PDRファーマの子会社化(2021年・ペプチドリームの決断)

更新:
論点放射性医薬品の製造販売を買収するか
ペプチドリーム:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
富士フイルム富山化学から引き継ぐ放射性医薬品事業の取得

何をなぜ決めたか:富士フイルム富山化学から引き継ぐ放射性医薬品事業の取得

概要

2021年9月2日、ペプチドリームは富士フイルムからその子会社FTP株式会社(現PDRファーマ株式会社)の全株式を取得して子会社化することを取締役会で決議し、同日付で株式譲渡契約を締結した。2022年3月28日に取得を完了し、取得対価は24,637,929千円であった。共同研究と技術ライセンスに寄っていた事業構成に、製造販売を持つ放射性医薬品を第二の柱として据える買収であった。

背景

PDPSを軸とする創薬プラットフォームは、2020年12月期に売上収益11,677百万円に対し営業利益6,991百万円という高い利益率を上げていたが、収益は他社との提携と受託に立ち、自ら製造販売する製品を持たない構造にあった。ペプチド-薬物複合体(PDC)の応用先として放射性医薬品を重要戦略の一つと位置付けており、これを次の収益源に育てる足場が課題となっていた。

内容

富士フイルム富山化学が放射性医薬品事業を吸収分割で新会社に承継し、ペプチドリームがその全株式を100%取得する仕組みである。PDC技術と放射性医薬品の研究開発から製造販売までの実績を組み合わせ、一気通貫で最適化されたプラットフォームを築く構想を掲げた。取得資金は224億円のシンジケートローンで調達し、のれんは当初の暫定額11,101,667千円から第3四半期に8,370,677千円へ確定した。

含意

取り込んだ販売により連結売上収益は2021年12月期の9,422百万円から2022年12月期に26,852百万円へ拡大し、放射性医薬品事業の売上収益はその後も2023年12月期16,009百万円、2025年12月期15,727百万円と伸びた。のれんはIFRSのため償却されず、取得から2025年12月期まで8,370,677千円のまま減損もない。2025年12月期の営業損失5,013百万円は、創薬開発事業でマイオスタチン阻害薬の導出一時金が計上されなかったことによるもので、放射性医薬品事業は増収増益であった。

いつ何が起きたか9件
当時の取締役7名

当時の取締役(2021年3月株主総会決議)

考察:二本柱の重さ
考察

考察:二本柱の重さ

この買収を、高収益ベンチャーが余裕を持って次の収益源を買い足した動きとだけ読むのは、事業の実情を単純にしすぎる。共同研究と技術ライセンスというペプチドリームの祖業は、2020年12月期に売上収益11,677百万円に対し営業利益6,991百万円を上げるほど利益率が高い一方、他社との提携と受託の上に成り立ち、自ら製造販売する製品を欠いていた。有価証券報告書が挙げる買収の理由も、PDC技術と放射性医薬品の研究開発から製造販売までの実績・ノウハウを組み合わせ、創製から製造販売まで一気通貫で最適化された新たなプラットフォームを構築することに置かれている。製造販売の基盤ごと放射性医薬品を取り込んだところに、単一プラットフォーム依存から抜け出そうとする意思がうかがえる。

買った事業そのものは、取得後も伸びている。放射性医薬品事業の売上収益は2023年12月期16,009百万円、2025年12月期15,727百万円と積み上がり、2025年12月期は新製品の販売と既存製品の適応追加で増収増益であった。のれん8,370,677千円はIFRSのため償却されず、取得から2025年12月期まで減損もない。一方、2025年12月期に連結が営業損失5,013百万円へ転じた原因は買った事業ではなく、創薬開発事業でマイオスタチン阻害薬の導出一時金として見込んでいた約210億円が当期の契約に至らなかったことにある。その結果、取得資金として借りた224億円のシンジケートローンは財務制限条項に抵触し、2026年3月にリファイナンス契約の締結を要した。安定した製造販売の収益源を得てなお、連結の損益と財務は祖業の一時金の有無に振られる構造が残っているのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

