あおぞら銀行大和証券グループ本社を引受先とする519億円の第三者割当増資と資本業務提携

独立を保つか、大手証券を株主に迎えるか——15年ぶりの赤字が迫った資本の入れ替え

時期 2024年5月
意思決定者(推定) 大見秀人 あおぞら銀行 社長
論点 資本の増強と提携相手の選択
概要
2024年3月期に米国オフィス向け融資の引当などで純損失499億円を計上したあおぞら銀行は、2024年5月13日、大和証券グループ本社を引受先とする519億円の第三者割当増資と資本業務提携を発表した。7月1日に増資を実行し、大和証券グループ本社は議決権ベースで2割超を持つ筆頭株主となった。
背景
米国のオフィス市況悪化で担保物件の価格が下がり、2024年3月期に米国オフィス向け融資で400億円以上の貸倒引当金を計上した。外国債券の評価損処理も重なって15年ぶりの最終赤字となり、CET1比率は7.1%へ低下、下期配当はゼロとなった。旧村上ファンド系の投資会社が株式を買い集め、2月末には筆頭株主となっていた。
内容
増資により大和証券グループ本社の議決権は当初15.58%となり、同年6月には旧村上ファンド系が持つ全保有株を約250億円で買い取って約20%へ、2025年3月末の有価証券報告書では被所有23.9%となった。企業買収や不動産のストラクチャードファイナンス、M&Aアドバイザリー、金融商品販売の各分野で協業する枠組みである。
含意
2027年度に業務純益で100億円の提携効果を上げる目標を掲げ、現場のワーキンググループが延べ200回を超える会議で積み上げた数字だと説明した。2025年3月期は純利益205億円で黒字に戻り、2025年度からの3カ年計画では2027年度の純利益330億円を掲げている。本稿の時点では、個人預金の流出という調達面の課題が残る。
筆者の見解

筆者の見解

配当を止めた3カ月半後に519億円の増資を決めたという順番が、この判断の性格を語っている。あおぞら銀行は公的資金完済後の2016年3月期から配当性向約50%を掲げ、四半期配当で個人株主を集めてきた銀行で、その看板を下ろしてなお資本が足りなかった。相手が大和証券グループ本社になったのは、上場企業約4,000社の半数で幹事を務める顧客基盤という取引上の理由が大きいとみられるが、再上場の主幹事であり社長同士が10年来の間柄という関係の近さも、短い時間で条件をまとめる助けになったと考えられる。

ただ、提携で埋まったのは資本と紹介経路であって、収益構造そのものではない。2027年度に業務純益100億円という提携効果は現場の200回超の会議から積み上げた見積もりで、実額としてはこれから確かめられる段階にある。しかも本稿の時点で、高い金利で集めた個人預金は1年に3,763億円流出し、預金利回り0.43%は中期経営計画の前提を上回る。20年以上どこの系列にも属さずに来た銀行が独立を手放して得たのは、時間と選択肢であって、稼ぐ力の保証ではなかったといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

米国オフィスと外債で同時に出た損失

2024年3月期、あおぞら銀行は499億円の最終赤字を計上した。米国の商業用不動産向け融資で貸倒引当金を積み増し、保有する有価証券の含み損を処理した結果である。大見秀人社長は、金利上昇と在宅勤務によるオフィス空室率の悪化を主因に挙げ、厳しい状況が今後2年続くという前提のもとで米国オフィス向け融資に400億円以上の貸倒引当金を計上したと説明している[1][2]

赤字は配当政策を直撃した。あおぞら銀行は公的資金完済後の2016年3月期から配当性向約50%を下限に置き、四半期配当を続けてきたが、2024年3月期は当初計画の年154円から第3・第4四半期の配当をゼロへ引き下げた。3月末のCET1比率は7.1%で、市場が十分性の目安とする8%を割り、下期配当の総額約90億円を支払う余力は残っていなかった[3][4]

赤字公表の直後に動いた株主

株主の側が先に動いた。旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスと野村絢氏があおぞら銀行株の取得を始めたのは2024年2月2日で、前日に発表された赤字決算を受けて株価が約3年ぶりの安値圏に入った日であった。2月27日時点で両者の保有比率は計8.9%に達し筆頭株主となり、投じた資金は推計200億円以上とされた。保有目的には「投資及び状況に応じて経営陣への助言、重要提案行為を行う」と掲げていた[5][6]

