ペプチドリーム塩野義製薬・積水化学工業との合弁によるペプチスターの設立と原薬製造の内製化

時期 2017年6月
意思決定者(推定) 窪田規一・菅裕明 社長・取締役
論点 ペプチド創薬の製造基盤と垂直統合
概要
2017年9月、ペプチドリームは、塩野義製薬積水化学工業との3社合弁で、特殊ペプチド原薬の研究開発・製造・販売を担うCDMO"ペプチスター株式会社"を設立した。候補物質の探索と最適化に事業を絞ってきた同社が、製造という川下の工程を自ら押さえ、探索から生産まで一気通貫の体制を組む判断であった。
背景
特殊ペプチドは低分子と抗体医薬の長所を併せ持つ一方、合成技術が未成熟で生産性が低く、製造コストが高いという難点を抱えていた。探索を担うPDPSがいかに強くとも、原薬を安定して供給できる製造基盤がなければ、共同研究先での臨床開発が細る恐れがあった。
内容
塩野義の製薬技術、積水化学の化学プロセス技術、ペプチドリームの創薬基盤を持ち寄り、国内企業連合の形でペプチスターを設立した。会長に退いた窪田規一氏が同社社長を兼ね、大阪府摂津市に本社研究棟を構えて量産化技術の確立を目指した。
含意
探索特化の軽い事業構造を保ったまま、製造だけを合弁という別法人へ切り出す形をとった。後にAMEDの支援やINCJの出資を含め約200億円規模の資金が集まり、2019年に稼働した。原薬の量産とコスト低減が、ペプチド創薬の実用化を左右する要因になった。
筆者の見解

探索の会社が製造を抱えるということ

この判断の芯は、探索特化という軽い事業構造を崩さずに、製造という重い工程だけを別法人へ切り出した点にある。PDPSで候補を速く探し当てても、原薬を安定して量産できなければ薬にはならない。工場も在庫も持たない身軽さを守りつつ、川下の細さを塞ぐには、自前で工場を抱えるより、技術を持つ塩野義・積水化学と資本を分け合う合弁が理にかなっていたとみられる。探索と製造を一つの会社に同居させず、別法人へ分けて置いたところに、この設計の周到さがうかがえる。

もっとも、合弁という形は、製造の難所をペプチドリーム一社で背負わずに済ませる代わりに、量産化の成否を自社だけでは決めきれない構造も残した。特殊ペプチドの製造コストは稼働後もなお高く、量産技術の確立という当初の課題は長く持ち越された。約200億円規模の資金と複数の資本を要したこと自体が、製造の内製化が探索とは別次元の難しさを抱えていたことを示している。探索で得た評価を実用化まで届けられるかは、この合弁が量産の壁をどこまで下げられるかにかかっているといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

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出典・参考
  • ペプチドリーム 有価証券報告書 第12期(2017年6月期)【沿革】
  • 藤家新一郎「ペプチスター 日本発のペプチド原薬CDMO設立の背景と今後の展望」ファルマシア2021年57巻9号
  • ペプチドリーム ニュースリリース(2024年11月11日)「ペプチスターが総額26億円の資金調達を行いました」

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