ツムラ化粧品など子会社の整理(1996年・ツムラの決断)

更新:
論点 多角化子会社の損失をどう処理するか
経営改善3カ年計画による化粧品・米国子会社の整理と医療用漢方製剤への回帰

何をなぜ決めたか:経営改善3カ年計画による化粧品・米国子会社の整理と医療用漢方製剤への回帰

概要

ツムラは1996年4月から始まる期を「経営改善3カ年計画」の初年度に置き、子会社の整理に着手した。1997年3月期にツムライリュージョンとTSUMURA CANADA HOLDINGの解散を決議し、子会社事業整理損96億4,700万円を計上した。翌期には米国子会社TSUMURA INTERNATIONALの譲渡方針を決めた。

1999年3月期にはツムラ化粧品が解散を決議して連結から外れ、期末日の1999年3月31日にはアローとアローフランチャイズの株式を売却した。個別の当期損失は1997年3月期23億円、1998年3月期76億円、1999年3月期283億円と3期続き、合計は382億円に達した。

背景

整理に入った1997年3月期の連結では、医薬品事業が売上高757億円・営業利益91億円を稼ぐ一方、化粧品などの家庭用製品事業は売上高366億円で営業損失30億円を出していた。主力製品のひとつ「ツムラ小柴胡湯」も副作用報道の影響で低迷し、医薬品事業の営業利益は前期比39.4%減った。

会社は保証債務をめぐる訴訟も抱えた。東洋信託銀行(10億円)・幸福銀行(8億5千万円)・東邦生命保険(7億円)から保証債務の履行を、安田信託銀行から18億円の損害賠償を求められ、元取締役の津村昭氏らを相手に損害賠償請求訴訟を起こしている。1996年10月には、東京地検が元社長を特別背任容疑で捜査すると報じられた。

内容

1998年3月期は米国子会社の譲渡方針にともなう整理損などで特別損失103億1,600万円を計上した。1998年9月には、40歳以上の管理職を対象にした早期退職優遇に予想を上回る112名が応じたと発表した。あわせて米国子会社の評価損51億円の追加引当、ツムラ化粧品への貸付金等の評価減115億円を中間期に実施するとし、中間・期末とも配当を見送った。

1999年3月期の特別損失は、ツムラ化粧品をはじめとする子会社事業整理損222億4,600万円、早期退職と希望退職募集の特別退職金44億3,400万円、訴訟引当金19億5,000万円に及び、当期純損失は283億200万円となった。

含意

整理の後の2000年3月期、個別の経常利益は前期比69.5%増の46億900万円に戻り、当期利益も9,700万円と黒字に転じた。貸付先だったツムラ化粧品の清算は結了し、生産体制の見直しで掛川工場と大阪ビルを売却した。

もっとも、連結の有利子負債は前期から約137億円減っても1,018億円残り、連結売上高719億円を上回っていた。連結総資産は1997年3月期の2,003億円から1,474億円へ縮んだ。社長も、1999年5月の決算短信に代表者として載る阪本和俊氏から、2000年3月期の事業報告書では風間八左衛門氏に替わっていた。

いつ何が起きたか 8件
考察:損失を小分けに認めた4年
考察

考察:損失を小分けに認めた4年

この判断は、子会社を一度に畳む決断というより、損失を毎期ひとつずつ認めていく過程だったと読める。初年度はツムライリュージョン、翌期は米国子会社、3年目はツムラ化粧品と、整理の対象は年ごとに移り、特別損失は年を追うごとに膨らんだ。計画の最終年度に最大の損失を出した形で、初めから全体の損失を見積もれていたわけではないのだろう。1992年に会長の津村重舎氏が説いた『地道に体質を改善し基礎体力を蓄えること』は、結局、計画を立てた4年後に損失の処理として実行された。

もっとも、整理の間も医療用漢方製剤の事業は崩れていない。1997年3月期に医薬品事業は営業利益91億円を稼いでおり、子会社の後始末と保証債務の訴訟が本業の利益を食っていたとみられる。2000年3月期に経常利益が46億円へ戻ったのは、切り離すべきものを切り離し終えた結果だろう。ただし有利子負債は連結売上高をなお上回り、財務の立て直しは次の経営陣へ持ち越された。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
概況
数字で見る 1表

数字で見る

図と表

ツムラ:連結の売上高・当期損益・総資産

売上高(百万円)当期純利益率(%)

連結売上高は4期で1,176億円から719億円へ4割縮んだ

ツムラ:連結の売上高・当期損益・総資産
(百万円) 売上高当期純利益総資産 備考
1996年3月期 117,610△1,069212,259
1997年3月期 112,639366200,323 経営改善3カ年計画の初年度。ツムライリュージョン等2社を連結から除外
1998年3月期 100,041△3,621188,052 米国子会社の譲渡方針を決定
1999年3月期 85,491△18,416164,840 ツムラ化粧品が解散決議で連結から外れ、連結子会社は10社
2000年3月期 71,932△2,503147,441 ツムラ化粧品の清算結了。有利子負債は約1,018億円
出所:ツムラ 連結決算短信 平成9年3月期〜平成11年3月期(連結経営成績・財政状態) / ツムラ 第64期 事業報告書(連結損益計算書・連結貸借対照表)
出所:ツムラ 連結決算短信 平成9年3月期〜平成11年3月期(連結経営成績・財政状態) / ツムラ 第64期 事業報告書(連結損益計算書・連結貸借対照表)
参考文献

参考文献

参考
  • 日経ビジネス 1996年10月28日号
  • ツムラ 決算短信 平成12年3月期 決算短信(連結)(2000年5月24日)
  • 日経ビジネス 1992年3月9日号
  • ツムラ 連結決算短信 平成9年3月期〜平成11年3月期(連結経営成績・財政状態)
  • ツムラ 第64期 事業報告書(連結損益計算書・連結貸借対照表)
  • ツムラ 適時開示「業績予想および配当予想の修正について」
  • ツムラ 決算短信「平成9年3月期 決算短信」
  • ツムラ 決算短信「平成9年3月期 連結決算短信」
  • ツムラ 決算短信「平成10年3月期 決算短信」
  • ツムラ 決算短信「平成10年3月期 連結決算短信」
  • ツムラ 決算短信「平成11年3月期 決算短信」
  • ツムラ 決算短信「平成11年3月期 連結決算短信」
  • ツムラ 事業報告書「第64期 事業報告書(2000年3月期)」

次に読む決断

免責事項およびポリシー