高島屋の直近の動向と展望
高島屋の直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。
セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。
直近の動向と展望
ROIC経営の本格導入と東神開発へのデベロッパー機能集約
2024年4月、髙島屋は新中期経営計画の初年度としてROIC経営を本格導入し、報告セグメントを大きく再編した。従来の「百貨店業」を「国内百貨店業」と「海外百貨店業」に、「商業開発業」を「国内商業開発業」と「海外商業開発業」にそれぞれ分割し、飲食子会社のアール・ティー・コーポレーションを独立セグメントへ移した。同時に東神開発がたまがわ生活文化研究所を吸収合併(2023年3月)、ファッションプラザ・サンローゼを清算(2023年7月)し、デベロッパー機能を東神開発に一本化した。本業の国内百貨店業と東神開発を母体とする商業開発業の収益構造を、投資家から見て区別しやすい新しい開示体系へ組み換えた。
2024年度には東神開発がベトナム・ハイフォンの住宅分譲ヴーイェンプロジェクトに約150億円を投じた。回収は2026年度から2027年度にかけてを見込み、現中期経営計画は海外商業開発業で投資先行フェーズへ入った。村田善郎社長は「日本とASEANは一つの商圏」(WWDJAPAN 2024/7/26)と述べ、シンガポール髙島屋のVIP顧客約1500名を国内店舗に送客する施策を進めるとともに、将来的にはタイ・サイアム髙島屋やベトナム・ホーチミン髙島屋の富裕層にも対象を広げる方針を示した。連結設備投資は2024年2月期の304億円から2025年2月期計画の557億円へ倍増し、うち東神開発分は98億円から241億円へ拡大した。投資の重心が周辺事業へ移った構図が、開示数値の上にも読み取れる。
- 有価証券報告書
- 決算説明会 FY24
- 決算説明会 FY25-3Q
- WWDJAPAN 2024/7/26
インバウンド復調と2025年2月期過去最高益の構造
2025年2月期の連結営業利益は575億円、純利益395億円と過去最高水準に達した。単体では大阪店1591億円(前年比+20.6%)、京都店972億円(同+15.7%)、新宿店881億円(同+10.8%)と都心基幹店がインバウンドで伸び、商品別では化粧品+21.6%、婦人服・洋品+15.8%が牽引した。百貨店業セグメントの営業利益は368億円、商業開発業127億円、金融業48億円と、本業の回復と周辺事業の拡大が同時に起きた。連結営業利益575億円のうち商業開発業と金融業の合計が175億円と約3割を周辺事業が担う構造へ移行した点は、最高益更新の中身からも読み取れる。1991年に賭けに出た新宿店も881億円へ戻し、長年の重い投資が利益貢献の側へ位置を変えた。1956年の進出阻止から数えれば69年を経てようやく、新宿という立地が高島屋の連結利益へ正味で貢献する側に回った。
一方、2025年4月の決算説明会では、米国関税政策に端を発する世界経済の不透明感、中国経済の低迷、国内物価高という3つの逆風下で「本年度のポイントは、インバウンドや富裕層高額品消費、中間層消費が維持・拡大できるか」(決算説明会 2025/4)との認識が示された。中国団体客の増加は見込まず、中華圏以外の東アジア・欧米旅行客のコト消費へのシフトをSNS発信で取り込む方針で、関東大型店を中心に国内在住の外国人富裕層の取り込みにも引き続き取り組むとした。コスト削減は2024年度32億円実績に対し2025年度46億円計画と積み増し、玉川髙島屋S.C.・柏髙島屋ステーションモール・京都髙島屋S.C.の段階リニューアルで2026年度以降の利益回復を見込む構図となった。
- 有価証券報告書
- 決算説明会 FY24
- 決算説明会 FY25-3Q
- WWDJAPAN 2024/7/26
シームレス化構想と金融業100億円目標の射程
村田社長は「シームレス化」をグループ総合戦略「まちづくり」の集大成に据えている。現状の高島屋では百貨店には外商係員が付くが専門店には付かず、友の会カードの利用可否も施設ごとに異なる状態が長く続いてきた。これを店頭情報や顧客情報のマスデータ統合で一元化し、パーソナル接客の形へ変えていくのがこの構想の骨格である。「お客様から見たとき、一気通貫で均一なサービスを提供できることが、めざす姿」(決算説明会 2025/4)と述べ、東神開発が運営する商業施設のテナントもこの仕組みのなかに組み込む前提で設計し、本体の百貨店で蓄えてきた外商接客のノウハウを商業開発業の側にも横展開する方向性を、グループ統合の総仕上げに据えた。
金融業のセグメントでは髙島屋ファイナンシャル・パートナーズ(2024年2月期営業利益46億円)を、2031年度に営業利益100億円規模へ拡大する目標を掲げた。カード手数料とポイント制度の見直しに加え、保険代理業の強化で、百貨店来店と商業施設来店の両方を収益化する設計で、周辺事業が連結利益の過半を担う構造は今後さらに進む見通しとなった。2028年度からの新リース会計適用も視野に入れ、大阪店など賃借比率の高い拠点のROICを使用権資産ベースで再計算する開示を先行で始めた。投資先行期と会計基準変更が重なる局面でも、拠点別の収益性を投資家へ丁寧に示す姿勢を保っている。
- 有価証券報告書
- 決算説明会 FY24
- 決算説明会 FY25-3Q
- WWDJAPAN 2024/7/26