鎌倉キッチン配送センターの新設(1994年・コロワイドの決断)

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論点仕込みを店で続けるか工場へ集約するか
コロワイド:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
逗子工場の閉鎖と、製造と配送を担うセントラルキッチンへの移行

何をなぜ決めたか:逗子工場の閉鎖と、製造と配送を担うセントラルキッチンへの移行

概要

1994年10月、コロワイドは創業地の逗子市にあった逗子工場を閉鎖し、神奈川県鎌倉市に鎌倉キッチン配送センターを設置した。目的はセントラルキッチンの本格稼働と物流の強化で、新しい拠点の広さは400坪である。この設置により、自分たちで作り、運び、売るという同社のマーチャンダイジング戦略が本格的に始まった。

拠点の新設は、店づくりの転換と同じ年に重なった。1か月前の1994年9月に商号をコロワイドへ改め、12月には川崎駅前に233坪465席の「手作り居酒屋 甘太郎」川崎1号店を開店した。コロワイドはこの店を大型店展開の端緒とした。仕込みを工場が担う体制が、席数の多い店の出店に先立って整ったことになる。

背景

コロワイドの居酒屋は、初めから直営だけで店を増やしてきた。1977年9月に「手作り居酒屋 甘太郎」の創業店を逗子に開き、1981年11月の大船1号店から直営のみの多店舗展開を始めた。1986年11月には本社を藤沢市へ移し、同時に逗子市に逗子工場を新設した。1994年4月には蒲田に2店を同時に開き、本格的な東京進出の方針を打ち出している。

フランチャイズを使わない以上、料理の品質も仕込みの手間も、すべて自社が抱える。野尻公平社長は創業期の工場について『まだ数店舗しかない頃から工場(セントラルキッチン)を作り、自分達で商品を作って自分達で配送をしていました』と明かしている。工場があれば店の調理の負担が軽くなり、品質が安定し、多様なメニューを手ごろな価格で出せるようになった。店の数と地域が広がるなかで、逗子の工場だけではこの役割を担いきれなくなっていた。

内容

鎌倉の後、拠点は関東と関西へ増加した。1997年7月に大阪府摂津市に大阪キッチン配送センターを、同年11月に埼玉県浦和市に413坪の浦和キッチン配送センターを開設した。1999年10月の時点で、3カ所のセンターは12時間稼働で合計170店舗に対応でき、実際の店舗数は104店だった。センターには店舗数の増加を吸収する余力があった。

この余力を、蔵人金男社長は出店で埋める計画を示した。株式市場から調達した資金はすべて設備投資に充て、新規出店を前期12店、当期24店、来期35店と増やしてセンターの稼働率を上げる。店舗が170店を超えれば、75店舗に対応する新センターを埼玉か千葉に新設する考えで、賃貸で賄うため総投資額は1億20百万円程度と見込んだ。2000年3月期の売上高は17,056百万円、経常利益は954百万円だった。

含意

鎌倉の拠点そのものは長く続かなかった。2001年6月に鎌倉キッチンセンターを閉鎖し、2004年10月の持株会社制への移行では、製造部門を㈱コロワイドCKとして分割した。2005年3月にはさいたまキッチンセンターを増設し、2007年2月にコロワイドCKを㈱コロワイドMDへ改組した。拠点は入れ替わっても、製造と配送を自社で持つ方針は引き継がれた。

買収で店舗が増加すると、この機能も大きくなった。2017年7月にコロワイドMDが滋賀県長浜市に長浜セントラルキッチンを竣工させ、加工製品の内製化を進めた。2026年3月期には全国15カ所のセントラルキッチンと食品工場が、原料の調達から加工、配送までを店舗に提供している。2026年4月には茨城県つくば市のつくば工場も稼働した。

いつ何が起きたか12件
考察:拠点は替えても続けた自社製造
考察

考察:拠点は替えても続けた自社製造

なぜコロワイドは、店の厨房ではなく工場で仕込む方式を選んだのか。理由は、直営だけで店を増やすという方針にある。フランチャイズであれば、仕込みの手間は加盟店が負う。直営では、店が増加するほど品質をそろえる負担が本部にのしかかる。しかも1994年は、東京進出と大型店の出店が同時に始まった年だった。席数の多い店を各地に開くには、仕込みを店から切り離すほかなかったと思われる。鎌倉の拠点は、その前提を整える投資だった。

もっとも、工場は店の数が伴わなければ重荷になる。1999年10月の時点で、3カ所のセンターは170店舗に対応できたが、実際の店は104店にとどまっていた。蔵人金男社長が出店計画をセンターの稼働率と結びつけて語ったのは、この差を埋める必要があったからである。拠点を賃貸で賄う方針も、工場の固定費を軽くし、資金を出店に充当するための工夫だったのだろう。工場と店の数の釣り合いを、出店の速さで取り続ける必要があった。

2026年の時点で、答えは出ている。鎌倉の拠点は2001年6月に閉鎖され、7年足らずで役目を終えた。しかし製造と配送を自社で持つ方針は、コロワイドCK、コロワイドMDへと引き継がれた。2017年には長浜セントラルキッチンが竣工し、2026年3月期にはセントラルキッチンと食品工場が全国15カ所に広がった。拠点は替わっても、仕組みは買収で増加した店まで支えている。この判断は、拠点としては短命だったが、仕組みとしては成功である。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

コロワイド:売上高と経常利益の推移(単体)

売上高(百万円)経常利益率(%)
コロワイド:売上高と経常利益の推移(単体)
(百万円)売上高経常利益備考
1999年3月期13,670735第38期の決算公告の前期欄
2000年3月期17,0569541999年10月に店頭登録
出所:コロワイド 決算公告 第38期(2000年3月期)【損益計算書】
出所:コロワイド 決算公告 第38期(2000年3月期)【損益計算書】
参考文献

参考文献

参考
  • 証券アナリストジャーナル 1999年11月号(37巻11号)(蔵人金男、1999年10月26日の講演)
  • コロワイド 有価証券報告書 第64期(2026年3月期)【沿革】
  • コロワイド 有価証券報告書 第64期(2026年3月期)【事業の内容】
  • コロワイド 統合報告書「統合報告書2024」
  • コロワイド 決算公告「第38期(2000年3月期)【損益計算書】」
  • コロワイド 有価証券報告書「第44期(2006年3月期)【沿革】」
  • コロワイド 有価証券報告書「第56期(2018年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」
  • コロワイド 有価証券報告書「第64期(2026年3月期)【沿革】【事業の内容】」

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