シャープ 亀山モデルへ集中投資 材料から完成品までを一つの拠点で生産する液晶一貫生産への賭け

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時期 2004年1月
当時の社長 町田勝彦
論点 独自デバイスへの集中投資と垂直統合
何をなぜ決めたか
概要

1998年に社長へ就任した町田勝彦氏の液晶テレビ宣言を受け、シャープが2004年1月、三重県亀山市に液晶パネルからテレビ組み立てまでを一つの敷地で行う一貫生産工場を建設した経営判断。"世界の亀山モデル"をブランドに、薄型テレビAQUOSで国内首位に立った。

2006年5月には世界で初めて第8世代マザーガラスを採用した第二工場を同じ敷地に加え、亀山工場の帳簿価額は2007年3月末で268,929百万円、従業員は2,202人となった。

背景

シャープは電卓で培った液晶技術を1980年代から基幹事業に育て、1998年に町田勝彦氏が、2005年までに国内向けのテレビを全機種液晶へ切り替える目標を打ち出した。薄型テレビ市場はまだ黎明期にあり、韓国・台湾勢の本格参入前だった。液晶を含む電子部品等の外部顧客向け売上高は2005年3月期で938,922百万円と、エレクトロニクス機器の1,600,937百万円に遠く及ばない規模にとどまっていた。

内容

亀山第一工場は2004年1月に建ち、パネルの生産と完成品の組み立てを同じ工場へ集約した。製造ノウハウを外へ出さないブラックボックス化で韓国・台湾勢の追随を遅らせる垂直統合が狙いだった。

大型液晶テレビ用パネルの旺盛な需要に対応して第一工場の生産能力を段階的に拡大し、さらに安定した供給体制を構築するため第二工場の建設に着手。第二工場は2006年5月に建ち、世界で初めて第8世代マザーガラスを採用して50型・40型クラスのパネルを生産し、続けて第2期・第3期の生産ラインを導入した。

含意

投資は液晶へ集中した。液晶を含む電子部品等の資本的支出は2005年3月期の225,156百万円から2008年3月期の308,441百万円へ、セグメント資産は1,172,267百万円から1,686,595百万円へ膨らんだ。連結売上高は2008年3月期に3,417,736百万円まで伸びたが、翌2009年3月期には2,847,227百万円へ落ち、電子部品等は23,975百万円の営業損失と5,962百万円の減損損失を計上した。

いつ何が起きたか 6件
筆者の見解
筆者の見解

独自デバイスへの集中は、どこまで許されるか

この判断の核心は、電卓以来の液晶の蓄積を、パネルと完成品を同じ敷地に置くという工場の形へ賭けた点にある。パネルだけを外へ売れば製造の条件は買い手に伝わるが、テレビまで自社で組めばその手の内は工場の外へ出ない。外から真似されにくい強みは、こうして設備の配置そのものから生まれた。市場が薄型へ動く勃興期と重なったことで亀山モデルは当たり、連結売上高は2004年3月期の2兆2,572億円から2008年3月期の3兆4,177億円まで伸びた。ここまでを見れば、独自技術への集中投資が競争優位へまっすぐ結びついた成功例に映る。

もっとも、一つの敷地に固めた強みは、需要が読み通りに伸びるかぎりで成り立つものだった。液晶を含む電子部品等のセグメント資産は2008年3月期に1兆6,865億円まで積み上がったが、翌2009年3月期には1兆3,987億円へ縮み、同じ期に239億円の営業損失へ転じている。稼ぐあいだは強い設備が、需要が引けば償却と固定費だけを残す——垂直統合の賭けは、その両面を同時に抱えていただろう。この賭けが次にどれだけの規模まで許されるのか。独自デバイスへの集中という同じ問いは、数年後のさらに巨大な堺工場への投資で、より重い形でシャープに返ってくることになる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
投資の条件

