あおぞら銀行資本再構成プランによる公的資金の分割返済と、2015年の前倒し一括完済

普通株への強制転換を受け入れるか、減資して分割で返すか——2度目の崖から完済までの3年

時期 2012年8月
意思決定者(推定) ブライアンF.プリンス馬場信輔 あおぞら銀行 社長・あおぞら銀行 社長(2012年9月就任)
論点 公的資金の返済と資本政策
概要
2009年3月期に純損失2,425億円を計上したあおぞら銀行は、政府に残る優先株1,794億円の大半が2012年10月に普通株への強制転換期限を迎える前に、2012年8月に資本再構成プランを公表した。減資と優先株の買い戻し・特別優先配当で最長10年かけて返す枠組みを組み、2015年6月に残額を一括返済して完済した。
背景
サーベラス期に積み上げた海外クレジット投資がリーマン・ショックで崩れ、2009年3月期はヘッジファンド投資で476億円、GMAC向け投資で358億円の損失を計上した。与信関連費用は1,345億円に膨らみ、公的資金の追加投入も金融当局内では慎重論が根強く、返済の道筋を自力で示す必要があった。
内容
2012年9月27日の臨時株主総会で減資を承認し、資本金を約4,200億円から1,000億円へ引き下げた。同年10月に優先株の一部を227億円で買い戻して償却し、以後は毎年約205億円の特別優先配当で返す設計で、要返済額は2,276億円とされた。普通株転換による希薄化は避けられた。
含意
2015年3月27日に前倒し返済の方針を公表し、6月29日に残額1,434億円を一括返済した。注入総額3,200億円に対し最終的な返済額は3,550億円となった。同じ長信銀出自の新生銀行は完済のめどを立てられず、公的資金を受けた大手行で残るのは同行のみとなった。
筆者の見解

筆者の見解

2012年10月という期限が、この判断のかたちを決めた。1,553億円を返せなければ政府保有の優先株は普通株に変わり、国が普通株主として経営に加わる。あおぞら銀行が選んだのは、資本金を4,200億円から1,000億円へ削って原資を作り、227億円の買い戻しと毎年205億円の特別優先配当という現金の形で返す道であった。減資は聞こえのよい施策ではないが、希薄化と国の関与を同時に避けられる手立ては、当時ほかに見えていなかったとみられる。

もっとも、3年で完済できたのは自力だけの成果ではない。株価の回復という前提が満たされ、筆頭株主のサーベラスが約1,500億円で持分を降りたことも、返済と資本構成の整理を同時に進める条件になった。新生銀行が優先株を普通株に転換されていたために相対での分割返済に持ち込めなかった事実を並べると、完済の差は経営努力の差というよりも、破綻処理の時に公的資金を優先株で入れたか普通株で入れたかという設計の差でもあったといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

海外クレジットが招いた2度目の崖

2009年3月期、あおぞら銀行は2,426億円の連結最終赤字を計上して無配に転落した。赤字の主因は、再民営化以来力を入れてきた有価証券投資と代替投資の行き詰まりで、ヘッジファンド投資だけで476億円、米ゼネラル・モーターズの金融子会社GMAC向け投資で358億円の減損を積み増した。リーマン・ブラザーズ向け与信でも267億円の損失が出て、与信関連損失の総額は1,345億円に膨らんだ[1][2]

処理の後にも残高は残った。2009年3月末で非上場の外国債券・証券が1,107億円、企業再生ファンドなどへの組合出資金が866億円、不動産ノンリコースローンが5,560億円、LBO融資が4,520億円あり、総資産6兆円に対してリスク性資産の比重が重かった。ブライアン・プリンス社長代行は決算会見で「今年度以降の収益力回復に向け、極めて優位な態勢を整備することができた」と述べたが、市場関係者からは再度の赤字決算への懸念が出ていた[3][4]

返済の壁と、迫る転換期限

巨額損失で自己資本比率は1年前の14.29%から11.60%へ下がり、中核的自己資本は5,246億円にとどまった。当時のあおぞら銀行には優先株で1,800億円(簿価)の公的資金が残っており、金融庁幹部は追加投入について「まずはそれをきちんと返済してからというのがスジ」と述べていた。与謝野馨金融相も「(追加投入には)大きな説明の根拠が必要だ」と歯止めをかける意向を示していた[5][6]