銀行株には特有の制約があった。議決権の20%以上を握るには金融庁の認可が必要で、50%超なら銀行持株会社への移行が要る。買い増しで経営権をちらつかせる戦い方は採りにくく、一方で赤字決算後のあおぞら銀行には、プレミアムを付けて自社株を買い戻す財務の余力もなかった。同時代の誌面は、当初から第三者への転売が念頭にあり、買い手候補にはSBIホールディングスの名が挙がっていると伝えている[7][8]

決断

519億円の第三者割当増資

2024年5月13日、あおぞら銀行は大和証券グループ本社から出資を受け入れ、資本業務提携すると発表した。第三者割当増資で調達する額は519億円、大和証券グループ本社は議決権ベースで15.58%を持つ筆頭株主となり、社外取締役1人を送る形とした。協業の対象は富裕層向けのコンサルティングや商品開発、不動産ビジネスなどの分野に置かれた[9][10]

増資は資本の穴を直接埋めた。2024年9月末のCET1比率は3月末比で1.8ポイント上がり、そのうち1.3ポイント程度が増資によるもの、残る0.5ポイント程度が為替水準による外貨建て資産の目減りや米国オフィス案件の処理の進展によるものと同行は説明している。財務基盤の強化を理由に配当を止めた直後の増資であり、資本増強が喫緊の課題であったことを裏づける[11][12]

アクティビスト保有株の引き取りと2割超の議決権

提携の翌月、株主構成の整理が進んだ。2024年6月10日、大和証券グループが旧村上ファンド系の投資会社などが持つあおぞら銀行株の全部を取得することが明らかになり、取得価格は250億円程度、これにより持分は約20%へ上がった。2025年3月末の有価証券報告書では、大和証券グループ本社はあおぞら銀行の「その他の関係会社」として被所有23.9%と記載され、同社が指名した取締役1人が選任されている[13][14]

相手方を選んだ理由について、大見秀人社長は「社風が似ている」と述べている。大和証券グループ本社の荻野明彦社長とは互いに経営企画部長だった10年以上前からの付き合いがあり、再上場時の主幹事証券も大和であった。狙いは顧客基盤の借用にあり、大見社長は法人取引先が少ないことを認めた上で、大和証券が幹事を務める上場企業から紹介を受けて融資につなげたいと語っている。もっとも、提携の公表時には赤字に陥った同行への救済の色がにじんだと同時代の誌面は記している[15][16]

結果

100億円という提携効果の見積もり

提携の効果として掲げたのは、2027年度に業務純益で100億円という数字であった。あおぞら銀行は、この目標は現場のワーキンググループによる延べ200回を超える会議のなかで議論されたボトムアップの数字だと説明し、資金利益と非資金利益の割合は半々程度になると見込んだ。当てにしたのは、企業が事業ポートフォリオの見直しを進めるなかで増えるLBOローンや不動産のノンリコースローン、不振企業向けの再生ファイナンスであり、大見社長はいずれも同行が最も力を入れてきた分野だと述べている[17][18]

運用の方針も組み替えた。大見社長は「ここへ来て海外資産を増やしすぎたと反省している」と述べ、米国オフィス向け融資は新規実行より債権回収を優先し、北米企業向け融資も残高を現水準に保つとした。国内金利の上昇を受けて、今後は国内向け融資と円債の運用を広げる方針である。2025年8月には大和証券グループと200億円規模の企業再生ファンドを設立し、提携後初の共同事業とした[19][20]

本稿の時点での数字と、調達面の課題

業績は黒字に戻った。2025年3月期の経常収益は2,314億円、親会社株主に帰属する当期純利益は205億円で、2025年度から始まる3カ年の中期経営計画では、LBOローンなどのストラクチャードファイナンスを収益の柱に据え、2027年度の純利益330億円を掲げた。2025年度の中間決算では、貸出関連手数料やGMOあおぞらネット銀行の手数料が伸びて非資金利益が111億円の増益となり、中間純利益は前年同期比16億円増の136億円であった[21][22]

残った課題は資金の集め方であった。あおぞら銀行の個人預金は1年間で3,763億円減り、減少率は1割を超えた。住宅ローンもクレジットカードも扱わず、マイナス金利の時代に高い金利を付けて集めた預金は、金利が復活すると、より高い金利を示す銀行へ流れた。9月中間期の預金利回りは0.43%で、中期経営計画が前提とする追随率75%を上回る水準にある。中計は3.1兆円の個人預金を3.7兆円へ広げる絵を描いている[23][24]

出典・参考

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