山下通郎氏が社長就任(2024年・石油資源開発の決断)

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論点官庁出身から社内出身へ社長を替えるか
石油資源開発:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
通商産業省出身5代からの交代と株主還元方針の見直し

何をなぜ決めたか:通商産業省出身5代からの交代と株主還元方針の見直し

概要

2024年4月1日、石油資源開発は1982年入社の山下通郎氏を代表取締役社長社長執行役員に据えた。1995年6月に若杉和夫氏が就任して以降、棚橋祐治氏・渡辺修氏・岡田秀一氏・藤田昌宏氏と5代29年にわたり通商産業省出身者が務めてきた社長職を、社内出身者が継いだ。前任の藤田昌宏氏は代表取締役会長へ移り、官庁出身の会長と社内出身の社長という体制が組まれた。

選定は社外取締役が過半数を占める指名・報酬委員会が選任議案の内容を審議し、その結果を踏まえて取締役会が決議した。交代の個別の理由は公表されていない。

背景

1995年以降の社長はいずれも通商産業省の出身で、棚橋祐治氏は7年、渡辺修氏は8年、岡田秀一氏は3年4か月、藤田昌宏氏は4年6か月を務めた。2003年12月の東証上場後も政府が最大株主として残り、2023年3月末の現預金は1,919億円へ積み上がる一方、株価は純資産を下回る水準に置かれていた。

2023年5月の決算説明会では、キャッシュの積み上がりとPBR1倍割れに即効策は無いとの認識が示されている。事業構造を大きく変えることはできず、E&P案件の実現による利益貢献でPBRの改善を図るという説明であった。

内容

就任後は海外E&P事業のコア資産構築を最優先課題に掲げ、米国での自社取得へ方針を改めた。2025年5月にはムーディーズによる格付アウトルックの変更を受けて英領北海資産のダイベストメントと政策保有株式の売却を進める考えを示し、同月13日に年間配当金の下限を1株当たり10円から40円へ引き上げた。

2025年3月期にはINPEX株式の半数にあたる2,672万株を売却し、売却価額は539億円に上った。政策保有する上場株式の貸借対照表計上額は1,297億円から583億円へ減少している。

含意

就任1年目を終えた社外取締役の座談会で、杉山美邦氏は『外部招聘が続いてきた当社にとって初のたたき上げ社長ということで、長年のキャリアに基づき業務に精通し、経営トップとしての適格性を備えている』と、社内出身であることの利点を挙げている。2026年4月の経営計画は2031年度に生産量10万boe/d・税引後事業利益400億円を掲げ、生産量の7割を米国事業に見込む。株主還元の拡充はこの生産量目標の達成を前提とされ、政府が保有する約38%の株式は当面維持する方針が示された。

いつ何が起きたか7件
当時の取締役11名

当時の取締役(2023年6月株主総会決議)

考察:国策の出自と株価のあいだ
考察

考察:国策の出自と株価のあいだ

社内出身の社長の登場を、官僚人事からの解放と読むと事実から離れる。前任の藤田昌宏氏は代表取締役会長として残り、政府は約38%を持つ最大株主のままであった。山下通郎氏に託されたのは支配関係の組み替えではなく、1,919億円まで積み上がった現預金と純資産を下回る株価に、社内の言葉で答えを出す仕事であったと思われる。1982年入社で財務畑を歩み、東証上場の準備実務を担った経歴は、その役回りに沿うものであった。

もっとも、この交代で示されたものの多くは計画の数字にとどまる。2031年度の生産量10万boe/dは7割を米国事業に見込む先の目標であり、達成は新規資産の取得次第である。下限配当の40円への引き上げは投資家の不安を和らげる措置であって、株主還元の拡充そのものは生産量目標の達成後へ送られた。国策会社の出自を抱えたまま市場と向き合う作業の成否は、数字が出るまで測れないといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る2表

数字で見る

図と表

石油資源開発:政策保有する上場株式の推移

政策保有の上場株式(百万円)
石油資源開発:政策保有する上場株式の推移
(百万円)政策保有の上場株式備考
2020年3月期68,5904銘柄。以降も銘柄数は4で変わらない
2021年3月期84,088
2022年3月期79,327
2023年3月期76,530
2024年3月期129,734保有株式数は前期から変わらず、増加は保有銘柄の株価上昇による
2025年3月期58,387山下通郎氏が社長就任。INPEX株式の半数を売却し、売却価額は539億円
2026年3月期138,447株式数は据え置き。増加は保有銘柄の株価上昇による
出所:石油資源開発 有価証券報告書 第50期〜第56期【株式の保有状況】
出所:石油資源開発 有価証券報告書 第50期〜第56期【株式の保有状況】

交代の経緯と対応

交代の経緯と対応
科目概要備考
交代の決議指名・報酬委員会の審議を経て取締役会で決議社外取締役が過半数を占める委員会が選任議案の内容を審議し、その結果を踏まえた
就任日2024年4月1日打診は2023年12月。2003年12月の東証上場から20年の節目にあたった
新社長山下通郎氏(1982年4月当社入社)2013年6月執行役員、2018年6月取締役常務執行役員、2022年4月取締役専務執行役員
新社長の役職取締役専務執行役員から代表取締役社長社長執行役員へ日本海洋石油資源開発の代表取締役社長を兼務(2024年4月)
前社長藤田昌宏氏(1977年4月通商産業省入省)2008年7月経済産業省貿易経済協力局長、住友商事代表取締役副社長を経て2019年6月入社
前社長の役職代表取締役社長社長執行役員から代表取締役会長へ社長在任は2019年10月から2024年3月までの4年6か月
交代の理由個別の理由の公表なし資質と業績・人格・識見・推進力の総合勘案という基準が示されるにとどまる
社長の選定基準統率力・行動力・コミュニケーション能力・理解力・柔軟性業績、人格、識見、経営計画に対する推進力などを総合的に勘案する
指名・報酬委員会取締役会の下に設置、2023年度は4回開催委員長は当時の代表取締役社長 藤田昌宏氏、構成員5名のうち3名が社外取締役
委員長の交代2024年6月に社外取締役へ伊藤鉄男氏が就任し、2025年6月からは山下ゆかり氏。いずれも社外取締役
取締役の任期1年2024年6月26日の選任後1年以内に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結まで
出所:石油資源開発 有価証券報告書 第54期(2024年3月期)〜第56期(2026年3月期)【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの概要】、統合報告書2024・2025
出所:石油資源開発 有価証券報告書 第54期(2024年3月期)〜第56期(2026年3月期)【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの概要】、統合報告書2024・2025
当時の取締役11名

当時の取締役(2023年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考

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