JR東海と名古屋出店(2000年・高島屋の決断)

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高島屋:業績の推移
売上高(億円)当期純利益率(%)
業務協力から出資3割と商号の提供へ、駅ビルでの名古屋初出店JR東海が1992年12月に設けた百貨店子会社"ジェイアール東海百貨店"は、1997年9月に商号を"ジェイアール東海髙島屋"へ改めた。高島屋は資本金100億円の30%を出資し、店名に高島屋の名を出すことを受け入れた。

何をなぜ決めたか:業務協力から出資3割と商号の提供へ、駅ビルでの名古屋初出店

概要

JR東海が1992年12月に設けた百貨店子会社"ジェイアール東海百貨店"は、1997年9月に商号を"ジェイアール東海髙島屋"へ改めた。高島屋は資本金100億円の30%を出資し、店名に高島屋の名を出すことを受け入れた。

店舗はJR東海が名古屋駅の旧駅ビル跡地に建てたツインビル"JRセントラルタワーズ"の地下2階から地上11階に入り、総売場面積は約6万5千m2、うち専門店が約1万m2を占める。2000年3月15日に"ジェイアール名古屋タカシマヤ"として開業し、高島屋は京都・大阪と東京の間にある名古屋へ初めて出店した。

背景

JR東海はツインビルの構想段階で、集客力を高める商業施設を設けることにした。はじめは地元の松坂屋と組んで百貨店の経営に参入する構想であったが、運営の進め方で両社の意見が合わず、松坂屋は計画から撤退した。名古屋の百貨店は松坂屋・名古屋三越・名鉄百貨店・丸栄の"4M"が占め、それまで"無風地帯"と呼ばれていた。

高島屋は、中京地区の店舗が岐阜店くらいしかなかった。1996年10月には東京・千駄ケ谷に新宿店を開設しており、初年度の売上高は840億円と目標を40億円上回ったものの、問題は2年目以降とみられていた。

内容

社員の出向、商品の供給、社員教育で業務協力を結ぶことに合意した段階では、運営会社の名はジェイアール東海百貨店のままだった。高島屋は出資をする必要がなく、高島屋の商号を掲げることさえ求められないという、名よりも実を取る考え方があった。JR東海は"JR東海百貨店"では客の目を引けないと懸念し、資本出資と商号の使用を求めた。

高島屋の負担は出資分の30億円だけで、店舗の内装費などはJR東海が持つ。出資30%で経営への発言権を確保し、常務大阪店長の森直三氏を運営会社の社長に送り込んだ。初年度の売上目標は百貨店部門500億円、専門店部門100億円に置いた。

含意

開業から2カ月余りで来店客数は1000万人を超えた。売上高は開業以来前年比2ケタの伸びを続け、2002年度は760億5400万円に達し、年間の来店客数は延べ3800万人にのぼる。名古屋と競合する周辺7都市の百貨店売上高は、1999年度から2002年度に277億円強、18.3%減少した。

2003年に鈴木弘治社長は名古屋の成功を問われ、『名古屋というマーケットが非常に大きかった。東海旅客鉄道と組めたことも、成功につながっています』と答えている。2006年2月期のジェイアール東海髙島屋は、髙島屋の議決権比率33.4%の持分法適用関連会社で、JR東海の議決権比率59.2%の連結子会社である。

いつ何が起きたか6件
筆者考察
考察

考察:名を貸すことが出店の条件だった

この判断の芯は出店そのものより、名前と資本を出すかどうかにあったと思われる。高島屋は当初、業務協力にとどめ、店名に自社の名を出さなくてもよいと考えていた。それを覆したのは、高島屋の名がなければ客を呼べないとみた鉄道会社の側の事情である。負担を出資30億円に抑えたまま、名古屋という空白の市場に自社の看板で出られた。百貨店の商号が、資本に劣らない交渉材料だったことを示す案件とみられる。

もっとも、組んだ代償として主導権は相手にある。運営会社はJR東海の連結子会社で、高島屋は持分法で取り込む少数株主にとどまる。成功しても果実は持分の範囲でしか入らず、店舗の建物は鉄道会社が持つ。自前で土地を借りて建てた新宿店が重い負担を抱えたのと並べると、高島屋はほぼ同じ時期に、リスクと裁量の配分が正反対の二つの出店を手がけたことになる。どちらが正解だったかではなく、立地ごとに組み方を変えた点に、この時期の出店判断の幅があったのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年8月
参考文献

参考文献

参考

  • 東海旅客鉄道 有価証券報告書 第19期(2006年3月期)【沿革】
  • Decide 2000年 17巻11号
  • 髙島屋 有価証券報告書 第140期(2006年2月期)【沿革】
  • Decide 1998年 15巻11号
  • 日経ビジネス 2000年7月31日号
  • 日経ビジネス 2003年10月13日号
  • 髙島屋 有価証券報告書 第140期(2006年2月期)【関係会社の状況】
  • 東海旅客鉄道 有価証券報告書 第19期(2006年3月期)【関係会社の状況】
  • 日経ビジネス 2003年5月12日号(日経BP社)
  • 髙島屋 有価証券報告書「第140期(2006年2月期)【沿革】【関係会社の状況】」
  • 東海旅客鉄道 有価証券報告書「第19期(2006年3月期)【沿革】【関係会社の状況】」

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