三洋電機 ゴールドマンら3,000億円増資 転換可能優先株式3,000億円の第三者割当増資と、議決権のほぼ半分の譲り渡し

更新:

時期 2006年1月
当時の社長 井植敏雅
論点 財務危機下の資本増強と再建体制
何をなぜ決めたか
概要

2006年1月25日に大和証券エスエムビーシープリンシパル・インベストメンツ、ゴールドマン・サックス・グループ、三井住友銀行の3社と株式引受契約を締結し、2月24日の臨時株主総会の承認を経て、3月14日に第1回A種優先株式182,542,200株と第1回B種優先株式246,029,300株を1株700円で発行した。総額3,000億円。

払込のうち半分は資本金へ、半分は資本準備金へ組み入れられ、資本金は1,722億円から3,222億円になった。

背景

液晶・半導体・太陽電池・二次電池・デジタルカメラ・有機ELへの投資が同時に競争劣位へ陥り、2004年10月の新潟県中越地震で半導体の主力製造子会社である新潟三洋電子が被災した。2005年3月期に1,715億円、2006年3月期に2,057億円の連結最終赤字を計上し、自己資本比率は2004年3月期の18.8%から11.1%まで低下した。

内容

3,000億円は普通株式ではなく、優先株式1株につき普通株式10株の転換比率を持つ優先株式で入った。A種は株主総会で議決権を持ち、その1,825,422個は総株主の議決権3,665,858個のほぼ半分にあたる。B種は議決権を持たず、三井住友銀行への割当は68,496,100株がB種に寄せられた。

自己資本は4,029億円と前期末比1,146億円増え、自己資本比率は7.6ポイント上昇して18.7%となった。

含意

増資を実施した2006年3月期の個別財務諸表には、継続企業の前提に関する重要な疑義が注記された。単体の当期純損失は3,609億円。構造改革費用849億円と固定資産の減損損失713億円を計上しており、資本は入っても収益構造は動いていない。優先株式は2009年12月までに全株が普通株式4,285,715千株へ転換され、発行済株式総数は6,158,053千株に膨らんだ。

いつ何が起きたか 10件
筆者の見解
筆者の見解

資本で時間は確保できても、構造は変えられなかった

この増資は、資本の注入であると同時に議決の譲り渡しであったとみられる。3,000億円は普通株式ではなく優先株式で入り、そのうちA種には議決権が付いた。総株主の議決権3,665,858個のうち1,825,422個が、払込の日に3社の手へ渡っている。自己資本比率は11.1%から18.7%へ戻ったが、会社は数字の回復と引き換えに、自らの意思決定の半分を外へ預けた。金融資本が主導する再建とは、支援の形をとった支配の移転でもある。

もっとも、資本で買えたのは時間だけだった。増資を実施した期の個別財務諸表には継続企業の前提への疑義が注記され、構造改革費用849億円と減損損失713億円が示すとおり、稼げない事業設計そのものは残った。自己資本は2011年3月期に640億円まで痩せている。優先株式は2009年12月に全株が普通株式へ転換され、発行済株式総数は6,158,053千株と3倍を超える規模に膨らんだ。買った時間を構造改革に使い切れなかったことが、独立の断念という次の決断を呼び込んだのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
第三者割当増資の条件

