概要】」

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