米ファーマバイトの取得(1989年・大塚HDの決断)更新:2026/07/24論点米国の健康食品会社を買収するか大塚HD:業績の推移売上高(億円)当期純利益率(%)データ出所経営権の取得による健康食品ブランド「ネイチャーメイド」の獲得何をなぜ決めたか:経営権の取得による健康食品ブランド「ネイチャーメイド」の獲得概要1989年、大塚製薬は米カリフォルニア州のサプリメントメーカー、ファーマバイト社の経営権を取得した。同社の主力ブランド"ネイチャーメイド"をそのまま取り込み、日本にサプリメント市場がほとんど存在しない時代に、海外の健康食品事業を先取りした買収であった。背景大塚グループはオロナミンCやポカリスエットといった大衆消費財と輸液中心の医薬品を並走させて拡大してきた。1976年に社長を承継した大塚明彦氏は『医薬品メーカーとして最後に生き残るのは世界で20社』との認識から国際化を掲げ、1982年以降は欧米に基礎研究所と米国現地法人を設立していた。内容1971年創業のファーマバイト社を買収し、米国でビタミン・ミネラルの有力ブランドに育っていた"ネイチャーメイド"を獲得した。同じ時期、国内でも大塚ベバレジの設立やネッスルとの缶コーヒー提携など、既存の枠に収まらない消費財事業の組み替えが進んでいた。含意取得から4年後の1993年に"ネイチャーメイド"を日本へ逆輸入し、後から国内市場を開拓した。この買収は後年のニュートラシューティカルズ関連事業という第二の柱の出発点となり、2025年12月期には同事業の連結売上収益は5776億円へと育った。いつ何が起きたか5件考察:市場より先に、ブランドを獲得するということ考察考察:市場より先に、ブランドを獲得するということ大塚明彦氏が国際化を掲げた背景には、世界の医薬品メーカーで最後まで残るのは20社にすぎないという見方があった。しかし1989年に買収先として選ばれたのは創薬の会社ではなく、カリフォルニアのファーマバイト社とネイチャーメイドだった。当時、日本の製薬企業による海外買収はほとんどが医薬品を目当てとしており、国内に市場さえない健康食品の会社を完全子会社として買収した例は珍しかった。買収先の選び方には、医薬と消費財を分けて考えない発想がにじんでいる。もっとも、この選択がすぐ実を結んだわけではない。ネイチャーメイドの日本発売は買収から4年後の1993年で、国内のサプリメント市場が本格的に立ち上がるまでにはさらに10年近くを要した。買収が第二の柱を用意したと言えるのは、その後の健康志向の広がりを知っているからにすぎない。市場のない領域を海外ブランドごと先取りする判断は、それが育つまでの長い時間に会社が耐えられるかどうかで評価が分かれるといえる。Yutaka Sugiura, 2026年7月参考文献参考文献参考日経ビジネス 1982年10月18日号日経ビジネス 1983年7月25日号日経ビジネス 1990年7月30日号日経ビジネス 1991年4月15日号Pharmavite「History」(大塚グループ公式サイト)大塚製薬 沿革「これまでの歩み 1984〜1993」(大塚グループ公式サイト)大塚ホールディングス 有価証券報告書(2025年12月期・連結・IFRS)次に読む決断大塚HDの意思決定1964年大塚HD大塚HD大塚製薬の分社設立医薬品事業を切り出して据えた二階建ての事業モデルの構築1964年2002年大塚HD大塚HDエビリファイ米国事業のBMS提携共同商業化と国内消費財から海外医薬品への重点の転換2002年同じ問い:買収による現地生産の獲得2014年コーセーHDコーセーHD「タルト」の株式取得米メークアップブランドの株式93.5%取得による北米市場への参入2014年2017年日本電気硝子日本電気硝子米PPGのガラス繊維事業取得欧米3拠点(英国・オランダ・米国)の取り込みによるガラス繊維事業の海外展開2017年2021年森永乳業森永乳業Turtle Island Foods買収海外買収への資金集中による、乳業の外への収益源の広がり2021年2024年小野薬品工業小野薬品工業米Decipheraの買収約24億米ドルを投じ、欧米で自ら薬を販売する体制を獲得するという選択2024年2026年神戸物産神戸物産LSGアジア太平洋の機内食15社取得グルメ杵屋との合弁を通じた機内食への参入と海外調達網の拡充2026年×出所