日立建機豪ブラッドケンの買収:鉱山機械への本格参入と、米H-Eパーツも交えた消耗部品事業の獲得

更新:

時期 2016年10月
意思決定者(推定) 辻本雄一木川理二郎 日立建機 社長・前社長
論点 事業領域の拡張とバリューチェーンの厚み
概要

日立建機が2008年に鉱山用の大型ダンプトラックで市場へ本格参入し、2009年にカナダのウェンコを買収して運行管理へ広げたうえ、2016年12月に米H-Eパーツを約280億円、2017年3月に豪ブラッドケンを約516億円で取得して、鉱山機械の消耗部品とアフターサービスを事業の柱に据えた一連の判断。

背景

中国の建機需要が2011年ごろから縮み、地場の三一重工が油圧ショベルの販売台数でコマツを抜いた。資源価格の下落で鉱山機械の本体需要も落ち、2015年には本社で早期退職を募って構造改革費用112億円を計上した。

内容

機械本体でキャタピラー・コマツを追い抜く道ではなく、4年に一度のオーバーホールで交換される消耗部品の側から入った。ブラッドケンはバケットの爪などGETとミルライナーの世界的な主要供給者で、売上の約9割が消耗品、84.7%が資源関連の顧客であった。

含意

2025年3月期のスペシャライズド・パーツ・サービス事業は売上収益1,273億円で連結の9%を占めた。ただ資源価格と地域ごとの競争に振られ、ブラッドケンのノンコア事業売却では構造改革費用140億円を計上した。

筆者の見解

本体で勝てない年月の稼ぎ方

後発が2強に追いつく道として日立建機が選んだのは、機械本体の性能競争ではなく、摩耗して交換される部品の側であった。大型ダンプのシェアが10%弱で足踏みしていた会社が、4年に一度のオーバーホールで確実に落ちる需要を先に押さえに行ったのは、本体で勝てない年月の稼ぎ方を用意する動きだったとみることができる。主要鉱物の価格が10年来の最低水準にあり、本社で早期退職を募っていた同じ時期に約800億円を投じた点に、この判断の性格が表れている。

ただ、消耗部品なら景気に強いという読みは、半分しか当たらなかった。ブラッドケンではノンコア事業の売却で140億円の構造改革費用が出て、H-Eパーツは米州と中南米の競争で計画を下回った。部品も再生も現場の近くで値段を競う商売であり、トップブランドを買った時点で完成する事業ではなかったといえる。それでも、買った2社の主戦場が米国とオーストラリアであったことは、米州売上比率が24%へ上がる展開と噛み合った。中国が消えた後の稼ぎ場所を資源国と米州へ置き換える作業を、部品会社の取得から先に始めていたとみることができる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

同じ問いに直面した会社

海外買収による隣接領域への展開1991年三菱化学光磁気ディスクの量産設備の新設と米国の記録メディア大手の取り込み機能商品への転換と記録メディア事業
1987年日東電工米企業の取り込みを足がかりとした高分子分離膜事業への参入新規事業の育て方と海外買収
2017年大塚HD医薬に寄せず栄養事業を植物性食品へ広げた資源の振り分け医薬と栄養の二本柱のうち、栄養側をどこまで広げるか
2017年日本電気硝子欧米3拠点(英国・オランダ・米国)の取り込みによるガラス繊維事業の海外展開ディスプレイ依存の是正と成長事業の育成
2017年コマツ米鉱山機械大手の取り込みによる製品群のフルライン化鉱山機械のフルライン化と資本配分
収益モデル転換による隣接領域への展開2016年ビジョナル隣接市場への広がりによる成功報酬型からの収益源の分散単一収益源への依存と収益モデルの分散
2016年東京ガス電力小売全面自由化に合わせた家庭向け低圧電力販売への参入とガス・電気のセット販売全面自由化下の顧客基盤の防衛と収益源の組み替え
2013年マネーフォワード個人向け一本足からの脱却と法人向けという二本目の柱の確立収益源の設計と事業領域の拡張
2012年関電工風力発電会社への資本参加による、発電事業そのものへの進出施工請負から発電事業への業態の拡張
2009年パーク24レンタカー事業の取り込みによるモビリティ事業への参入駐車場事業の周辺への多角化とカーシェアリング参入
出典・参考
  • 日立建機「Bradken社の買収について」(2016年10月3日)
  • 日立建機 有価証券報告書(連結・IFRS)
  • 日立建機 決算説明会 質疑応答(2024年3月期第3四半期・2025年3月期第1四半期・2026年3月期第2四半期)

免責事項およびポリシー