塗る技術と膜を作る技術を最終製品まで持ち上げる——1985年に宮部義一常務が自社の強みとして挙げた蓄積は、光磁気ディスクの主材料である高機能樹脂・金属薄膜・レジストにそのまま重なっていた。国内40社近い参入表明のうち化学各社が競って名乗りを上げたのも同じ読みによるもので、水島の量産設備と販売網の買収を同時に打った三菱化成の手は、当時の方針としては筋が通っていた。誤算は、商品そのものの寿命の短さにあった。
400億円で買ったバーベイタムの世界シェア15%は、フロッピーディスクという規格ごと価値を失い、2002年3月期には評価損350億円として落とされた。設備は10年単位で回収するのに、フロッピーからCD-ROM、さらにCD-Rへと規格が入れ替わる周期のほうが短い。ソニーの金田嘉行常務は、この事業を『遠目には美しいが、近寄って手中にするのは難しい』と言い表していた。躓いた理由は技術の水準ではなく、素材の設備投資の作法をそのまま持ち込んだ点にある。