投資の条件

科目 概要 備考
亀山第一工場の建設 2004年1月 液晶パネルの生産とテレビの組み立てを一つの敷地へ集約した
亀山第二工場の建設 2006年5月 世界で初めて第8世代マザーガラスを採用。2006年度に稼働し第2期・第3期ラインを追加
所在地と敷地 三重県亀山市/330千㎡ 2006年3月末。ほかに借用地30千㎡(外数)
工場の帳簿価額 161,762百万円 2006年3月末。建物34,965・機械120,752・土地2,943・その他3,101。建設仮勘定を除く
第二工場稼働後の帳簿価額 268,929百万円 2007年3月末。建物64,361・機械195,482・土地2,943・その他6,142
工場の従業員数 1,816人 2006年3月末。第二工場が稼働した2007年3月末は2,202人
液晶を含む電子部品等の設備投資額 203,661百万円 2006年3月期。連結全体では238,839百万円
翌期の設備投資計画 305,000百万円 2006年3月末計画。うち電子部品等263,000百万円(三重・亀山工場ほか)
資金の調達方法 自己資金 設備投資計画に係る所要資金は主として自己資金を充当する予定とした

出所:シャープ 有価証券報告書 第112期(2006年3月期)・第113期(2007年3月期)【沿革】【設備の状況】

液晶を含む電子部品等の設備投資と資産の推移

シャープ:液晶を含む電子部品等の設備投資と資産の推移

(百万円) 資本的支出減価償却費セグメント資産 備考
2005年3月期 225,156137,5201,172,267
2006年3月期 226,678155,6291,352,124 亀山第一工場の増強と第二工場の建設。連結全体の設備投資は238,839
2007年3月期 288,406173,0781,583,965 亀山第二工場が稼働し第2期生産ラインを追加
2008年3月期 308,441206,4291,686,595 第二工場に第3期生産ラインを導入。堺の新工場の展開も始まる
2009年3月期 221,386200,9201,398,773 電子部品等は営業損失23,975。減損損失5,962を計上
電子部品等の資本的支出と減価償却費
資本的支出(百万円)減価償却費(百万円)

出所:シャープ 有価証券報告書 第112〜115期(事業の種類別セグメント情報)

連結業績と総資産の推移

シャープ:連結業績と総資産の推移

(百万円) 売上高経常利益総資産 備考
2002年3月期 1,803,79848,8891,966,909
2003年3月期 2,003,21081,9202,004,832
2004年3月期 2,257,273111,6012,150,250 2004年1月に亀山第一工場が稼働
2005年3月期 2,539,859140,5112,385,026
2006年3月期 2,797,109150,8522,560,299
2007年3月期 3,127,771170,5842,968,810 亀山第二工場が稼働
2008年3月期 3,417,736168,3993,073,207 照合できる期のなかで売上高が最大
2009年3月期 2,847,227△82,4312,688,721 経常損失82,431。当期純損失は125,815
連結売上高と経常利益率
売上高(百万円)経常利益率(%)

出所:シャープ 有価証券報告書 第112期・第115期(主要な経営指標等の推移)

従業員数と平均年収の推移

シャープ:従業員数と平均年収の推移

(人) 連結従業員数提出会社の従業員数平均年間給与 備考
2002年3月期 46,51822,710− 第112期有報の主要な経営指標等の推移。平均年間給与は遡れない
2003年3月期 46,63322,718− 第112期有報の主要な経営指標等の推移。平均年間給与は遡れない
2004年3月期 46,16422,724− 2004年1月に亀山第一工場が稼働。提出会社の従業員数はほぼ横ばい
2005年3月期 46,75122,838− 第112期有報の主要な経営指標等の推移。平均年間給与は遡れない
2006年3月期 46,87222,9497,437 平均年間給与は提出会社のみの開示で、単位は千円
2007年3月期 48,92722,7937,612
2008年3月期 53,70822,6747,637 連結が5千人近く増えた分は国内外の子会社で、提出会社は119名減った
2009年3月期 54,14422,8257,376 平均年間給与は前期比261千円減
従業員数と平均年収
連結のうち提出会社以外(人)提出会社の従業員数(人)提出会社の平均年間給与(千円)

出所:シャープ 有価証券報告書 第112期〜第115期(従業員の状況) / シャープ 有価証券報告書 第112期(主要な経営指標等の推移)

同じ問いに直面した会社
参考文献
出典・参考
  • シャープ 有価証券報告書「第112期(2006年3月期)【沿革】【設備の状況】【事業の種類別セグメント情報】」
  • シャープ 有価証券報告書「第113期(2007年3月期)【沿革】【設備の状況】」
  • シャープ 有価証券報告書「第114期(2008年3月期)【設備の状況】」
  • シャープ 有価証券報告書「第115期(2009年3月期)【主要な経営指標等の推移】【事業の種類別セグメント情報】」

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