合弁でペプチスター設立(2017年・ペプチドリームの決断)

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論点原薬製造を合弁で内製化するか
ペプチドリーム:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
塩野義製薬・積水化学工業と三社で担う原薬製造の内製化

何をなぜ決めたか:塩野義製薬・積水化学工業と三社で担う原薬製造の内製化

概要

2017年9月1日、ペプチドリームは塩野義製薬・積水化学工業との3社合弁で、特殊ペプチド原薬の研究開発・製造・販売を担うペプチスター株式会社を大阪府摂津市に設立した。候補物質の探索と最適化に事業を絞ってきた同社が、製造という川下の工程に資本を入れ、探索から生産まで一気通貫の体制を組む判断であった。

出資額は19億円、出資比率は3社とも17.3%で、いずれの社も単独では支配権を持たない形をとった。

背景

特殊ペプチドは低分子と抗体医薬の長所を併せ持つ一方、高品質な原薬を低コストで安定供給できる製造受託会社が世界的に存在しなかった。探索を担うPDPSがいかに強くとも、原薬の供給が減少すれば共同研究先での開発が止まる。一方で2017年6月期の売上高は48億95百万円、研究開発費は3億62百万円にとどまり、原薬工場を自前で抱えられる規模ではなかった。

内容

塩野義製薬の製薬技術、積水化学工業の化学プロセス技術、ペプチドリームの創薬基盤を持ち寄り、国内企業連合の形で設立した。出資は当初15億円から19億円程度の予定として開示され、2018年3月30日に18億円の追加出資を発表、同年4月に完了して3社とも17.3%で並んだ。

ペプチドリームは代表取締役を派遣し、AMEDの医療研究開発革新基盤創成事業の環境整備契約に基づく債務残高に対して、塩野義製薬・積水化学工業と連帯保証を負った。保証残高は2019年6月期末に90億円に達した。

含意

探索特化の軽い事業構造を保ったまま、製造だけを別法人へ切り出す方式をとった。連結財務諸表を作成していないため持分法は適用されず、持分法を適用した場合の投資損失として2018年6月期26百万円、2019年6月期96百万円、2019年12月期140百万円を注記で示すにとどまった。

工場は大阪府摂津市に建設され、2019年の商業生産開始が計画された。2020年12月期には持分割合の低下によりペプチスターは関連会社から外れ、投資有価証券へ移っている。

いつ何が起きたか8件
考察:探索の会社が製造を抱えるということ
考察

考察:探索の会社が製造を抱えるということ

この判断の芯は、探索特化という軽い事業構造を崩さずに、製造という重い工程だけを別法人へ切り出した点にある。PDPSで候補を速く探し当てても、原薬を安定して量産できなければ薬にはならない。工場も在庫も持たない軽い資産構成を守りつつ、川下の細さを塞ぐには、自前で工場を抱えるより、技術を持つ塩野義製薬・積水化学工業と資本を分け合う合弁が理にかなっていただろう。3社が同率の17.3%で並び、どこも単独では支配しない設計にしたところに、技術を出し合わせるための周到さがうかがえる。

もっとも、支配しない形は、製造の難所を一社で背負わずに済ませる代わりに、量産化の成否を自社だけでは決めきれない構造も残した。出資19億円に対し、AMEDの環境整備契約に基づく債務への連帯保証は90億円に拡大し、貸借対照表に載らない責任のほうが投資額より重くなった。取込む損失も2018年6月期の26百万円から2019年12月期には140百万円へ増加している。2020年12月期に持分割合が下がって関連会社から外れたことは、追加の資本を他者に委ねた結果であり、探索の会社が製造の資本負担をどこまで引き受けるかという問いに、この会社なりの答えが出たものといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

ペプチドリーム:研究開発費の推移

研究開発費(千円)
ペプチドリーム:研究開発費の推移
(千円)研究開発費備考
2012年6月期40,447
2013年6月期51,137
2014年6月期82,529
2015年6月期88,549
2016年6月期228,212
2017年6月期362,681
2018年6月期921,343クリオへの一時金314,804千円という特殊要因を含む
2019年6月期1,141,795
2019年12月期893,267決算期変更にともなう6か月決算
2020年12月期1,460,973
2021年12月期1,638,591
出所:ペプチドリーム 有価証券報告書 第7〜16期(損益計算書関係・研究開発費の総額)
出所:ペプチドリーム 有価証券報告書 第7〜16期(損益計算書関係・研究開発費の総額)

