三井海洋開発商船三井を14.86%の株主に迎えたオフショア事業の業務提携
案件の相手を株主にした150億円
この決議で選ばれたのは調達の金額ではなく、割当先であった。150億8,874万7,200円は、2年後の2025年12月期の営業利益685億円の4分の1に満たない。その資金のために既存株主の持分を21.16%薄め、前日終値1,404円から9.97%引いた1株1,264円で発行している。借入と社債は自己資本比率を下げ、公募増資は時間と費用がかかるうえ資本業務提携を伴わない——開示に並ぶ消去法は、手段を絞る説明であると同時に、相手を絞る説明でもあったとみることができる。
案件の相手から資本を入れることは、その相手を案件の外でも株主にすることであった。商船三井は三井海洋開発が設立する特別目的会社へ以前から共同で出資しており、同じ設備に金を置く相手が発行済株式の14.86%を持てば、金融機関から見たチャータープロジェクトの信用力は上がる。同じ理由で、提携契約には商船三井が取締役候補者1名と執行役員候補者1名を指名すると書き込まれた。案件が増えているあいだ、案件の相手が株主であることの代金は表に出ない。資本で結んだ提携が終わる日を決めるのは、契約に書かれた5%という線であって、三井海洋開発の側ではないとみられる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
1件あたりの資金が重くなったチャーター事業
三井海洋開発の収益の柱は、FPSOを建造して売り切る事業ではなく、特別目的会社を通じて設備を保有し石油会社へ貸し出すチャーター事業にある。この方式では同社が設立した特別目的会社へ投融資する必要があり、案件が大きくなるほど手元資金の負担が増す。海洋石油・ガス開発の大規模化と大水深域への移行が進み、1件あたりの規模と必要資金が膨らんでいた[1]。
資金需要が増えた時期に、自己資本は痩せていた。2019年12月期から2021年12月期まで3期続けて赤字を計上し、2021年12月期は親会社の所有者に帰属する当期損失が504億円に達している。2022年12月期に黒字へ戻したものの、1株当たり親会社所有者帰属持分は2020年12月期の15.06米ドルから2022年12月期は14.40米ドルへ目減りしていた[2]。
すでに同じ案件に出資していた海運会社
商船三井は初対面の相手ではなかった。同社は三井海洋開発がFPSOの保有・リース・オペレーションのために設立する特別目的会社へ、以前から共同で出資していた。深海の生産比率が高まりFPSOの需要拡大が見込まれるなか、海運で培った経営資源と顧客基盤を借りれば、海外のコントラクターと競う力が増すと三井海洋開発は見ていた[3]。
決断
借入ではなく資本で調達する
他の手段は検討のうえで退けられた。借入や転換社債を含む社債は負債を増やして自己資本比率を下げるため財務体質の維持・強化に資さず、公募増資や株主割当は時間と費用がかかるうえ資本業務提携を伴わない。新株予約権は株価次第で必要額を調達できない。三社の関係を強めながら確実に自己資本を厚くする手段として、第三者割当が選ばれた[6]。
21%の希薄化と引き換えに得たもの
発行株式数は増資前の発行済普通株式総数56,408,000株の21.16%にあたり、既存株主の持分は目に見えて薄まった。発行価額1,264円は決議前日の終値1,404円から9.97%引いた水準で、割当先が2か月の株価下落を引き受ける立場にあることなどを踏まえて協議で決めた。監査役4名は、日本証券業協会の指針に沿い特に有利な金額に該当しないとの意見を出している[7]。
結果
同率主要株主から単独筆頭株主へ
増資後3期の伸び
調達した資金の使い道であるチャーター事業は、そのまま業績に表れた。連結売上収益は2022年12月期の3,636億円から2023年12月期5,070億円、2024年12月期6,621億円、2025年12月期7,171億円へ伸び、営業利益は100億円、274億円、511億円、685億円と積み上がった。親会社の所有者に帰属する当期利益も2025年12月期に565億円へ届いている[11]。
提携の中身も動いた。三井海洋開発は2022年8月に東洋エンジニアリングと合弁でEPCI事業会社を設立し、2024年9月にはインドにトップサイドエンジニアリングと購買支援の合弁会社を置いた。ガイアナ・セネガル・メキシコと拠点も増えている。資本を厚くして案件を取り、取った案件で拠点と合弁を増やす循環が、増資後の3期に回った[12]。
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- 三井海洋開発 有価証券報告書(各年12月期・連結・IFRS)
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- 三井海洋開発 有価証券報告書【沿革】
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同じ問いに直面した会社
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