ラスラファンC発電事業への出資(2008年・四国電力の決断) 更新:2026/07/22 論点 海外の発電事業に出資するか 四国電力:業績の推移 売上高(億円)営業利益率(%) カタールの発電造水事業を足がかりとした海外電力事業への進出 何をなぜ決めたか:カタールの発電造水事業を足がかりとした海外電力事業への進出 概要 四国電力は2003年度から海外での事業活動に着手し、2008年7月、カタールのラスラファンC発電・造水プロジェクトに出資比率5%で参画した。同社にとって海外で初の独立系発電事業(IPP)であり、出力273万kW・造水29万トン/日の設備は2011年4月に全面運転を開始した。 背景 2000年の特別高圧を皮切りに国内の小売自由化が段階的に進み、地域独占を前提に需要の伸びへ設備を合わせる経営が成り立ちにくくなっていた。国内で新たな電源を建てる余地も限られ、規模を伸ばす場を区域の外に求める必要があった。 内容 最初の海外活動は中国新疆ウイグル自治区での太陽光発電の実証研究など技術協力・調査であった。そこからIPPへの出資に進み、カタールでは5%という小口の持分で参画しつつ、2009年8月から2012年4月にかけて保守課長らの技術者を現地へ派遣して運転・保守の実務に加わった。 含意 2013年にはオマーンのバルカ3・ソハール2が営業運転に入り、2025年3月時点の海外持分容量は火力9件・約131.6万kW、再生可能エネルギー6件・約43.1万kWとなった。2024年11月にはカタールで総事業費約5,700億円の新たな発電造水事業に11%で参画し、中期経営計画2030は国際事業を拡張領域と定めている。 いつ何が起きたか 7件 考察:小さく持ち、長く関わる 考察 考察:小さく持ち、長く関わる この進出の特徴は、規模ではなく入り方にあらわれている。初めての海外発電事業で選んだ持分は5%で、事業を仕切る立場ではない。それでいて技術者を現地へ送り、建設から運転開始までの実務に加わった。資本のリスクは小さく抑え、経験だけは深く取りにいく——規制の下で守られてきた会社が競争市場へ出るときの、慎重で現実的な設計だったとみられる。16年後の案件で出資比率が11%へ上がっているのは、その時間のかけ方に見合う学習があったことをうかがわせる。 ただし、海外の持分容量が国内の稼働可能な原子力を超えたことを、そのまま事業構造の転換と読むのは早いかもしれない。国際事業の経常利益は連結の5%に満たず、収益の大半はいまも四国4県の電気と、地域の情報通信が生んでいる。伊方の停止が3期連続の赤字を招いたように、この会社の業績は依然として区域の中の設備に大きく左右される。区域の外で稼ぐ力をどこまで太くできるかは、2030年に向けた目標が実際の利益として返ってくるかどうかで測られることになると推察される。 Yutaka Sugiura, 2026年7月 参考文献 参考文献 参考四国電力「海外事業への取り組みについて」(2009年5月19日)四国電力「当社の海外事業の取り組み状況について」(2015年2月)四国電力 国際事業特設サイト四国電力 国際事業特設サイト「カタール ラスラファンC発電・造水プロジェクト」四国電力 有価証券報告書【沿革】四国電力 有価証券報告書(2009年3月期・連結) 次に読む決断 四国電力の意思決定1984年四国電力四国電力STNetの設立情報通信事業への参入を担う専業子会社の設立と新事業の立ち上げ1984年2024年四国電力四国電力伊方発電所への株主提案3年続いた即時廃炉の請求と、3号機を最大限活用する取締役会の反対2024年同じ問い:海外工場への大型投資2007年王子HD王子HD南通への一貫生産工場建設中国での一貫生産の立ち上げと、排水パイプライン計画の撤回2007年2010年ラウンドワンラウンドワン米カリフォルニア初出店海外第1号店の開設と、国内で育てたモール業態のそのままの移植2010年2012年INPEXINPEXイクシスLNG最終投資決定総事業費340億米ドルを投じる自社主導の巨大開発2012年2002年日産自動車日産自動車日産180による100万台増販再建から成長への転換と、北米の新工場・中国の合弁を軸にした世界販売の上積み2002年2017年カルビーカルビーフルグラの中国再進出越境ECと現地専用工場を軸にした中国市場の攻め直し2017年 × 出所