期限も迫っていた。2012年3月の週刊東洋経済は、公的資金1,794億円が注入されたまま返済されておらず、うち1,553億円を同年10月までに返済できなければ国が持つ優先株が普通株に転換され、経営に対する国の関与が強まると伝えている。転換が起きれば既存株主の持分は薄まり、外国人幹部の報酬や行員の年収10〜15%削減とあわせて、経営の自由度そのものが問われる状況にあった[7][8]

決断

減資と特別優先配当で組んだ返済の枠組み

2012年8月、あおぞら銀行は資本再構成プランを公表した。9月27日の臨時株主総会で減資が承認され、資本金は約4,200億円から1,000億円へ引き下げられた。要返済額は2,276億円とされ、同年10月に優先株の一部を227億円で買い戻して償却し、以後は毎年約205億円の特別優先配当を政府へ支払う設計で、最長10年での完済を予定した[9][10]

この枠組みが避けたのは、優先株の普通株への強制転換であった。転換されれば政府が普通株主として経営に加わり、既存株主の持分も薄まる。買い戻しと特別優先配当という現金での返済に切り替えることで、希薄化を伴わずに国の関与を後退させる道を選んだことになる。3年後には返済残高が優先株の時価を下回り、株の買い戻しによる前倒し返済も可能になる設計であった[11][12]

社長交代と、筆頭株主の退出

プランの承認と同じ2012年9月、経営体制も入れ替わった。ブライアン・プリンス社長が会長に就き、馬場信輔副社長が社長に昇格した。海外クレジットに傾いた運営を主導した外資出身の社長から、返済と国内収益の積み上げを担う体制へ移る人事であった[13][14]

返済計画は株主構成の整理も伴った。プランをまとめた2012年9月、筆頭株主のサーベラスは自社株買いに応じる意向を示し、翌2013年1月7日には保有株の大半を国内外の市場で売却すると発表した。同日終値を基準にした売却額は約1,500億円で、議決権比率は約57.8%から約7.7%へ下がった。返済の枠組みと引き換えに、外資が過半を握る資本構成も解けた[15][16]

結果

10年の計画を3年で終える

最長10年としていた返済は3年で終わった。2015年3月27日、あおぞら銀行は残る公的資金1,639億円を前倒しで返済する方針を正式に公表し、6月にも一括返済するとした。株価が堅調に推移し、財務の健全性を保てるという条件が満たされたことが前提であった。6月29日、残額1,434億円の一括返済を発表し、注入された3,200億円に対する返済総額は3,550億円となった[17][18]

完済の年、あおぞら銀行の親会社株主純利益は437億円であった。同じ6月にはりそなホールディングスも完済し、公的資金を受けた大手行で残るのは新生銀行だけとなった。完済と同じ日、GMOインターネットと共同でネット銀行の設立を検討していることも発表しており、返済の終了と次の事業投資が同じ会見に並んだ[19][20]

同じ出自の新生銀行との差

同じ1998年に特別公的管理へ入った新生銀行は、完済のめどを立てられなかった。政府は同行への公的資金の回収で5,000億円の確保目標額を置いており、返済済みの1,506億円を除く約3,500億円を政府保有株数で割ると1株745円になる。2015年4月23日の株価は258円で、3倍近い値がつかなければ目標額に届かない計算であった。優先株のまま政府と相対で分割返済できたあおぞら銀行と、普通株に転換されていた新生銀行の差であった[21][22]

差がついた理由として同時代の誌面が挙げたのは、稼ぎ方の違いであった。新生銀行は公的資金の注入後にアプラス・シンキ・レイクなど個人向け金融会社の買収を重ねたが、貸金業法改正による過払い利息の返還などで多額の損失を出した。これに対しあおぞら銀行は大型買収をほとんど行わず、利益を積み上げて返済にめどをつけたと評された。新生銀行単体の剰余金2,784億円は、あおぞら銀行のほぼ半分にとどまっていた[23][24]

出典・参考

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