ペプチドリーム:ペプチスターへの出資・債務保証と取込損失の推移

ペプチドリーム:ペプチスターへの出資・債務保証と取込損失の推移
(千円)ペプチスターへの出資額債務保証残高持分法を適用した場合の投資損失備考
2018年6月期1,900,0006,280,000△26,1529月に設立し、4月に18億円を追加出資。関連会社に該当した最初の期
2019年6月期1,900,0009,000,000△96,756
2019年12月期1,900,0009,000,000△140,711決算期変更にともなう6か月決算。前期までの12か月と並べられない
2020年12月期1,900,0009,000,000−持分割合の低下で関連会社から外れ、投資有価証券に区分された
2021年12月期1,900,0009,000,000−
出所:ペプチドリーム 有価証券報告書 第12〜16期(関係会社株式・投資有価証券・保証債務・持分法損益等)
出所:ペプチドリーム 有価証券報告書 第12〜16期(関係会社株式・投資有価証券・保証債務・持分法損益等)

合弁の条件

合弁の条件
科目概要備考
合弁会社の設立日2017年9月1日本店は大阪府摂津市。商号はペプチスター株式会社
合弁の相手先塩野義製薬、積水化学工業3社がそれぞれの最先端技術を持ち寄る国内企業連合の形をとった
合弁会社の事業内容特殊ペプチド原薬の研究開発、製造及び販売共同研究開発先だけでなく、戦略的提携により自社開発品の製造も請け負う
出資比率直接17.3%(3社とも同率)2018年4月の追加出資後の比率。間接所有の持分はない
出資額1,900,000千円当初の開示は15億円から19億円程度。18億円の追加出資で19億円となった
追加出資の決定2018年3月30日18億円の追加出資を発表し、同年4月に完了した
合弁会社の資本金10,970,000千円2018年6月30日現在。2019年12月31日現在は5,485,000千円
会計上の取扱い持分法を適用しない関連会社連結財務諸表を作成していないため、持分法を適用した場合の投資損益を注記する
持分法を適用した場合の投資の金額1,873,847千円2018年6月30日現在。2019年6月30日現在は1,777,091千円
役員の兼任代表取締役を派遣窪田規一氏がペプチドリームの会長とペプチスターの社長を兼ねた
債務保証9,000,000千円2019年6月30日現在。2018年6月30日現在は6,280,000千円
債務保証の対象AMEDの環境整備契約に基づく債務残高医療研究開発革新基盤創成事業。塩野義製薬・積水化学工業と連帯保証を行う
工場と生産開始の計画大阪府摂津市に建設、2019年に商業生産特殊ペプチド医薬品の開発・販売にかかるボトルネックの解消を狙った
関連会社からの除外2020年12月期持分割合の低下により関連会社ではなくなり、投資有価証券に区分された
出所:ペプチドリーム 有価証券報告書 第11期(2017年6月期)【事業等のリスク】、第12期(2018年6月期)【関係会社の状況】【持分法損益等】【貸借対照表関係】、第13期(2019年6月期)【貸借対照表関係】、第15期(2020年12月期)【経営上の重要な契約等】【持分法損益等】
出所:ペプチドリーム 有価証券報告書 第11期(2017年6月期)【事業等のリスク】、第12期(2018年6月期)【関係会社の状況】【持分法損益等】【貸借対照表関係】、第13期(2019年6月期)【貸借対照表関係】、第15期(2020年12月期)【経営上の重要な契約等】【持分法損益等】
参考文献

参考文献

参考
  • ペプチドリーム ニュースリリース(2024年11月11日)「ペプチスターが総額26億円の資金調達を行いました」
  • ペプチドリーム 有価証券報告書「第11期(2017年6月期)【事業等のリスク】」
  • ペプチドリーム 有価証券報告書「第12期(2018年6月期)【沿革】【関係会社の状況】【持分法損益等】【貸借対照表関係】」
  • ペプチドリーム 有価証券報告書「第13期(2019年6月期)【貸借対照表関係】」
  • ペプチドリーム 有価証券報告書「第15期(2020年12月期)【経営上の重要な契約等】【持分法損益等】」
  • ペプチドリーム 有価証券報告書「第16期(2021年12月期)【主要な経営指標等の推移】」

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