ペプチドリーム富士フイルム富山化学からの放射性医薬品事業の取得とPDRファーマの連結子会社化

時期 2021年9月
意思決定者(推定) リード・パトリック ペプチドリーム 代表取締役社長CEO
論点 事業構造の転換と第二の柱の構築
概要
2021年9月2日、ペプチドリームは富士フイルムの子会社・富士フイルム富山化学の放射性医薬品事業を305億円で買収すると発表し、2022年3月に取得を完了して新会社"PDRファーマ株式会社"を連結子会社化した。共同研究と技術ライセンスに寄っていた事業構成に、製造販売を持つ放射性医薬品を第二の柱として据える買収であった。
背景
PDPSを軸とする創薬プラットフォームで営業利益率59%の高収益を上げていた同社は、収益が他社との提携と受託に立ち、自ら製造販売する製品を持たない構造にあった。2019年のノバルティスとのRI-PDC共同開発で踏み込んだ放射性医薬品を、次の柱に育てる足場が課題となっていた。
内容
富士フイルム富山化学が放射性医薬品事業を会社分割で新会社に承継し、ペプチドリームがその全株式を取得する仕組みである。PDC技術と放射性医薬品の事業基盤を融合し、研究開発から製造販売まで一気通貫のプラットフォームを築いて国内首位の放射性医薬品企業を目指す構想を掲げた。完了直前には販売権の返還に伴い対価が221億円へ減額された。
含意
取り込んだ販売により連結売上高は2021年12月期の94億円から2022年12月期に269億円へ拡大した。一方でのれん・無形資産の償却が利益を圧迫し、2025年12月期は減収・営業赤字に転じた。第二の柱は規模の拡大と利益の変動を同時に連れてきたとみられる。
筆者の見解

二本柱の重さ

この買収を、高収益ベンチャーが余裕を持って次の柱を買い足した動きとだけ読むのは、事業の実情を単純にしすぎる。共同研究と技術ライセンスというペプチドリームの祖業は、営業利益率59%という数字が示すとおり利益率こそ高いものの、他社との提携と受託の上に成り立ち、自ら製造販売する製品を欠いていた。提携を発表しても株価が反応しにくくなっていた時期に、製造販売の基盤ごと放射性医薬品を取り込んだところに、単一プラットフォーム依存から抜け出そうとする意思がうかがえる。

もっとも、第二の柱を得たことが、そのまま安定をもたらしたわけではない。完了の直前には販売権の返還で対価が305億円から221億円へと下げられ、連結の規模を一気に広げた放射性医薬品も、のれんと無形資産の償却という重みを同時に持ち込んだ。2025年12月期に売上が縮み営業損益が赤字へ転じた事実は、事業を二本柱へ組み替える判断が、規模の拡大と利益の変動を抱き合わせで連れてくることを示している。祖業の高い収益に、性質の異なる製造販売事業をどう噛み合わせるかは、買収を終えたあとに残された課題だとみられる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

同じ問いに直面した会社

収益モデルを変えて、隣接領域へ出るか2001年NSD地域計算センター・福島総合計算センター(現・FSK)の子会社化と運用受託部門の分社収益モデルとグループ構成
2017年日立建機鉱山機械への本格参入と、米H-Eパーツ・豪ブラッドケンの取得による消耗部品事業の獲得事業領域の拡張とバリューチェーンの厚み
2016年ビジョナルHRMOSの投入とSaaS群・隣接市場への多角化による成功報酬型からの収益源分散単一収益源への依存と収益モデルの分散
2016年東京ガス電力小売全面自由化に合わせた家庭向け低圧電力販売への参入とガス・電気のセット販売全面自由化下の顧客基盤の防衛と収益源の組み替え
2013年マネーフォワードクラウド会計への参入で、法人向けという二本目の柱を立てる収益源の設計と事業領域の拡張
出典・参考
  • 薬事日報 2021年9月7日
  • 会社四季報オンライン「ペプチドリーム、大型買収の先に描く『第2の成長戦略』」
  • ミクスOnline 2022年3月23日
  • ペプチドリーム 有価証券報告書 第17期(2022年12月期)【沿革】
  • ペプチドリーム 有価証券報告書(連結・IFRS)

免責事項およびポリシー