第三者割当増資の条件

科目 概要 備考
株式引受契約の締結 2006年1月25日 構造改革の加速とコア事業の成長戦略に必要な設備投資等を行うためとしている
臨時株主総会の承認 2006年2月24日 A種優先株式182,600,000株・B種優先株式246,100,000株の発行が承認された
払込期日 2006年3月14日 配当起算日も同じ日
発行した株式(A種) 第1回A種優先株式 182,542,200株 1単元は100株。普通株式の1単元1,000株の10分の1
発行した株式(B種) 第1回B種優先株式 246,029,300株 1単元は100株。普通株式の1単元1,000株の10分の1
発行価額 1株につき700円 A種・B種とも同額。うち350円は資本に組み入れない
発行価額の総額 300,000百万円 A種127,780百万円、B種172,220百万円
大和証券エスエムビーシープリンシパル・インベストメンツへの割当 A種89,804,900株・B種88,766,600株 同社の100%子会社へ割り当てる場合を含む
ゴールドマン・サックス・グループへの割当 A種89,804,900株・B種88,766,600株 オーシャンズ・ホールディングス有限会社が引き受けた
三井住友銀行への割当 A種2,932,400株・B種68,496,100株 議決権のあるA種はほとんど取らず、B種に寄せている
資本金の増加額 150,000百万円 増加後の残高は322,242百万円
資本準備金の増加額 150,000百万円 増加後の残高は384,771百万円
普通株式への転換比率 優先株式1株につき普通株式10株 A種は2007年3月14日以降、B種は払込期日の翌日以降、いずれも2026年3月13日まで
A種優先株式の議決権 1,825,422個 総株主の議決権は3,665,858個。B種優先株式は議決権を有しない
転換により交付される普通株式 4,285,715千株 全株が転換されると発行済普通株式総数は6,158,053千株になる

出所:三洋電機 有価証券報告書 第82期(2006年3月期)【株式の総数等】【発行済株式総数、資本金等の推移】【議決権の状況】連結財務諸表注記19 優先株式

自己資本と総資産の推移

三洋電機:自己資本と総資産の推移

(百万円) 自己資本総資産 備考
2002年3月期 535,7052,683,930
2003年3月期 426,0262,686,967
2004年3月期 497,3022,643,627
2005年3月期 288,2682,600,677 自己資本比率は11.1%。新潟県中越地震の被災と減損で自己資本が1年で2,090億円減った
2006年3月期 402,8922,154,837 第三者割当増資3,000億円で自己資本は1,146億円増加。自己資本比率は18.7%
2007年3月期 312,0081,970,940 2007年3月期以降は当社株主資本。少数株主持分を含む純資産額は335,854百万円
2008年3月期 308,0431,683,837
2009年3月期 146,4541,345,403
2010年3月期 108,3181,391,273 優先株式が全株転換された期。当社株主資本比率は7.8%
2011年3月期 64,0891,117,093
自己資本と総資産
自己資本(百万円)負債(百万円)自己資本率(%)

出所:三洋電機 有価証券報告書 第82期(2006年3月期)・第87期(2011年3月期)【主要な経営指標等の推移】

発行済株式数の推移

三洋電機:発行済株式数の推移

(千株) 普通株式A種優先株式B種優先株式 備考
2003年3月期 1,872,338−−
2004年3月期 1,872,338−−
2005年3月期 1,872,338−−
2006年3月期 1,872,338182,542246,029 3月14日に優先株式を1株700円で発行。転換比率は1株につき普通株式10株
2007年3月期 1,872,338182,542246,029
2008年3月期 1,872,338182,542246,029
2009年3月期 1,872,338182,542246,029
2010年3月期 6,158,05300 2009年9月18日から12月21日に全株が転換され、12月25日に消却された
2011年3月期 6,158,05300 2011年4月1日に自己株式33,965,792株を消却し6,124,087千株となった

出所:三洋電機 有価証券報告書 第82期(2006年3月期)・第86期(2010年3月期)・第87期(2011年3月期)【発行済株式総数、資本金等の推移】

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参考文献
出典・参考
  • 三洋電機 有価証券報告書(2011年3月期)【沿革】
  • 三洋電機 有価証券報告書「第82期(2006年3月期)【株式の総数等】【発行済株式総数、資本金等の推移】【議決権の状況】連結財務諸表注記19 優先株式」
  • 三洋電機 有価証券報告書「第82期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】【財政状態及び経営成績の分析】」
  • 三洋電機 有価証券報告書「第83期(2007年3月期)【発行済株式総数、資本金等の推移】」
  • 三洋電機 有価証券報告書「第86期(2010年3月期)【発行済株式総数、資本金等の推移】」
  • 三洋電機 有価証券報告書「第87期(2011年3月期)【主要な経営指標等の推移】」

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