ロイヤルホールディングス双日との資本業務提携と、主要取引行4行を割当先とする優先株式による資本増強

借入で足りる資金をなぜ資本で入れたのか——出し手に事業の相手を選んだ増資

時期 2021年2月
意思決定者(推定) 黒須康宏・菊地唯夫(会長)との共同統治体制 社長
論点 毀損した自己資本の回復と、人流に依存しない事業基盤の構築
概要
2021年2月15日、ロイヤルホールディングスの取締役会は双日との資本業務提携契約の締結を決議した。双日へ普通株式99億9,900万円と新株予約権を発行し、みずほ銀行・日本政策投資銀行・福岡銀行・西日本シティ銀行の四行にはA種・B種の優先株式各30億円を割り当てた。即時の資本増強は160億円にのぼった。
背景
2020年12月期はコロナ禍で連結売上高が803億円へ落ち込み、経常損失198億円、当期純損失275億円を計上した。全セグメントが経常赤字となり、自己資本比率は49.6%から19.7%へ下がった。経費削減や不採算店の撤退では、毀損した自己資本までは戻らなかった。
内容
双日には発行価額1,718円で普通株式5,820,700株と、潜在株式4,112,400株にあたる新株予約権を割り当て、取締役7名のうち2名の指名権を与えた。資本準備金と利益準備金を減らして欠損を填補し、調達資金約235億円を店舗投資・食品工場・システム・海外事業などに配分した。
含意
双日は2021年末に持株比率13.3%で筆頭株主となり、以後シンガポール・ベトナム・米国での合弁やコスタコーヒーの国内展開が続いた。2025年12月期は売上高1,655億円・経常利益79億円で過去最高となったが、利益の大半はホテル事業が占めている。
筆者の見解

資本の穴埋めではなく、相手を選んだ増資

この提携をコロナ禍の資金繰り対応と読むと、判断の芯を外す。160億円という金額だけであれば借入でも作れた。現に2020年に借入金を35億円から301億円へ積み増しており、資金を手当てする手段そのものは残っていた。それでも普通株式と新株予約権で双日を選んだ理由は、資本の穴を埋める相手ではなく事業の相手を求めたところにあるとみられる。人が動けないなら「モノ」を動かすほかなく、そのモノを動かす機能を自社が持たないという自覚が、出し手の条件を決めていた。

もっとも、代償は具体的に生じている。新株予約権は行使され、双日の持株比率は13.3%から19.97%へ上がった。既存株主の持分はそのぶん薄まっている。創業の事業である機内食は双日が6割を握る会社となり、連結から外れた。2025年に過去最高益を出したとはいえ、経常利益79億円のうち68億円はホテル事業が占め、観光という別の人流に乗っている。人流依存を直すために結んだ提携が、依存先を移した面もあるとみることができる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

「人の移動」を前提にした事業構成の脆さ

2020年12月期、ロイヤルホールディングスの連結売上高は803億円へ落ち込み、経常損失198億円、親会社株主に帰属する当期純損失275億円を計上した。外食・コントラクト・機内食・ホテル・食品のすべてが経常赤字となり、なかでも打撃が深かったのが創業の事業である機内食であった。売上高は95億円から23億円へ、率にして75.6%減っている。国際線の運休が続き、既存店の売上は前年の15.0%まで落ちていた[1][2][3]

業績の落ち込みは、事業の組み合わせそのものの問題として社内で受け止められた。統合報告書2021のなかで菊地唯夫会長と黒須康宏社長は、グループの事業が「人の移動が自由に行われる」という前提の上にあり、人が移動を制限される状況ではリスク分散ができなかったと振り返っている。多角化は過去に経験した景気の波には有効でも、感染症の世界的流行という波には脆弱であったという総括であった[4][5]

構造改革では埋まらなかった自己資本

対応そのものは2020年5月に始まっていた。黒須康宏社長を本部長とする構造改革推進本部を設け、管理可能経費の削減と賃料の減額交渉、設備投資の当初計画からの47%圧縮を進めている。不採算店は約90店の撤退方針を決め、2020年末までに70店程度を閉じた。早期希望退職には315名が応募し、退職日は2021年1月31日であった。固定費は2019年比で80億円程度減っている[6][7][8]

それでも埋まらなかったのが自己資本であった。2019年度末に508億円あった自己資本は2020年度末に209億円へ減り、自己資本比率は49.6%から19.7%へ下がっている。手元資金は借入でつないだため、借入金は35億円から301億円へ膨らんだ。費用を削っても毀損した資本は戻らず、返済義務のない資金をどこから入れるかが残された課題であった[9][10]