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図と表

ペプチドリーム:のれんと無形資産の推移

のれん(百万円)無形資産(百万円)
ペプチドリーム:のれんと無形資産の推移
(百万円)のれん無形資産備考
2021年12月期076IFRS初度適用の比較期。のれんの計上なし
2022年12月期8,3712,233PDRファーマを取得。のれん8,370,677千円と技術関連資産1,800,000千円が発生
2023年12月期8,3712,211
2024年12月期8,3712,143
2025年12月期8,3712,017のれんは取得時から不変。減損損失の計上はない
出所:ペプチドリーム 有価証券報告書 第17〜20期(連結財政状態計算書)
出所:ペプチドリーム 有価証券報告書 第17〜20期(連結財政状態計算書)

ペプチドリーム:放射性医薬品事業セグメントの推移

放射性医薬品事業 売上収益(百万円)
ペプチドリーム:放射性医薬品事業セグメントの推移
(百万円)放射性医薬品事業 売上収益放射性医薬品事業 セグメント利益備考
2022年12月期11,446236連結は3月28日から。売上収益は9か月分
2023年12月期16,009475通期寄与で売上収益が4,563百万円増加
2024年12月期15,363247
2025年12月期15,728435新製品の販売と既存製品の適応追加で増収増益
出所:ペプチドリーム 有価証券報告書 第17〜20期【セグメント情報】
出所:ペプチドリーム 有価証券報告書 第17〜20期【セグメント情報】

買収の条件

買収の条件
科目概要備考
被取得企業PDRファーマ株式会社富士フイルム富山化学の放射性医薬品事業を吸収分割により承継した新会社。旧商号はFTP株式会社
取得した株式の比率100%現金を対価とした株式の取得。売り手は富士フイルム
取締役会決議と契約の締結2021年9月2日同日付で株式譲渡契約を締結
取得日2022年3月28日連結損益計算書にはこの日以降の業績を含む
取得対価の公正価値24,637,929千円第2四半期に運転資本の変動等に応じた価格調整で157,895千円を追加支払いし確定
のれん8,370,677千円当初の暫定額11,101,667千円から第3四半期の確定で2,730,990千円減少。IFRSのため非償却
取得した無形資産2,104,493千円主な内訳は技術関連資産1,800,000千円で20年の均等償却。暫定額から1,800,000千円の増加
取得資産及び引受負債の公正価値(純額)16,267,252千円資産合計19,961,552千円、負債合計3,694,300千円
条件付対価最大6,000,000千円達成可能性を見積もった結果、取得日時点では認識していない
取得関連費用394,997千円販売費及び一般管理費で費用処理。2021年12月期に26,875千円、2022年12月期に368,122千円
取得資金224億円のシンジケートローンみずほ銀行・日本政策投資銀行・三井住友信託銀行から2022年3月28日に借入。返済期日2027年3月28日
取得日以降の業績寄与売上収益11,446,321千円当期利益3,543,572千円。期首に完了と仮定した連結売上収益は30,763,721千円
出所:ペプチドリーム 有価証券報告書 第16期(2021年12月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】・第17期(2022年12月期)注記6【企業結合】
出所:ペプチドリーム 有価証券報告書 第16期(2021年12月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】・第17期(2022年12月期)注記6【企業結合】
当時の取締役7名

当時の取締役(2021年3月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • ペプチドリーム 有価証券報告書 第17期(2022年12月期)【沿革】
  • ペプチドリーム 有価証券報告書(連結・IFRS)
  • ペプチドリーム 有価証券報告書「第16期(2021年12月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】」
  • ペプチドリーム 有価証券報告書「第17期(2022年12月期)注記6【企業結合】」
  • ペプチドリーム 有価証券報告書「第18期(2023年12月期)【経営成績等の状況】【セグメント情報】」
  • ペプチドリーム 有価証券報告書「第20期(2025年12月期)【経営成績等の状況】【セグメント情報】【連結財政状態計算書】」
  • ペプチドリーム 有価証券報告書「第20期(2025年12月期)【沿革】」

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