決断

「モノを動かす」相手を選ぶ

2021年2月15日、ロイヤルホールディングスの取締役会は双日との資本業務提携契約の締結を決議した。相手の選び方には理由があった。人が移動できない状況では「モノ」を動かすことが有効な手段になると考え、それを得意とする第三者を探した結果、「モノ」と情報を動かすことを本業とする双日にたどり着いたと、統合報告書2021は説明している。資金の出し手であると同時に事業の相手でもあることが、選定の条件であった[11][12]

提携の中身は資本と業務の二本立てであった。双日には払込総額99億9,900万円の普通株式5,820,700株を発行価額1,718円で割り当て、あわせて41,124個の新株予約権を交付している。潜在株式数は4,112,400株、当初行使価額は1,908円で、行使できる期間は6年間とした。取締役7名のうち2名は双日の指名とし、両社は6つの分科会を組んで協業の中身を詰めている[13][14][15]

優先株式と減資を組み合わせた資本増強

資本増強は普通株式だけでは足りなかった。みずほ銀行・日本政策投資銀行・福岡銀行・西日本シティ銀行の四行に対し、A種優先株式30億円とB種優先株式30億円を割り当てている。配当率はA種が8.5%、B種が4.5%で5年経過後に8.5%へ上がる設計とし、いずれも議決権を持たせなかった。即時の資本増強は160億円、新株予約権による潜在的な増強は78億円であった[16][17]

同時に資本準備金と利益準備金を減らし、繰越利益剰余金の欠損を填補した。調達資金の使途は総額約235億円で、店舗改装36億円、店舗新設25億円、食品工場25億円、システム25億円、海外事業10億円、運転資金64億円、借入金返済50億円と配分している。機内食子会社は双日が60%を握る会社へ移り、連結の範囲から外れた。創業から70年続けた事業が、持分法適用会社になっている[18][19][20]

結果

筆頭株主の交代と黒字転換

2021年12月末、双日は持株比率13.3%でロイヤルホールディングスの筆頭株主になった。前年の筆頭株主は6.46%を持つ公益財団法人江頭ホスピタリティ事業振興財団で、上位株主の顔ぶれが一段変わっている。自己資本は209億円から340億円へ戻った。経常損失も198億円から45億円へ縮み、2022年12月期には経常利益21億円で通期黒字に復している[21][22][23]

提携の効き目について、2022年3月に社長へ就いた阿部正孝氏は「双日のネットワークや意思決定のスピード感はわれわれにはないものだ」と述べている。取引先やサプライヤーの紹介にとどまらず、表に見える形で具体的に動き始めたものが多いという評価であった。2022年1月には双日と食品素材メーカーのユニテックフーズを加えた3社で戦略的業務提携契約を結び、植物肉を使う製品の販売にも入っている[24][25]

提携を軸にしたアライアンス戦略へ

協業は海外で形になった。2021年8月に双日との合弁でシンガポールにRoyal Sojitz Internationalを設立し、2023年1月には双日ロイヤルカフェを立ち上げてコスタコーヒーの店舗を国内で開いている。2024年3月に双日・銚子丸と米国法人SUSHI-TEN USAを、同年8月にはベトナムでRoyal Sojitz Vietnamを設立した。会社自身も、アライアンスは双日との資本業務提携をてこに積極化したと総括している[26][27]

2025年12月期の連結売上高は1,655億円、経常利益は79億円で、いずれも過去最高となった。自己資本は547億円、自己資本比率は39.2%まで戻っている。もっとも利益の内訳を見ると、経常利益79億円のうち68億円はホテル事業が稼いだものであった。双日の持株比率は19.97%へ上がり、連結従業員数は2,383人で2019年の2,706人には届いていない[28][29][30]

出典・参考
  • ロイヤルホールディングス「双日株式会社との資本業務提携および今次ファイナンスに関する説明資料」(2021年2月15日)
  • ロイヤルホールディングス 2020年12月期 決算説明資料(2021年2月15日)
  • ロイヤルホールディングス 2025年12月期 決算説明会資料(2026年2月17日)
  • ロイヤルホールディングス 統合報告書2021 エッセンシャル版
  • 週刊東洋経済 2022年5月14日号「トップに直撃 ロイヤルホールディングス 社長 阿部正孝」
  • ロイヤルホールディングス 有価証券報告書(2020年12月期〜2025年12月期・連結)

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